思索する食の本
食育では、六つのこしょく「個食」「孤食」「固食」などを避けることを伝えるが、本書では、家族絶対主義の匂いがする「孤食」でも共食でもない「縁食」をテーマに、各誌で綴ったエッセイのアンソロジー。
著者が提案する「縁食」とは何かを、いろんな角度から書かれています。ざっくり書くと
「縁とは、人間と人間の深くて重いつながりという意味ではなく、単に、めぐりあわせ、という意味である」
というように、あっさりしたもので、敷居が低いだけに無理に話さなくてもいいし、作り笑いも無用という場所で食べることを示します。
縁食の場が広がれば、居場所のない子達も気兼ねなく食べたり遊んだり自由に過ごすことができると、著者は言います。しかし、コロナになり、ますます縁食が厳しくなっているのはたしか。外食産業や農家とも手を取り合い、気楽に食べて過ごせる場を持続できることを願います。
著者の藤原さんは、農業史、食の思想史を専門とする京大人文科学学研研究所准教授で、子ども食堂や給食無料化が進まないことなど、食にまつわる問題についても本書で示唆されています。
なかなか読みづらい独特な文章でしたが、考えさせられるものがありました。特にコロナによって打撃を受けたシングルマザーの生活と子どもの食事の関係、子ども食堂のことなど、格差が広がる社会のなかで、どうしたらよいのかと、実際にシングルで経済的に苦労しながら子育てしている友人たちを思い浮かべながら、読み進めました。
著者は食を商品化せずに、誰もが手に出きるものにしたら、どれだけの人が救われるかということを提案しているが、現実的には難しい問題だろう。
とはいえ、「プロセスエコノミー」という本では、2050年には食も電気もほぼ無料になる時代がくると書いてあるのを見て(詳細は本書を読んでください)、著者が望む未来が本当に訪れるなかな…という希望を感じましたが、果たしてどうなってゆくのか。
再読して、もう少し自分の考えを深めたい。何ができるのか、何かできることはあるのか。私も学び考えていきたい。
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