#5 今年最も印象に残った3つのセンテンス
年の瀬ですね。
今年読んだ、聞いたものの中で、印象に残った文を3つ書き留めておきます。
1
「表に出ても、何もすることないんだけどね」
『百年の孤独』ガルシア=マルケス より
今年文庫化し、バカ売れした。初めて通読したけれど、手放しで褒めたくない部分があり、本に対しての感想は控える。
この文は、作品終盤に出てくる本大好き超インドア少年アウレリャノが、叔父さんのホセ・アルカディオにいつでも好きな時に外に出てもいいと言われたときの返答の一言。これのどこにグッとくるかの説明を読んでいない人にするのは難しいのだけど、過剰に盛られた文が続く描写に対して、作中で実際に発せられるセリフが拍子抜けするほど簡潔なのが面白い。豊富なインプットから貧弱なアウトプットというアンバランスさには色々考えさせられるものがあるし、割とこの手の外国文学には饒舌さを予測しながら読んでしまうので、意外性があった。
2
まだ口の中で木の皮を噛み、赤んぼみたいにおいおい泣きながら立ちつくしていた。
『長距離走者の孤独』アラン・シリトー より
窃盗の罪で感化院に収容された非行少年の主人公が長距離走大会の終盤で訳が分からなくなり、なってしまった状態を表した1文。直前の謎に木の皮を剥いで口に放り込むところも含めて訳の分からなさが極まっており、非常に胸に迫るものがあった。
3
IKEAのバッグに服詰める 選択の連続生き続ける
「Laundry」tachyon+MCビル風 より
今年1年の間にリリースされたtachyon+MCビル風のシングルとEPは本当にすばらしかった。特にユニット結成1発目に発表されたこの曲が鮮烈だった。これを聞くと、生活が色々と下手で、日常生活の合間にコインランドリーに行くことの大変さを感じていた時期のことをすごく思い出す。そしてIKEAのでかバッグに服を詰め込んでコインランドリーを去るこの曲の主人公の姿を想像して、えもいわれぬ気持ちになる。
みなさん、いいお年をお過ごしください。