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読書感想 『宙(そら)わたる教室』伊与原新

定時制高校に通う生徒たちが、科学部を作り、研究発表を目指すという話。2024年度の高校生読書感想コンクールの課題図書に指定されている。
また、昨年、NHKでドラマ化もされた。

定時制には様々な事情を抱える生徒が通っている。
勉強につまずき、それがきっかけで道を外れてしまった「岳人」。
彼は、藤竹先生の気づきにより、勉強のつまずきはディスクレシアによるものだと分かる。
学校に馴染めず、オーバードーズ、リスカを繰り返し、中学校を不登校になった「佳純」。
SF小説に対しての洞察の深さから、科学部に関わることになる。
貧しさ、生活、幼い兄弟姉妹への仕送りのために、高校へ進むことを諦めざるを得なかった、「長嶺」と「アンジェラ」。
この4人を科学部に誘い、顧問となる藤竹。
彼も、権威主義のアカデミアに対して、立ち向かおうとしている教師だった。

とても心が震える良い本だった。
知りたい、学びたい、という意欲は、人間の本質なのだと考えさせられた。
困難に立ち向かい前に進もうとする人たちの姿に、何度も胸が熱くなり涙腺が緩んだ。
また、この物語には、救いと優しい奇跡があり、それが心を温めてくれた。

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