【#53 : 秋の青空と紅葉】
空の青と紅葉の色が重なる季節が好きです。澄んだ空気が少し冷たく感じられる秋の午後、ふと見上げると、真っ青な空に紅葉が浮かぶように映えていて、そのコントラストに心を奪われてしまいます。空の青は澄みきって、どこまでも続くような深さがあり、紅葉の色は、その中でひときわ鮮やかに、そして柔らかに広がっているのです。
紅葉の赤や黄、橙は、どの葉も少しずつ違って、じっくり眺めていると、自然の描き出す色彩の豊かさに驚かされます。緑から少しずつ変わりゆくそのグラデーションは、どこか物語のような深みがあって、毎年見ているのに新鮮に感じられるのです。風にそよぐ紅葉が、太陽の光を透かしてゆらゆらと揺れる様子は、まるで絵画の中の一場面のようで、思わず見とれてしまいます。
青空はそんな紅葉をそっと包み込むように、どこまでも広がり、清々しさを感じさせてくれます。見上げるたびに、空の青さと紅葉の温かみのある色が一緒に目に飛び込んできて、ふわりと心が軽くなるのです。秋の青空には、夏の空とは違う透き通るような輝きがあって、その透明感が紅葉の彩りをより一層引き立てているように感じられます。
この季節になると、空の青さと紅葉を眺めながら、少し歩いてみたくなります。空を背景にした紅葉の景色は、まるで二つの色が出会って語り合っているようで、その対話をそっと聞いているような気持ちになります。冷たく澄んだ風がそっと頬をかすめ、落ち葉がカサカサと足元で音を立てる。そのひとつひとつが、秋の訪れをしみじみと感じさせてくれるのです。
秋の青空と紅葉は、ただ美しいだけでなく、心に静かな安らぎを届けてくれるものだと思います。何かを語りかけてくるわけではなく、ただそこにあるだけで、心が温かくなるのです。その穏やかな美しさに触れていると、どんなに忙しい日々の中でも、ふっと立ち止まり、少しの間でも「今、この瞬間」を味わいたくなるのです。
空の青さと紅葉の色が織りなすこの季節は、一年の中でもほんの一瞬です。でも、だからこそ、毎年この景色を楽しみに待ち続けてしまうのです。
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