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台風前夜

強い台風が接近しているらしい。まだ雨は降っていないが、やたらと蒸し暑い。先日までは秋の涼しさを感じるぐらいだったのに。

日中の最高気温は35℃を超えた。9月も半ば過ぎだというのに真夏のような気温である。最近、春と秋の過ごしやすい時期がどんどん短くなってきているように思う。暑いか寒いかの二択。一年が過ぎ去るのがとても早い。

夕方近くになって外の風に当たりたくなって、ぶらりと出かける。

外に出るとモヤっとした空気が体に纏い付く。空気が湿気を帯びて生暖かく感じる。風に当たりたくて外に出たというのに、ちっとも爽やかじゃない。なんということだ。


鉄橋の下をくぐる

いつものように土手から河川敷に降りて川べりを歩く。市街地を流れるコンクリートで護岸された川べり。歩行者以外は通れないから散歩には丁度いい。同じように考えている人もいるらしく、よく歩いている人を見かける。それでもすれ違う人はそれほど多くはない。


歩いていると何やら足元に白く丸く薄いものが散らばっている。なんだろう?魚の鱗?かなり大きい。この大きさはコイだろうか?ときどき水面を叩く音が聞こえることがある。昔、釣り好きの同僚から、あれはスズキだと聞いた。貪欲な魚なので餌を求めて川を遡ってくるらしい。

橋の下に丸いブイが浮いてるのが見える。漁獲用の胴でも沈めてあるのだろう。何が捕れるのかな?

そういえば、ところどころに魚の中骨も落ちてる。夜釣りをしている人もいるので、釣り上げた魚をその場で捌いて帰るのだろうか?それともその場で食ってから帰る?…まさかね。


鉄塔の電線にとまるカラスの群れ

水辺に生い茂る芦の草藪の陰に何かが動く。小さなカニがいる。しかもそこかしこに。こんな市街地を流れる川にも小さな生き物の営みがある。歩くたびに稚魚が騒ぎ、川面が波打つ光景に心が落ち着く。耳に囁く虫の音はすっかり秋の気配。


いつしか日も傾き、風にも涼しさが増してきた。相変わらず空気はべた付くけど、蒸し暑さは和らいできたように思う。


対岸に不二家の明かりが灯る

黄昏時…逢魔が時…


いろいろな呼び方がある、昼と夜の狭間のこのひと時がとても好きだ。対岸の明かりが鮮やかさを増し、夜の帳が降り切る直前のひと時が何故か落ち着く。


夕暮れと街の明かり

昼の時間がだいぶ短くなってきた。いくら蒸し暑くても季節はもう秋。日暮れはつるべ落とし。今日は寝苦しい夜になりそうだ。明日の天気はどうだろう?台風の暴風雨圏内の人たちは大丈夫だろうか?夜釣りにやってきた釣り人を横目に、そんなことを思いながら暮れゆく家路を急ぐのである。



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