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「踊る大捜査線」S1の青島くんが恋せぬ私の理想の人だった。

最近「踊る大捜査線」テレビシリーズ(1997)を観返している。初見が中高生の頃だったから、かれこれ十数年ぶりだろうか。改めて観ていると色々と思い出すもので、青島くんにすっかり惚れ込んでいた記憶が甦ってきた。

当時「好きな人いるの?」と聞かれた際には「だいぶ年上の人でね、警察官で。会えない人なんだけど」などと、青島くんをモデルに雑な誤魔化しをしたこともあったなぁと、苦笑いである。

それほどまでに私を虜にしていた青島くんと十数年ぶりの再会を果たし、私はまたしても撃沈した。なぜなら彼は、今でも私の理想そのものだったからだ。

行動力にあふれ、人懐っこい笑顔を浮かべる様子がまるで大型犬を思わせる青島くん。彼は往年のトレンディドラマのごとく、息をするように甘いセリフを吐いていく(尚、トレンディドラマが何かはよく分かっていないので悪しからず)。

例を挙げれば暇がないが「あなたが苦しんでいるなら、僕があなたを守ります」や「俺が守るって約束したよね?」、「わがまま言わないの」あたりが個人的には刺さって抜けない。

言葉だけを切り取ると、これらは完全に口説き文句である。というか前後の文脈を分かっていても、あまりにも青島くんの言動は柔らかく、ほのかに優しく甘すぎる。

青島くんは恋多き男なのだろうか。息をするように相手を口説くプレイボーイか?

私も一度はそれを疑った。しかし青島くんにその気がないのは明白である。恋愛感情や下心ではなく、刑事としての責任感と信念と、相手の力になりたいという純粋な善意のみで柔く優しく甘い言葉をかけている。

“事件が解決すればそれで終わり”という刑事にはなりたくない。これからも生きていく犯罪の被害者たちを、真摯に親身に純粋に支え続けるのが正しいことだと、彼は固く信じている。そこに恋愛や性愛が入り込む隙はない。鉄壁の信念。そんな青島くんが私は好きでたまらない。

私はたぶんアセクシュアルだ。アロマンティックでもあるかもしれない。他人に性的に惹かれないし、恋愛感情もわからない。男女の恋愛ドラマもBLドラマも百合ドラマも、まあそれなりに観はするが、あまりにも恋愛中心的な表現はしんどいなと思ってしまう。

セクシュアルマイノリティの自認と自己否定の狭間で揺らぐ、ハムレットもどきの私にとって、自らが正しいと思うことを、ただ信念によって成そうとする青島くんは眩しく優しい。下心ゼロで相手を気遣う彼とその言動は理想的な思いやりの体現に見えた。張り込み中に(冗談半分で)対象の着替えを覗こうとする和久さんを、さりげなく、しかし確たる意志を持って妨害するのも非常にいい。おかげで和久さんを好きなままでいることができた。

すみれさんも雪乃さんも交通課の皆さんも、本当に魅力的な女性たちだし、青島くんと誰かの関係が恋愛に変化してもおかしくない。実際、場面によっては恋愛ドラマの波動を感じられることが多々あるし、例え恋愛が始まったとしても、文句を言う気はさらさらない。恋愛だと解釈されてもおかしくない熱量をもって、青島くんは相手と関わっているように見えるからだ。

しかし恋愛は始まらない。なぜなら彼は前述のとおり、善意と思いやりと信念で相手の傷や不安を包み込み、この先の人生をサポートしようとしているのであって、そこに恋愛や性的な惹かれが挟まれる余地などないからだ。

テレビシリーズにおいては、確か第1話あたりで一度だけ、女性の胸に視線を奪われたシーンがあった気もするが、彼がそういうそぶりを見せたのは、本当に唯一それだけだと記憶している。それ以外、彼が恋愛的、性的に見える眼差しを他人に向けた試しがない。少なくとも私にはそう見えている。

中高校だった頃、十数年前の私は当然アセクシュアルなどと言う言葉は知らなかったし、自分は恋愛をする大多数の人たちの仲間だと、当たり前のように思っていた。だから青島くんに対する感情は“ドラマの中の人に恋をした”のだと認識していたが、今思うと少し違う。

「私より犯人に恋してる」... すみれさんは青島くんをそう評した。人間味に溢れるチャーミングさを持つ一方、自分の信念を決して裏切れない彼は、ある意味で非常に人間味が薄い、記号的なキャラクターだ。「俺は、俺が正しいと思うからそうするんです」と主観的に物事に向き合う彼は、誰に対しても平等に真摯に向き合って、混じり気のない思いやりを向ける。それが私を癒してくれる。

私は青島くんにコンフォートゾーンを見出したのだ。恋愛感情や性欲抜きで、真正面から思いやりを持って人と向き合う人。信念があって、それを何よりも優先する人。自己実現に必ずしも恋愛を必要としない人。彼を観ていると心が温かくなって、勇気が湧いてきて、心地良さを感じられる。世界に少し安心できる。だから彼が好きなのだ。

今も昔も私の理想でいてくれた青島くん。きっとこれからも私の大切な人であり続けてくれることだろう。彼にまた出会えて本当によかった。

これからも会いたいときにまた会えるように、円盤を手元に置くことを、最近真面目に考えている。この機会にコンプリートBOXなど、改めて売り出してくれと嬉しいのだが。何卒よろしくお願い致します。

追記:
「秋の犯罪撲滅スペシャル」を観ているのだが、青島くんのキャラが迷走している。アダルトビデオに沸いて美人の犯人にクラッとくるような人間ではなかったはずだ。私の惚れ込んだ鉄壁の甘々優男はどこへ。モヤモヤする。

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