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雨の中焼山寺みちを歩く〜四国遍路日記 3日目〜

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洗濯物を干すハンガーが部屋の分では足りず、一部廊下のハンガーラックに干していた。

早起きして、さっさと回収した。

本日は焼山寺に向かう日。
遍路界隈で有名な山越えの難所である。

荷物をチェックしていたら、持参していたヘッドライトに電池が入っていないことに気づく。

食料も尽きていたので、朝のうちにコンビニに向かうことにした。

一応、宿の人にお昼用のおにぎりをお願いしていたが、事前に見た体験記の中には焼山寺の遍路ころがしでバテてしまった話を目にしていた。

昨日のバテかけた件もあり、行動食を多めに用意しようと考えた。

宿のおじさんに事情を説明して外に出ようとしたら、自転車を貸してくれた。

夜明け前、真っ暗な田舎道を自転車の明かりを頼りに漕ぎ続ける。

20分くらい漕ぎ続けると、ファミリーマートが見えてきた。

食料と電池、ティッシュ等を買い、ファミリーマートを出た。

……雨が降っていた。

雨の中、真っ暗な田舎道を自転車で漕ぎ続け、着いた頃にはびしょ濡れになっていた。

バスタオルを渡され、濡れた身体を拭いた後、朝食を食べた。

「今日の宿は?」

「すだち庵です。」

「うち、すだち庵への荷物の送迎サービスをやってるから、送って欲しい荷物があったらそこに置いといて」

「そんなことして頂けるんですか!?」

宿の玄関にあったミニリュックを借り、荷物を軽量化し、ポンチョを羽織った。

山越えの難所の日に雨。

それでも、その日宿に泊まっていた3人のおじさんと1人の女子大生は雨の中遍路転がしへと向かった。

実のところ、私の出発はおじさん達よりもだいぶ遅れてしまったが。

雨の中、藤井寺に到着

お経を上げ、納経所に行った後、チェーンスパイクを装着した。

そして、登山口を探すが見つからない。
しばらく周辺をうろうろした。

遂には納経所の方に場所を聞きに行った。

入り口発見
早速坂が現れる

しばらく登りつづける。

結構高いところまで来たようだ。
坂の先にベンチが見える

途中のベンチで軽食を食べ、さらに進む。

……あれ?

チェーンスパイクが片足ない!!

山にゴミを残すわけにいかない。

来た道を引き返した。

途中道を間違え、引き返した道を引き返し、遍路道に戻った後、石仏エリアにさしかかったところで、チェーンスパイクが落ちていた。

再び遍路ころがしを登り始める。ベンチのあるところまで歩き、チェーンスパイクを再び装着。

その後、登山中は事あるごとに、靴にチェーンスパイクがついているかチェックするようになった。

引き返し始めた場所に戻る。

この時点で9:27、予定より1時間遅れる。

思うようにいかないものである。

休憩所現る

しばらく歩き続けると、小屋が見えてきた。

長戸庵に到着した。

一応、般若心経だけは唱えた。なんとなく。

トイレがあったが、ぼっとん便所だった。見たのは坂東駅以来。

トイレットペーパーは無く、烏枢沙摩明王の護符が貼られていた。

近くに小屋もあった。

少し先へ行くと、休憩所がある。

そこで登山服に身を包んだおばさま2人に出会い、カステラとみかんとコーヒーのお接待を頂いた。

ここではカステラとみかんはすぐ食べずにおにぎりを1個食べた。

みかんとカステラ。撮影場所は一本杉庵。

おばさま2人はこの先へは行かず、もう帰るようだ。

別れを告げて出発する。

少々写真がぶれてしまっているが、霧が出ている。
昨日歩いた街と川が見える。

12時を過ぎた。

車道と合流する。
最初よりは高低差が少なく、歩きやすい道が続く。
でかい杉と大師像が見えてくる

12:56、一本杉庵に到着。
雨が止んできた。

ベンチに座り、お接待で貰ったみかんと宿で受け取ったおにぎりを食べる。

一応、ここでも般若心経を唱えた。

一本杉庵から30分後地点
急に現る注意書き
確かに急な下り坂だった
民家が見える。
え!? この道通るの!?

民家の合間を縫って道は続く。

ちょっと開けてきた。

民家エリアを抜けたら、再び山に入った。

杉と紅葉と川
ほぼ垂直に岩の壁。一体どうやって登るのか。

無理矢理登った。

岩がゴロゴロしているエリアが結構あった。
開けた場所に出た。

焼山寺の駐車場に到着する。

駐車場からそこそこ歩く。
紅葉がまだ残っている。
やっと焼山寺の仁王門に到着。
焼山寺境内

納経所に行く頃には15時をまわっていた。

柳水庵と一本杉庵(浄蓮庵)の納経は徒歩で来た人のみとの話を聞いていたので、一本杉庵(浄蓮庵)の納経もお願いした。

これから1時間ちょい山下りをする予定となる。

このままだと、宿に着くのは16:30以降になりそうだ。

またもや日の入りギリギリか。

納経所を出ようと準備をしていたら、おじさんに声をかけられた。

おじさんは車遍路中のようで、
どうやら、山のふもとまで送ってくれるとのこと。

他にも麓まで送る予定のお遍路さんがいるようで、

  • それぞれの目的地から、降りるのが一番早いのは自分であること

  • おじさんやお遍路さん達の人柄

これらから総合的に判断し、車の接待を受けることにした。

同じく送迎を受ける方は海外在住の日本人遍路だった。
焼山寺に来る途中、車道に出た時に車遍路中のおじさんに拾われたとのこと。

駐車場まで戻り、車に乗り込んだ。

車道は中々にスリリングな道だった。

16時頃にはすだち庵に到着した。

すだち庵の大将とお姉さん(スタッフ)が迎えてくれた。

旅館吉野で共に泊まったおじさん達も全員無事に到着していたようだ。


ちなみに、ドラム式洗濯乾燥機を目撃した宿は第一弾の遍路中ではここのみだった。

すだち庵の大将とお姉さんは2人とも歩き遍路経験者で、様々な体験談を聞かせて頂いた。



大将の昔住んでいた町の話で盛り上がった場面もあった。

過去の宿泊者に、2週間走って四国を一周した強者が居たという話も聞いた。(プロのスポーツ選手らしい)



お姉さんは先日歩き遍路を終えたばかりで、すだち庵に来て3日目だそうだ。

最初は足のマメに苦しみ、しばらくすると爪が痛くなってきて変色してきて、高知県を越えた辺りで足のことはどうでもよくなってくるらしい。

この話を聞いた時は「マジかよ……」と思ったが、区切り遍路第1弾帰宅後、両足の人差し指の爪が変色していて、「これかぁ」と、爪をしみじみ眺めることとなるが、当時の私は知る由もない。


風呂に入った後、夕食が出てきた。

カツカレーとサラダとエビが出てきた。どれも美味しかった。

特にカツカレーのカツはメンチカツ。しかもカレールーの中に豚肉入りという有様だったが、「お肉が美味しく感じる魔法は継続中だった



食後、お姉さんから歩き遍路の体験談を聞いた。全部で50日以上、計60万円くらい掛かったらしい。話を聞く限り、めっちゃ観光してた。お勧めのお店や宿、遍路道について教えてもらった。

私はこの日までは、「徳島県までは歩いて、高知県は公共交通機関を使用して31番札所まで行く」という計画だった。

でも、高知県も歩きたくなってきてしまった。


私自身の2日間の経験も話した。

初日に出会った仙人のような風貌の人物について話した時、すだち庵の大将が食いついた。

「それって深山さんでは!?」

「深山さんとは?」

「命の恩人」


深山さんとは四国を100周以上回っている錦札持ちの遍路さんらしく、札所と札所の間に車を泊め、ゴミ拾いや遍路道の整備をしながら札所の寺を往復し、車中泊しながら回っているらしい。

深い話もしてくれるらしい。

しかし、数年前に「もう年だから遍路を辞める」と宣言していたようで、「会えるはずのない人物」らしい。

深山さんの写真を見せてもらったが、不思議な見た目の杖と仙人みたいな風貌……金泉寺と大日寺の間の車道で出会ったあの人そのまんまだった。


深山さんに会ったら、「すだち庵の大将が会いたがってた」と言って欲しいと言われた。

翌日、深山さんらしき人と再び出会うが……その話は4日目に。


「焼山寺を越えることができた歩き遍路さんは導かれた人」

最近は焼山寺を越える遍路さんは割と多くなってきているらしいが、数年前は半数が脱落すると言われていたらしい。

「焼山寺越えてここに来た遍路さんはチュートリアルが終わって勇者の名前を決めたとこ。遍路はまだまだこれから。」

(なるほど……だから、すだち(巣立ち)庵?)

たぶん、徳島の名産が「すだち」だからだと思う。

結局、宿の名前の由来については聞かなかったが。


「1ヶ月近く移動し続けながら宿で寝泊まりしていると、ふと朝起きた時、『自分ってどこの何やってる人だっけ?』となる時が来る。それを是非とも体験して頂きたい」

「卒論以外の全てを投げうって遍路を続けることをお勧めする。それだけの価値がある」

なんかこんなことをすだち庵の大将から言われてしまった。

私は「卒論以外の全てを投げうって遍路を続ける」程の勇気は無かった。
アカペラサークルの活動もやりたかった。

しかし、アカペラサークルの活動を一部犠牲にして次の遍路に行こうとしている自分が居る。


大将から、遍路を若者に宣伝して欲しいと言われた。

宣伝……しにくいな。

リアルの私は遍路に行ったことを周囲にあまり言っていない。
なんか言いにくい。

寧ろ私の親のほうが周囲に言いまくっているかもしれない。


だからこそ、苦し紛れにこのnoteを書いているのかもしれない。


私の遍路の資金、実は赤字である。
私が「遍路に行く!」と言ったら、父が面白がって一部融資してくれた。

それでもカツカツである。

そんな話をしていたら、
「Vlogとかやって、遍路配信しながら資金恵んでもらったらどう?」
「野宿したらどう?」と言われた。

流石にそれはやめた。どちらもリスクが高いと判断した。

女子大生が一人で遍路しているところを顔出し配信……万が一があったら困る。

そもそも、父が融資してくれた理由の一つが、「金が無いからって無料宿宿泊や野宿はやめていただきたい」というものだった。

それに、少々贅沢かもしれないが、私は遍路の目的の1つに「色んな民宿を見てみたい」というものがあった。

結局、遍路に行く前は、交通機関を使用して日数を減らし、宿泊費を削減するという作戦を立てた。

ただ、遍路の醍醐味は「寺を巡ることだけではない」ことに薄々気づいてしまった。

さて、どうしたものか。


考えた末、

交通機関は使う。
でも歩きたいところは歩く。
多少は観光にも目を向ける。

これらが、今後の遍路の方針となった。


資金面の話の後、すだち庵の大将から、すだち庵アルバイトを提案された。
朝2時間働いたら、2500円と大日寺の送迎をしてくれるとのこと。

まさかの民宿で働くという経験をさせてもらえることになった。

過去にも、すだち庵で働いた人が何人か居るらしい。



⭐︎本日の歩数

30792歩

*本日の出費

ティッシュ 146
食料 539
ウェットティッシュ 115
乾電池 542

賽銭 40
納経 1300

洗濯 300
宿 6500(すだち庵 2食付き)

計 9442円


先述のすだち庵の大将からのアドバイスから思いついたのが、
「記事を全文無料公開した上での有料化」

万一売上が出たら、遍路の資金にします。

(追記)
現時点で、四国87ヵ所を周り終えています。
購入してくれた方々へ、ありがとうございます。

(さらに追記)
最後の札所を打ち、88ヶ所を達成しました。

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