バービーは頭を空っぽにして観る映画だった。(若干のネタバレを含みます)
マーゴット・ロビーのバービー姿を見逃すわけにはいかなかったので、徹夜明けのぼんやり頭で映画『バービー』を観てきた。
積極的には情報を得ていなかったものの、フェミニズム映画らしいということは何となく知っていた。
押し付けがましかったり、あまりにも偏ったフェミニズムには賛成できないのだが、マーゴット・ロビーが大好きなので、絶対に劇場で見たかった。
結果‥‥‥
結構面白かった。
☆4.2
(個人的な評価)
バービーランドの皆から、バービーやケンから受け取ったメッセージは
私も大変だし、あなたも大変。
生きることって大変。
だけど、今いる世界から一歩足を踏み出せば違った景色が見えてくる。
自分の頭で考えて、疑問を抱くことを恐れないで。
小さなことからコツコツと。
意外と可能性は広がっているのかもしれない。
頭を空っぽにして観るものだなと思った理由は
「男とか女とか、既存の枠組みを無視してフラットな視点で見たら全人類にエールを送っている映画だった」から。
もし頭がシャッキリしていたら
「これは女性を持ち上げたいのかしら」
「おぉ男性批判きた~」
とか、余計なことを考えてしまっていたかもしれない。
映画バービーのあらすじは
『バービーランドで幸せに暮らす定番型バービー。しかし、ある日バービーランドと現実世界に裂け目が生じたため、「いつもとは違う」出来事が起こる。裂け目を閉じていつも通りの日常に戻るため、定番型バービーとケンは現実世界へ冒険に出掛ける。そこで待ち受けるものとは‥‥』
と、いった感じのユーモアたっぷり皮肉もそこそこのコメディ映画。
アメリカっぽいノリのコメディが好きな人や、ピンク!黄色!といった鮮やかな色使いが魅力のバービーランドを見たい人、マーゴット・ロビーの七変化ファッションを見たい人には是非お勧めしたい。
特に印象に残った5点について語りたいと思う。
①生きるのはみんな大変
バービーランドは「女性中心」の社会。デスクワークから現場作業まで、とにかく女性しか活躍していない。
ケンたちは「バービーのパートナー」以外の役割を与えられず、バービーの視界に入ることしか考えていない。
対して現実世界は「男性中心」の社会で、バービーランドとは正反対。
バービーも、「添え物」だったケンもびっくりする世界が広がっていた。
この対比が面白いなぁと思った。
コメディ映画なので、「フェミニズム」も「マスキュリニティ」もごりごりに、大袈裟に誇張された笑える方向性で描かれているのだけど、そのおかげで押し付けがましさを感じず、すんなり受け入れられた。
バービーランドでの「女って最高!」「女性パワーって最高!」の影に隠れているケン。
現実世界での「男らしさ」「男性の社会支配」の影に隠れている女性たち&「男らしさ」に牛耳られた後のバービーランドのバービーたち。
両者とも同じ立場で、個として「尊重」されていないのだけど、
バービー(女性)が悪い!ケン(男性)が悪い!
という描かれ方ではなく、
皆、悩むよね。大変だよね。
って思わせられる作りになっていた。
私は女性なので、男性の悩みについては知らないことの方が多い。
しかし、ケンの知られざる苦悩も、「男らしい」ケンが泣けないことも、典型的な「男らしさ」についても、
いやぁ男性も男性で大変だわなぁ~
とめちゃくちゃ感情移入をしてしまった。
結局のところ「男らしさ」「女らしさ」「フェミニズム」って
「100人いれば100通りある人の個性を、性別を基準にして画一化していくこと」
なのではないかと思った。
「フェミニズム」をなぜここに分類したのかというと、過激なフェミニズムって女性「だけ」を尊重して、女性「だけ」を優遇して、そして「強く」なくてはいけない。「男性」は取り残されても知らんぷりで、とにかく「女性だけ力強く輝いていたらいいんだよね!」って考え方なのではないかと思ったから。
"フェミニズム" の本質って、女性には女性の数だけ個性、考え方、生き方があって、それを社会的に認めてもらうってこと。つまり、「女らしさ」の押し付けをやめて、女性である前に一個人だよねと理解することなのではないかと思った。
決して優遇や尊重を女性が独占することではないと。
「男らしさ」に関しても、これでもかってくらいテンプレの「男らしさ」で、今時こんな人いないだろ笑とは思ったけど、「みんな」同じような行動して、同じようにゴッドファーザーをウザイテンションで解説していたので、「男らしさ」だって押し付けられるべきじゃないよな。と思った。
安易に男性を「男らしさ」のくくりに押し込めるのではなく、男だってただの個人、人それぞれを認めようってメッセージを受け取った気がした。
男性が添え物になってもダメだし、女性が添え物になっていてもダメだし、皆で個人として認め合おうよ!とバービーたちが叫んでいたように思える。
生きていると、その性別らしい行動が求められることもあるし、弱々しいフリや強いフリをしなきゃいけないときもある。でもそんなことせずに、あんたはあんた、私は私、皆違ってよくない?ハッピー!ってことなんじゃないかな。
②定番型バービーにだって悩みがあるんだもん
マーゴット・ロビー演じる定番型バービーは「自分には何もない」と悩んでいた。
おそらく、職業系バービーたちと自分を比べてそう思ったのだろう。
しかし、バービーだしマーゴットロビーだし、あんためっちゃ綺麗じゃん!十分「何もある」方の人(人形)じゃん!と思う。
だが、一歩引いてみてみると、人から見て羨ましいくらい綺麗でもそりゃ悩みくらいあるよなぁと気がつく。
美人だからいいでしょ。
で片付けられがちなバービーだからこそ、普通に悩んでいること、しかも「何もない」ことについて悩んでいることに価値があったのではないか。
悩みの種類なんか、それこそ人それぞれだしね。
私も同じ悩みがあるので、「何もない」と涙するマーゴットロビー(バービー)を見ていて、胸がギュッと締め付けられる感覚を覚えた。
辛いのよ。自分だけ何もないって。
それは美人不美人関係なく、そう感じてしまったら発生してしまう悩みなんだよね。
③小さなことからコツコツと
現実世界へと渡ったケンは「男」であること理由に、様々な職に応募するのだが、資格がないとか、経験がないとか、そういう理由で全て不採用になってしまう。
バービーランドに戻った後も、法律関係の仕事がしたいと言ったケンに対し、判事バービーは「いきなりじゃなく、下っぱから経験積んでね」というようなことを言っていた。
無職の私にはぶっ刺さりまくるシーンだった。
私も人間なんだからとりあえず雇ってよ!と思うことは多々あるが、それは無理な話で、小さいことからコツコツと経験を積んで、ちゃんと働いて実績を作れってことなんだなと理解した。
④考え続けて、疑問を抱くことの重要性
今いる世界に疑問を抱いたら、違う世界を見てみること。勇気をもって一歩踏み出すこと。広い世界を見に行くこと。
考えることは疑問を持つこと、といっても過言ではない。
疑問を持ったから新しい世界に行ってみるのはとても怖いかもしれない。
でも、未知の世界には想像もできなかった可能性が広がっていたりもするらしい。
⑤なんもなくても普通でもよくない?
若干④と被るところがあるが、今回のバービーでは、「何もない人」も「普通の人」もまるっとごっそり肯定してくれていた気がする。
それでいいんだ、それでいいんだけど、一歩踏み出せば可能性が広がっていることを忘れるな!ってメッセージを受信してしまったと思った。
私も一歩、いや、半歩踏み出したくなった。
最後に
とにかく全編通してユーモアと皮肉がいい具合に機能していて、楽しめるコメディ映画だった。
ライアンゴズリングの熱演のおかげで「男らしさ」は最高にキュートに映っていたし、ケンはケンなんだから自由なんだよと抱き締めたくもなった。
高畑充希さんの声優は素晴らしかったし、事実、エンドロールを見るまでプロ様が演じておられるのかと思っていた。
ただ、劇中に性的な映像はないものの、
「手◯き」「くそち◯こ野郎」「性器」などのキッズNG台詞がちょこちょこあるので、お子さま連れの方はお気をつけください。
私の後ろにも、小学生くらいの娘さん2人を連れたお父様がいらっしゃったので、思わずお気持ちを考えてしまった笑
気にせずゲラゲラ笑わせてもらったけど笑
私には大満足の映画でした。
世界観も可愛かったし。
押し付けがましくなくてよかったし。
皆違って皆いいよな!って思えたし、
ギャグパートではゲラゲラ笑えたし。
観に行ってよかった。