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【料理がしんどい】が、くつがえる食の本
心療内科に通い、会社を退職して通院しながら図書館に通っていたときのこと。
自己肯定感が低いまま大人になった私は、初めて自分の体に良い食事を与えてあげたいという思いになり、食の本を片っ端から読んでいました。
最初に出合ったのは、確か辰巳芳子さんと平松洋子さんと料理人ちこさんの本でした。
どのエッセイも心を打たれ、同じ著者のものを何冊も何冊も読んでいったことを覚えています。
素晴らしい食の本はたくさんありますが、その中でもベスト5に入るのが「料理人ちこ」さんの本です。
日々の食事作りや食に対する価値観が一気にくつがえりました。
今回紹介する本は、「料理がしんどい」と思っている人が、「よし!作ろう!」とエネルギーをもらえるものです。
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子どもの幸せを願うなら、思わず肩の力が抜けるような、温かいごはんで迎えてあげたらいい。それだけで、やさしくたくましい子に育ちます。
パートナーの帰りが遅いなら、わざわざ帰って食べたくなるような、美味しいごはんを作ってあげたらいい。それだけで、二人の絆は深まるものです。
家庭料理を作ることは、一見地味なことでしょうし、お給料も出ません。
けれど私は、最も尊重されて然るべき役割だと思うのです。
むしろ、お金は換算できない価値が、そこにはある。
一軒一軒の家庭が、幸福な食事をする。
それって本当は、すごく大きいことなのです。
たったそれだけのことで、間違いなく世界は変わるでしょう。普段の暮らしを変える以上に、人生を変える近道はないのです。
『美味しいごはん』(サンマーク出版/料理人ちこ)より引用
私が家庭料理は映える必要もプロのように美味しいものである必要もないと思うのは、むしろプロにはかなわないものが家庭料理にあるからです。
家族を思って作ることー。
「今日は子どもが風邪気味だな」「お腹痛いって言っていたな」「ここのところ忙しくて疲れているだろうな」「テスト前だから」「試合前だから」「元気がないから」
そんな家族の様子を頭に浮かべつつ、献立を考えたり思いを込めて料理をしたりする。
それはプロのお店ではできません。
無給で無休で毎日作り、人生の土台となる健康と精神を支え、育んでいく。
こんな尊い行為はあるでしょうか。
その積み重ねが人と自分を育み、幸福の土台にもなっていくー。
さて、今日も夕飯を作るとしましょう。
今夜はデミグラスソースとトマトジュースを使った「ハヤシライス」でした。
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それでは、また。