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出会いは突然 とは限らない

久しぶりに、掛川の異業種交流会に参加する。
月1回開催されているが、最近はなかなかスケジュールが合わない。今後は更に動きが取れなくなるため、最後のご挨拶のつもりで出かけた。

10月の参加者は6名。
主催するS氏のキャラクターに即した、実にゆるい2時間である。
最初に30秒の自己紹介を済ませた後は、だらだらと思いついたことを話し合うだけの会だ。

自分の仕事に活かそうなどとギラついた感覚のない参加者がほとんどで、異なる商売の人との会話を、ただ楽しむ。そのことに何のメリットがあるのかわからないが、僕個人はけっこう満足している。

今回は、塾の校舎長(初めて聞く肩書だ)という50代、葬祭・婚活事業の30代の経営者、それに営業代行事業・インフルエンサー事業などという、それだけ見ても何のことかわからない40代と知り合う。

塾の校舎長は生真面目きまじめな性格らしく、子供に勉強を教える理想と現実のはざまにあって、結構お悩みのようであった。
地元がターゲットのこちらの塾は、名門校に進学を目指す目的というより、授業につまづき高校進学が危うい子供も受け入れるところらしい。

熱心なのは勉強が苦手な当人じゃなく親の方だから、いくら指導しようと身が入らない。気の合う友達や、お気に入りの先生を動機に通ってくる子も多いらしい。
「本当に成績を上げようとするなら時に追い込むことも必要なんですが、それは絶対やっちゃいけない。あくまで”お客さま”として、ご機嫌を損ねないようにする。ちょっとでも声を荒げて辞められたりでもしたら、本部からこっぴどく怒られるわけです。ホントは親御さんに、こっちの本音ほんねを言いたい子もいますよ。おたくの子、お金使うだけ無駄ですよって」
ふ~ん、相当たまってるねぇ。

「アンタ(親)の態度から、まず改めなきゃダメだろうっていうか」
確かに子供を良くしたいなら、親を教育し直した方が早い場合もあるだろうね。無理は承知の愚痴ぐちであっても。

「でもねぇ、中には指導の甲斐あって成績上げる子もいるんですよ。おかげさまで志望校に入れましたって挨拶されると、やってて良かったなぁって思えます」
先生、頑張ってください。

葬祭・婚活事業の若き社長は、全国規模の大手グループから今年独立したばかりだ。コンパクトながら冠婚葬祭場を常設し、10人の社員を抱えているという。大したもんである。

何かのきっかけからLGBTの話題となり、「そういうカップルの式も挙げたりするの?」と訊いてみる。
他所よそはみんな断られましたっていう女性同士のカップル、お受けしましたね。ただその直後、2組のキャンセルが出ました。カトリックの方たちで、そういう人が式を挙げた場所は使いませんって。難しいですよね」

昨日は静岡東部で、婚活パーティーを開催したそうだ。僕の人生に縁のないイベントだから、こっちの話も気になる。

年齢層は決まってるの?
「昨日は40歳から55歳までを対象にしました。男女とも20名ずつです。20代30代は企画したとしても、おそらく集まりませんね。中高年層は子供が欲しいというより、老後をひとり孤独に過ごしたくないという動機の方が多いです。浮ついた気持ちの年齢じゃないから、マッチング率もけっこう高いですよ」

会費は男性が5,000円、女性が1,000円。椅子に座った女性の外周を男性がぐるぐる回りながら、数分間ずつ順番に話をしていくそうだ。事前に男性のデータは女性に渡されていて、おおきな判断材料となっている。

(女性から選ばれるのは)やっぱり高収入?
「むしろとつぐ先の事情を重視しますね。ご両親が健康で、財産がしっかりあって必要な時には施設に入れるとか。あとは、公務員ですね。こんど警察官や自衛隊員限定の婚活パーティをやるんですが、すぐに予約が埋まりました。やっぱり生活の安定が、女性にとって一番の基準なんでしょうね」

いろいろ聞いていくと、何だかなぁという気分になってくる。
僕は見合いという制度は見直されるべきと考える人間だが、それは第三者が冷静な視点で、両者が見合っているかを判断してくれるからである。
互いに「釣り合いの取れた」関係性が生まれやすく、現に離婚率は恋愛結婚よりも低い。
「熱しやすくめやすい」自由恋愛は先進国の主流だが、徐々に愛を育める見合いのスタイルは、日本人に合っている気がする。

対して婚活というのは、提示された諸条件から点数をつけて総合点の高い者を選ぶようなもので、現実的なようでいて判断が極めて浅いように思う。
もちろんすぐにゴールインするわけでなく、パーティーをきっかけにお付き合いが始まるに過ぎないから、途中でイヤならやめればいい。

それも人生の出会いの一つに違いはないのだが、打算の匂いを強く感じて何か面白くない。ま、他人様ひとさまの人生、どうのこうの言っても仕方ないわけだが。
若き社長さんには、今後の会社の発展を祈念致します。

何にしても、S氏にご挨拶できてよかった。今度いつ行けるか、まるでわからんもんなぁ。このまま異業種交流会が続き、こちらが落ち着いたころ再訪できる日が来るのを心から願っている。
Sさん、いい時間をありがとう。

イラスト Atelier hanami@はなのす



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