人類最上級の仕事
月1回「清水いはらマルシェ」を開催している。出店の内容は問わず、希望が来た順に受け付ける。
つど保健所に出店者と販売内容を届けているが、とくに指導が入ることはない。毎回書類を提出しなければならない手間に対し、先方が中身を精査している気配もない。けっきょく問題が生じた際のアリバイ作りのようにしか思えないが、どんなものだろう。
出店者側も、それを純粋な商売にしている人の方がむしろ珍しい。
たいがいは副業として、あるいは自家農園の品や趣味で作ったアクセサリーを(販売というより)公開できる場として、マルシェを利用する人が大半である。
扱う商品はあえて明記しないが、毎回お一人で出店している女性がいる。
初めての時など座ったまま下を向いて、スマホをいじり続けていた。誰の目にも完全な素人で、むしろ接客を拒んでいるようにしか見えない。
傍目にはそれが、痛ましく映る。僕だけでなく他のスタッフも、ちらちら彼女の方に視線を向けては、気になって仕方ないようだ。
半ば強引に知り合いを連れて行き、対応してもらっているうち上を向けるようにはなってくる。
それにしても、ちょっと特殊なものを扱っている割にはチラシの1枚もなく、次のマルシェには来ないだろうと思っていたが、それ以来続いている。今月もやって来た。
なにかお手伝いできることありますか?事務所に来てくれれば、チラシの作成くらいはしますよ。
すると「私そういうの苦手で助かります。明日の午前中はいかがでしょうか?」と積極的である。さっそく次の日、打ち合わせとなった。
ところが話していくうち、商売に結び付く話がしたいわけではないと分かってくる。マルシェに参加しているのも、商品を売りたいわけではないらしい。ご本人曰く「誰かの助けになりたいんです」。
なんだ、宗教か?話をしていると、そうでもなさそうだ。
「私まだ始めたばかりで、お金頂いていいものかどうか自信がないんです」
初対面の人だろうと年齢や地位が上の相手だろうと、遠慮なく思ったことを口にしてしまう方だから、この時もずけずけモノを言わせてもらう。
アナタがどう思おうと、相手によっちゃ「余計なお世話」って場合もあるでしょう。むしろ2,000円って決して安くない金額を要求するんだから、売る側が胸を張れる商品でなきゃ、助けどころか余分な出費させたことにしかならんじゃない?
それに対する返事はまったく反論になっておらず、かといって、ムキになっているわけでもない。私なんかのために時間をとってもらい、真剣に話を聞いてくれるのがありがたいとおっしゃる。
この人、言葉の端々から「私なんか」のニュアンスがついて回る。
別に心理カウンセラーじゃないからその意味するところを的確に指摘することはできないが、コンプレックスのようなものは確かに感じる。
マルシェに参加するのも未知の人間と会うのも、「このままじゃいけない」ご自身を変えようとする、背伸びの姿勢かもしれない。
聞けばご主人が転勤族で、清水に越してきてからもまだ日が浅いようだ。
そのわずかの間に知り合った人を介して、マルシェの紹介を受けたという。
2人のお子さんがいて、上の方が高校3年生。来年、受験じゃないか。
「まず家族を最優先に、余った時間を理解してもらったうえで(自分の事業に)充てているんです」
どうやら家庭の主婦のままいることに、不満というか疑問をお持ちの様である。あぁ、なるほどね。現代の社会風潮は、女性の社会進出をやたら煽り続けてるもんね。
誰もはっきり口にはしないけれど、男女同権とは家庭に安住することなく、男と社会で”対等”に渡り合うことだなんて短絡的なフェミニズムが、横行してるよなぁ。
日本八百万の神々のうち、最高位に位置している神さまは天照大御神であり、女神である。
その天照大御神のお食事を司る御饌都神であり、衣食住、産業の守り神としても崇敬されている豊受大御神もまた、女神だ。
そもそも日本の古の価値観において、女性は男の上位に位置する存在だったはずなのだ。
人類最上級の仕事とは何か。それは子を産み育む、お母さんの存在に他ならない。これは理屈でなく、事実である。お母さんがいなくなれば、人類は死滅するしかない。
LGBT理解増進法をときの権力がいかに推し進めようと、男の属性が後から”女”として法的に認められようと、男に子供は産めない。
男は母親の子育てを補完するため、外に出て働く使命を担う。その役割の分担こそが、男女同権の本来の意味に繋がっていなけばならないはずだ。
母性の価値は不変であり、それこそが人類最上級の仕事である。
そのことに男女とも”誇り”が持てなくなっているとは、なんと不思議な世の中だろう。
(明日に続く)
イラスト Atelier hanami@はなのす
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