最高の体調
はじめに
鬱病、肥満、散漫な集中力、慢性疲労、モチベーションの低下、不眠、弱い意志力など、一見バラバラのように見える問題も、根っこまで下りてみれば実は同じもの。
すべては一本の線で繋がっています。
そして、その線の正体を暴くカギが、「文明病」という考え方なのです。
文明病
本書では、「悪いのは自分だ」という考え方を採用しません。
なぜなら、あなたが抱える問題の大半は、現代人に特有の「文明病」が原因だからです。
文明病とは、近代社会の変化によって引き起こされる、現代に特有の病気や症状を意味します。
ここで使うべきが、「進化医学」の補助線です。
これは、進化論をベースにしながら人間の病気の正体を考えていく学問のことです。
「進化医学」を基に「文明病」を煎じめれば、問題解決へのステップはシンプルです。
①自分が抱える問題について、どこに遺伝のミスマッチがあるのかを特定する
②ミスマッチを起こしている環境を、遺伝に沿うように修正する
この2段階を着実にこなせば、ほとんどの問題は解決します。
しかし、これだけでは範囲が広すぎてどうしていいのかわからないでしょう。
そこで、現代人にありがちな不調原因を、まずは大きく2つの要素に分類し、そこからさらに個別の対処法を見ていきます。
まず、文明病を引き起こす一つ目の要素が「炎症」です。
これは、人の細胞レベルで起きる火事のようなもので、多くの研究により、鬱や肥満、糖尿病といった様々な不調の原因だと考えられています。
二つ目の要素は「不安」です。
不安は古代から存在してきた感情ですが、実は現代人が抱く不安は、古代人が感じていたものとは全く性質が異なります。
炎症
2016年に研究チームが、スーパー高齢者(長寿)の秘密を探る研究を行いました。
結果は、「一般的な高齢者と比べて、体の炎症レベルが異様に低かった」のです。
かくも重要な「炎症」とは、一体何なのでしょう?
あなたが転んでヒザを擦りむいたとしましょう。
すると、その直後からケガをした部分が赤く腫れあがっていきます。
これが「炎症」です。
大事なのは、炎症が体の表面だけに起きる現象ではない点です。
炎症によるパフォーマンス低下の例として、もっとも身近なのは「風邪」でしょう。
免疫システムがウイルスと戦い続け、熱のせいで脳が正しく機能しません。
ところが、現代人のパフォーマンス低下はもっとわかりにくい形で起こります。
古代と現代のミスマッチが起きるパターンを3つの枠組みでとらえました。
①多すぎる:古代には少なかったものが、現代では豊富すぎる
例)摂取カロリー、アルコール、人口密度、衛生設備、人生の価値観など
②少なすぎる:古代には豊富だったものが、現代では少なすぎる
例)運動、睡眠、空腹感、自然との触れ合いなど
③新しすぎる:古代には存在していなかったが、近代になって現れた
例)デジタルデバイス、インターネット、慢性的なストレス、仕事のプレッシャーなど
この分類を使うと、複雑だった問題の見通しがよくなります。
『実践ガイド』
・腸
その全容はまだ解明されていませんが、腸内細菌の働きぶりは凄まじいものです。
数ある腸内細菌の働きの中でも、もっとも大事なのが「外敵との闘い」です。
腸内細菌がなければ、私たちの免疫システムは攻撃も防御もままなりません。
腸内細菌と仲良くする
①抗生物質を無闇に使わない:1回の使用でも腸内細菌の3分の1が死に、そのダメージは半年が過ぎても回復しません。
②除菌グッズや細菌グッズの排除:良い菌まで殺してしまうような商品は取り除きましょう(キッチンエリアは除く)。
腸内細菌をもてなす
①発酵食品を食べる:納豆、ヨーグルト、キムチなどを食べお腹の調子がよくなったかを確認します。
②食物繊維を取る
環境
現代人への影響が大きい環境は「自然」と「友人」です。
この2つが、現代と古代で大きく違うことは言うまでもありません。
緑が豊かな環境に適応してきた人類にとっては、あまりにも異例の事態です。
「友人」にも同じことが言えます。
古代人の暮らしは最大でも150人程度のグループで行動し、密な関係を築き、全員が知合いか友人といった状態です。
今の現代人は「孤独」です。
自然
①公園の活用:2日に1回は公園に出かけ、最低10分は過ごしてください。
②アウトドアに行く
友人
①接触時間を多く取る:平均200時間ほど他人とのコミュニケーションを重ねれば、たいていの人とは深い仲に慣れるという結論が出ています。
②同期活動:だれかと同じような行動を取れるようになコミュニティに参加してみましょう。
ストレス
ストレスは人を殺します。
人は短期的に終わる急性のストレスをさばくのは得意ですが、現代の慢性的なストレスに立ち向かうようにはできていません。
リアプレイザル:日常で緊張を感じたら「興奮してきた!」と言い換え、誰かにイライラさせられたら「この人に悪いことがあったのかもしれない」と考え直すように意識する。
睡眠
昼寝:どこか寝足りない気分が続くときは12~14時までの間に15~40分の昼寝を挟みます。
『まとめ』
人間の性質上、古代人のような生活を送らないと不健康になる。