その船は何のために浮いているのか
自分の生きている意味が分からない。これから先の未来に希望が持てない。あまりに長すぎる道のりに嫌気が差してしまう。ずっと広大な海に浮かんでいるような不安に襲われる。いつか急に深海に沈んでしまいそうなそんな不安。一向にたどり着けそうな陸地が見当たらない。見つけたとしてもそこに存在している原住民とは分かり合えないのだろうと考えてしまう。
とにかく自分の人生には安心感というものが欠落している。どうしたら安心感は得ることができるのか。成功体験による自分への信頼、したいことができる財力、周囲の人間からの無償の愛それらの全てが欠落している。
もしかしたら自分は広大な海を旅しているようで実は狭い水槽に閉じ込められていて一生安息地にはたどり着けないのではないか。そんな不安が人生を蝕む。溺れていないのにずっと溺れているような苦しさで息が詰まる。
安息地へ向かう自らの船ですら舵を取ることができない。いつも行先は自分の行きたい場所ではなく誰かの行きたい場所。そんな自分に嫌気が指すが自分の行きたい場所へ行く勇気が出ない。もうどこへ行きたかったのか、どこへ行きたいのかも分からない。そんなところ本当はないんじゃないか。ものすごく恐ろしい場所なのではないか。一度他人に強引に取られた舵はもう以前にようには動かない。任せた方が上手くいくような気がしてしまう。
もういっその事沈んでしまおうか。こんな旅はもうやめにしよう。そう考えることも少なくない。自分はきっとどこかの漫画のような船旅はできない。自分を支えてくれるような船員もいない。目指すような秘宝もない。一生孤独にこの海で誰にも知られずに沈んで行くのがどれほど怖いか考えるだけで憂鬱だ。急に変わる天候、孤独、いつ沈むか分からぬ船、行くあても忘れてしまったこの船はいつまで浮かんでいたらいいのだろうか。なんのために浮いているのだろうか。