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集中できない

1980年代の終わり、大磯の隣町・中郡二宮町にあったCDレンタルのお店に入った。20代だった僕が、同世代が共感し聴いている音楽がどんなものか、知りたいと思った為である。

洋楽も邦楽もまったく聴かなくなっていたから、CDの背表紙だけ見ても、どれがいいのやら見当がつかない。ラジオから流れてくるヒット曲や知っている名前のミュージシャンは避け、数枚見繕みつくろって借りてみた。枚数が増えるほど単価が安くなるからだったと思うが、これもよく覚えていない。

1枚だけ、むかしから知っていた名前が小泉今日子。近田春夫プロデュースというのに引っかかった。
ロック、GS、歌謡曲、パンク、テクノ、ファンク、ヒップホップ、ハウス、トランス、CM音楽… その上で批評、執筆、プロデュースなどなど、多岐たきにわたる活動を繰り広げてきたこの方には、10代の頃からなじみが深い。

古くは『ぎんざNOW!』の司会者をつとめ、個人的には『近田春夫のオールナイトニッポン』で太田裕美『九月の雨』を紹介する際、「これ、いい曲なんだよなあ」の一言に、「味方だ!」と思ったもんである(当時、裕美ちゃんの追っかけでした)。
なんのイベントだったか覚えていないが、日比谷の野音で自分のライブが終わった後、なぜか僕の隣の空席に座って、他のバンドの演奏を聴き始めた。当時の高校生はその程度のことで舞い上がってしまい、しかも「楽しい?」なんて声までかけられたもんだから、誰にもしたことがない「ハイ!」と、超お行儀いい返事を返したりした。
何をやろうと他人ひととはひと味違うセンスの切り口で、「THE 歌謡曲」やその後の「考えるヒット」など、愛読したもんである。
フォーリーブス『ブルドッグ』など、原曲もすごいが、ハルヲフォン流アレンジが実にカッコいい。

近田さんと曲者くせもの系アイドルのコラボがどんなものであるか。楽しみに持ち帰った。

その時一緒に借りたCDがなんだったか、まるで覚えていない。前日に記したように、夜の仕入れ(大磯から武蔵村山というところまで往復していた)の長旅に、カセットテープにった音源を流していたはずだが、多分1回聴いて消してしまったんだろう。小泉今日子『KOIZUMI IN THE HOUSE』だけを繰り返し聴くことになる。

この1枚が、いわゆるハウス・ミュージック作品であると知ったのは、ずいぶん後のことだ。
一般的にハウスミュージックと呼ばれているものの多くは、リミックスやサンプリングなどの手法を使い、打ち込みによってつくられている。
「4つ打ち」が基本で、「クラブでDJによってかけられている4つ打ちのダンスミュージック」だそうだ。同じリズムを繰り返すことが多いのも、特徴の一つとなる。
初期のハウスはDJも客層も、黒人やゲイが多かった。社会的にはゲイ、もしくはLGBTに対する性差別解消をテーマにする音楽であるとして評価されていたという。
なんや、キョンキョンはこの当時から「真っ赤な女の子」路線だったんかい。ま、近田さんももともと、そっちの路線だわな。

しかし、そんな知識なしに聴いたこのサウンドは非常に新奇に響いたし、「昭和」の終わり・「平成」の幕開けを暗示するような、事物のダークな側面がむき出しになったような音に、ある種の中毒性を感じる。
例えばそれは、『水のルージュ(Break' ACID' Beats MIX)』に突如あらわれる『スモーク・オン・ザ・ウォーター』リフの断片が、過去の時代の死骸のように扱われていることからも明らかだ(個人的妄想)。

あちゃー。2日かけても、まだ本題の手前までしか到達せんなぁ。どうして一つのことに集中できんのだろう。
仕方なく、明日に続く。

イラスト hanami🛸|ω・)و

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