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読書感想『ゴリラ裁判の日』須藤古都離
昨夜読了。読もうと思ったきっかけは、勤務先の生徒がこの本について、おすすめ本ポップを書いていたので。第64回メフィスト賞受賞。
本の帯には、京極夏彦、宮部みゆき、斜線堂有紀、宮島未奈など、名だたる作家たちのの推薦文が!
緻密な文章で描かれている、重厚なテーマの物語だった。
手話を覚え、言葉を手に入れたゴリラのローズは、射殺された夫のために裁判を起こす。夫のゴリラは、ゴリラパークの柵を乗り越えてしまった男の子の命を守るという動物園側の理由のため、射殺されてしまう。
「ゴリラに権利はないのか」という起点から、第2回目の裁判では、ゴリラと人間の違い、人種の違いによる差別、強者と弱者、健常者と障害者、銃規制についてまで話は及び、法廷劇としても楽しめ、また考えさせられる。
この本を読んでいて、日本の本っぽくないなと感じていた。
あとで、調べたところ著者は、海外の翻訳本が好きで良く読んでいたというので、その影響かもと思った。
言葉を持つことで広がる世界がある。ただ、どれだけ言葉で伝えようとしても、真意を伝えられないことがある。言葉には限界がある。
でも、その事実にローズは絶望しない。カメルーンのジャングルで、リリーと一緒に沼に入っていくシーンが好きだ。心で通い合うことができる時、そこに言葉は必要ないのかもしれない。