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「変化を嫌う人」を動かす

魅力的なはずなのに受け入れられない?

その理由は「抵抗」にある!

魅力的なはずのアイデア、製品、サービスが、相手に受け入れられないのはなぜでしょうか?

それは、魅力が足りないからではない。

相手が受け入れたくない理由=「抵抗」があるからです。

本書では、「抵抗」を4つのタイプに分類し、それぞれの正体を分析、それらへの対処法を、事例を使って具体的に伝授します。





はじめに

弾丸であれ、飛行機であれ、ピッチャーが投げる速球であれ、物体が飛ぶときには相反する2つの力が働く。
物体を前に押し出す推進力(火薬、ジェットエンジン、投手の腕など)と、前進するのを押しとどめようとする束縛力(重力や風の抵抗)だ。

弾丸を飛ばす際の最大の障害は「抗力」だ。

弾丸やアイディアを飛び立させるには推進力を与えなければならないと私たちは直観的に思う。
しかもそれは正しい。
だが、空気力学を考慮せず、エンジンの出力(燃料)だけを考えて飛行機を作ったらどうなるだろうか。
私たちはこれとまるっきり同じことを、新しいアイディアや取り組みに着手するときにやっている。

本書では、イノベーションや変革を妨げる、4つの「抵抗」について説明する。


惰性

人は往々にして新しいアイディアや可能性を受け入れることを嫌がる。
メリットが明白で議論の余地がなかったとしても、この傾向は変わらない。
というよりも、人間の心は不確実なものや変化より、馴染みのあるものや安定を好むからだ。
心理学者は「現状維持バイアス」と呼ぶ。

(解決方法)
「惰性」はイノベーションや変化に対する「抵抗」である。
惰性を克服するのは、少なくとも概念上は簡単だ。
よく知らないものを知っているように変えてやればいい。
新しいアイディアが、得体のしれない侵入者ではなく、昔ながらの友人のように感じられるようにすることを目指そう。
戦略その1:何度も繰り返す
戦略その2:小さく始める
戦略その3:伝達者をオーディエンスに似せる
戦略その4:提案を典型的なものに似せる
戦略その5:喩えを使う

ここで良い知らせがある。
相対性の仕組みを理解すれば、「惰性」を「抵抗」から「燃料」に転換することができる。
影響を与えるための鉄則の1つは、「選択肢を1つだけにしない」ことだ。
というのも、選択肢が1つしかないと、人は無意識のうちに「新しいもの」と「馴染みあるもの」を比較するからだ。
しかも、たいていは馴染みあるものに軍配が上がる。
戦略その1:極端な選択肢を追加する。
この教訓はやや極端な選択肢を追加すれば、それとの比較で他の選択肢をより合理的に見せることができる。


労力

私たちは、最も少ない「労力」で最大の見返りが得られる道を探し、それを選ぶようにプログラムされている。
この設計上の特徴は「最少努力の法則」と呼ばれている。
新しいアイディアやイノベーションに初めてであったとき、私たちの頭はその実施コストをとっさに計算する。
求められる「労力」が大きくなるほど「抵抗」が強くなるというわけだ。
新しいアイディアの導入コストを下げれば、それだけ世の中に受け入れやすくなる。
だからこそ「労力」は重要なのだ。
そして、労力には2つの側面がある。
1つ目の側面:「苦労」(体や頭を酷使する)。
2つ目の側面:「茫漠感」(どうすればよいのか分からない)。
目標達成に必要な作業量が「苦労」だとすれば、目標達成の方法を知っているかどうかを示すものが「茫漠感」だ。
この2つの側面を理解することが重要なのは、その理解が「労力」を克服する基本だからだ。

(解決方法)
「苦労」を下げるには、「行動を簡素化」することだ。
人々に実践してもらいたい行動が「苦労」を極力必要としないものになるように考える必要がある。
「茫漠感」を下げるには、「ロードマップ」を作成することだ。
ロードマップがあると調査に要するコストが削減され、行動までの道筋が明確になる。
ロードマップがなければ、従業員は経営陣が望むような行動はまず起こらない。
無関心に見える従業員の振る舞いの多くは、実は単なる茫漠感の現れなのである。

いつどのように行動すべきかを考えることは、私たちの意図する行動を妨害する物理的な障害についてじっくり考えるのに役立つ。
「燃料」を中心とした考え方に立つと、実際に振る舞いを起こす際に発生する問題(予定を組む手間など)は些細なもののように思えるだろう。
だが、「労力」の威力を理解している人にとっては、そうした障害が主要な関心事なのである。


感情

新しいアイディアやイノベーションを阻害する思いがけない否定的感情のことを、「感情面の抵抗」と私たちは定義している。
感情面の抵抗はさまざまな形で現れる。
新製品を受け入れる際に沸き起こる不安や疑念は、よくある「感情面の抵抗」だ。
内向的な人の場合は、社会不安が「抵抗」となり、貴重な人脈造りの機会に参加できないこともある。
軍隊への入隊を希望しているにもかかわらず、多くの新兵候補がそうしないのは、母親がどのような反応を見せるか心配だからなのである。
「感情面の抵抗」は私たちの目指すものとは正反対のものである。
新しいアイディアを世に送り出す時は肯定的な感情を引き起こしたいと願うものだ。
だが、自分では気づきていないだけで、相手が正反対の反応を感情として抱いていることはよくある。
そうなった場合は、その否定的な感情が「抵抗」だ。

(解決方法)
イノベーターは新しいアイディアを待ち受ける「感情面の抵抗」がどの程度のものか判断するために次の2つのポイントを確認してみよう。
その1:変革案を提示したらオーディエンスはどのくらい恐怖や不安を感じそうか?
その2:そのイノベーションで人々の多様なニーズを損なう可能性はあるか?


心理的反発

シートベルトの義務化やコロナ時のマスクなど、人は変化を強要されることを嫌う。
これを「心理的反発」と呼ぶ。
心理的反発が発生すると、私たちは新しいアイディアをチャンスではなく、侵略者とみなすようになる。
変化に対する「抵抗」を「惰性」とするならば、「心理的反発」は変化させられることに対する「抵抗」なのである。
このことから分かるのは、人は自由が奪われそうになっていると感じれば感じるほど、反発する必要性をますます感じるようになるということだ。
皮肉なことに、新しいアイディアが「抵抗」に遭うと、イノベーターはとっさに「燃料」を追加しようとする。
証拠や推薦の言葉をたくさん集めてアイディアの訴求力を高めることで、「抵抗」を克服しようとするのだ。
だが、結果的にその行動がさらに「心理的反発」を強めることとなる。
だからこそ、「心理的反発」はイノベーションにとって非常に危険なのである。

どのような状況でもすぐに「心理的反発」が発生するわけではない。
心理的反発が最も強くなるのは、次の3つの条件に該当する場合だ。
その1:アイディアが基本的な信念を脅かす場合
その2:変わることへのプレッシャーを感じる(命令口調など)場合
その3:オーディエンスがのけ者にされていた場合

(解決方法)
心理的反発を克服するための秘訣は、変化を無理強いすることをやめることだ。
相手を説得しようとするのではなく、相手が自分自身を説得できるよう手助けした方がいい。
この方法で影響を与えたりイノベーションを起こしたりすることを「自己説得」と呼ぶ。
自己説得は、変わることについての議論や洞察が内面から生まれたときに始まる。
自己説得の1つ目のルール:指示するのではなく質問する
自己説得の2つ目のルール:小さなイエスから始める
自己説得の3つ目のルール:アイディア作りの工程にオーディエンスを参加させる


『まとめ』

イノベーションや変革を進めるには、「燃料」ではなく「抗力(抵抗)」に目を向ける必要がある。
イノベーションや変革を妨げる、4つの抵抗。
①惰性(現状維持バイアス)
②労力(苦労と茫漠感)
③感情(否定的感情)
④心理的反発(人は変化を強要されることを嫌う)


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