食べ物50話 イタリア

ローマの住まいは、貴族様のお屋敷でした。一階だけを使い、ニ階には親戚が 三階は下宿人がいました。
そこに北イタリア出身で気位の高い母上、親友の貴族当主、タイ人のメイド、フィリピン人のコック、賓客の私の五人で一階18部屋もあるミニ宮殿に滞在。

但し食物の好き嫌いの多い私は、食生活に苦労して痩せました。特にチェーザレ(友人)から嫌われたのが、大好物「玉子かけご飯」です。

「玉子を生で食べるなんて!気持ち悪いから、別の部屋で食べろ」と言う事で、コッソリキッチンで…居候は大変でした。

日本から来る友人が、鰻パックを沢山くれました。「そんなに鰻が好きなら、料理させる。イタリア人も鰻好きだから」嬉しい申し出が!

ある夕食、銀の見事な蓋の付いた器が、運ばれて来ました。瞬間イヤナ予感がしました。
蓋をとると、太い鰻がとぐろを巻いています。見ただけで駄目とは思いましたが、恐る恐る食べたら意外と美味しいのです。

以後月一でワイン蒸し鰻を、頂きました。
いまや記憶の彼方の、懐かしい味です。