何もないからこそ大切なものとは
2012年から、年に一度、川越パンマルシェというイベントを開催している。
1回目は小さな一軒家カフェを貸し切って始めた小さなイベントが、8年後には地元の老舗百貨店の駐車場で1万5000人を集めるまでになった。
が、9回目を開催しようとすると、そこにコロナがやってくる。そして、今秋、同じ百貨店の屋上に会場を移し、4年ぶりのパンマルシェを開催することになった。
会場となる屋上は、人工芝と空が美しい、最高に気持ちのよい場所だ。搬入に不安を残しながらも、あまりの気持ちよさにウキウキと準備を始めた私たちだったが、屋上ゆえの大変さに問題は山積し、何度も心折れそうになった。しかし、そのたびに百貨店側の担当チームの責任者が私たちに寄り添い、そっと助けてくださった。
実は、これを書いている今日の夜、そのイベントの前日準備が行われた。いよいよ本番を明日に控え、私は担当責任者に、数々の温かな支援のお礼の気持ちを伝えた。すると彼は「いや、もうその熱意におされて・・・」と言ってくださった。
熱意におされて・・・、なんとも言えず嬉しいこの言葉。
そう。人の心を動かすのはいつだって、熱意、情熱、思いである。今日も私はそう確信した。
市民ボランティアのイベントだから、実行委員会にはお金がない。多少のノウハウはあると思っていたが、新しい会場でしかも4年ぶりでは、これまでのノウハウは、そのまま通用することはなく、私たちには、まさに何もない状況だった。
あったのは、やる気満々のボランティアの仲間だけである。
その仲間の熱さが、老舗百貨店を動かし、ひとつのことを成し得ようとしている。その事実に私はなんとも言えず感動し、帰り道、車の中で涙があふれた。
これはイベントの話だが、企業も、お店も商品も、同じではないだろうか。
そこに込められた熱い思いが必ず人の心を動かす。素晴らしさを伝えるよりも、そこに込めた思いを伝える方が、相手の心にまっすぐ届くのだ。
何もないからこそ、大切なもの。それは、情熱にフォーカスし、思いを伝えること。私はそう思う。
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