映画「ゴールデンカムイ」ネタバレあり感想-これは主人公が主人公になるための物語
どうもTJです
今回は発行部数2700万超えの超大人気漫画の実写化「ゴールデンカムイ」についてネタバレあり(漫画で言えば3巻分)でがっつりレビューしていきたい
まず私自身の立ち位置について説明しておきたい
原作は途中まで(多分15巻あたり)は読んだことがあるが、ガチファンというわけでは決してなく、今回のレビューはあくまでも一本の映画としてレビューしていくことをご了承願いたい(といっても原作との違いについて所々言及することはあるのだが…)
あらすじ・キャスト
監督は「HiGH&LOW」シリーズの久保茂昭
主人公の杉本役は「キングダム」シリーズなどでも主演を務める山崎賢人(ちなみに脚本、プロデューサーなども同じ)
その他、アシリパ役を山田杏奈が演じ、眞栄田郷敦、工藤阿須加、玉木宏、舘ひろしら豪華キャストが脇を固めた
冒頭10分、実写映画をアップデート
映画というのは原則として最初の10分が肝心と言われている
なぜなら冒頭10分で、観客の集中度具合が変わってくるからだ
特にSNSの普及により、この最初のセットアップの重要性はより増しているように思えるが、その意味で今作の冒頭10分は、実写化としての最適解を提示したのではないかと思う
息が詰まるほどの緊迫感と“不死身の杉本”が放つ生への渇望を冒頭10分、日露戦争の戦いで見事にスクリーン上に表出させ、観客を瞬く間にゴールデンカムイへの世界と引き込む
今までの実写化映画にありがちだったチープな映像表現から、「キングダム」シリーズ、そして今作の「ゴールデンカムイ」で日本の実写映画を完全にアップデートさせたと過言ではないだろう(しかもその担い手がどちらも山崎賢人というのが面白い)
もちろんこの背景にはVFX技術の向上や製作陣がよりアクション映えさせる魅せ方を心得たことも大きいだろう
この冒頭10分だけで、映画館に行ったことを後悔させない素晴らしい映像体験を体感することができた
実写化の魔力
一昔前は何かと批判されがちな漫画原作の実写化だが、やはり実写化のメリットとしてリアリティを伝えられる点にあると思う
もちろんそれは想像上のことを表現しにくいということの裏返しでもあるのだが、その点に関しては前述の通りVFXの進歩で克服しつつある
生と死について、まごうことなく描くゴールデンカムイという作品において、このリアリティというのは特に重要な要素だ
その点、通常の4倍以上の時間をかけたという真冬の北海道ロケのおかげもあってゴールデンカムイの世界観をより立体的に伝えることに成功している
特に雪山の中の戦闘は血がコントラストとして際立ち、漫画以上に生と死の密接した距離感を感じさせる
メリハリ感のなさ
しかし手放しに大傑作だ!と評価できないところもある
それは2時間を通して、起承転結のメリハリがほとんどないことだ
杉本に最初、囚人の入れ墨探しのミッションが与えられる
これが、物語の最終的なゴールであることは間違いないが、どのような道筋でそのゴールへ辿り着くのかの説明がないため物語の運びもどこか行き当たりばったり感を感じてしまう
もちろんこれは原作を忠実に再現した結果でもあり、仕方のない面もあるのだが、どうしても王座奪還という明確な目標とプロセスがあらかじめ共有された「キングダム1」などに比べると作品のメリハリ感が欠けているように思える
これは主人公が主人公になるための物語だ
それでもあえて今作を一本の映画として文脈付けるなら主人公(杉本)が主人公になるための物語だと思う
主人公というのは必ず何かアクションを起こす上で動機が必要になる
なぜ杉本は金塊探しをするのか
金が欲しいからという表面的な理由のみが最初に提示されるが、その時点で杉本は単に金塊探しをする大勢の1人に過ぎない
終盤になって初めて金塊探しの理由が明らかになることで主人公の動機、彼の正義が明確になり、杉本は主人公になる
ただの有象無象の金塊探しが、主人公へとなる
これがこの映画のメインテーマであり、この物語のクライマックスでもあると思う
しかしこれはあくまでもスタートラインに立ったと言えるレベルであり、どこか続編ありきの少し消化不良感を感じてしまうのも否めないところではあった
総評
ということでTJ的総評としては⭐︎4.2/5
最後にケチはつけさせて頂いたものの、実写化映画としてのクオリティは間違いなく歴代トップクラス
久保監督を中心とする製作陣の原作愛と中華統一の後は北海道で金塊まで手に入れようとする山崎賢人の演技力の幅は圧巻だった
映画館の大スクリーンで見る価値のある、自信を持っておすすめできる一作だったと思う
ということでいかがだっただろうか
今回はこの辺で終わらせて頂く
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