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近江商人の哲学は労働者を救う!?
『売り手よし、買い手よし、世間よし』
『三方よし』の精神を受け継がれている企業で有名なのは伊藤忠商事です。
私は伊藤忠商事の元社長、会長を務めた作家の丹羽宇一郎さんの大ファンです。
『死ぬほど読書』という本の中でも近江商人についてふれていました。
とにかく読書が好きな方で、読書経験と人生経験をミックスされた素晴らしい知見が本の中で語られています。
伊藤忠商事の創業者伊藤忠兵衛の言葉を紹介します。
『商売は菩薩の業、商売道の尊さは、売り買いいずれをも益し、世の不足をうめ、御仏の心にかなうもの』
『三方よし』の精神の中には、菩薩のような神聖な心が含まれていることが、この言葉からもうかがえます。
昨今、悪徳商法で金をかすめとる輩がいる中で、長らく会社を存続できている企業は『利他の精神』で仕事をしているからです。
仕事の概念は『人の役に立つこと』です。
人の役にたつことで、その謝礼として対価を受け取ります。ということは、売り手、買い手ともに、利益が生じ、互いに喜んでいるのです。
そのような相互関係が良好なら、物の売り買いでトラブルなど起きるはずもありません。
しかし、古今東西で、利己的に自分たちだけが儲かればいい、と思って商売をしている人たちは、絶えないのです。
もともと利他の精神なくして、商売などできないと思います。
ここからが本題ですが、労働力も商品です。
皆さんは今している仕事の対価に満足されていますか?
私は満足していません。と言うか、皆さんも同じ意見ではないでしょうか。
今の仕事で得ている給料と、その労働が等価交換になっていることを考えたことはないでしょうか。
給料が安い、と思っている方は等価交換になっていない証拠です。
この仕事のきつさには、せめて後5万上乗せしてほしい、と思われる方も多いのではないでしょうか。
私がいる運送業などは、みんなが毎月給料日に不満をもらしています。
サラリーマンのように固定給ではなく、歩合給であるため、毎月給料が2万~5万上下します。
もちろん多い時に不満はありませんが、80%の確率で想像より安いですね。
先月も、同僚と給料について話しているとNさんが面白いことを言いました。
『仕事の大変さ、きつさで給料を決めてほしい。売り上げに対しての何%のバックだと、運賃が高い仕事をしている人が、いい給料をもらえる。だから、きつさを数値化できるような万歩計のようなものをベルトにつけて、消費カロリーで給料が支払われれば、不満はない』
なるほど、と思いましたが、会社がそんな面倒なことをするとは思えない、と言いました。
営業マンも、住宅1件売っていくらとか、車1台でいくらなど明確な歩合給があると思いますが、その歩合が安すぎると思っている方は多いと思います。
しかし、現実は使用者も、労働者の労働力を高く買い取って喜ばせたいという願望はあると思います。
ところが、払えるだけの原資がないのです。
労働者は労働力を高く買い取ってもらいたい。
使用者も高く買って上げたい。
双方の理想は一致していると思いますが、やはりお金がないのです。
この大元をたどると、経済全体の問題になります。
私は門外漢なため、経済学者に解決策をひねりだしてもらうしかありませんね。
しかし、単純に一般労働者が願うのは給料、時給単価を上げて欲しいということです。
ただ、近江商人の『三方よし』の哲学が浸透すれば、売り手である労働者も、買い手である使用者も、よくなって世間全体の景気がよくなると思ったまでです。
なかなか現実は色々な問題がからみあって、思い描く理想の社会はほど遠いですね。