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「ノーカントリー」という作品
邦題: ノーカントリー
原題: No Country for Old Men
公開: 2007
出演: トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン その他
第80回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、監督賞、助演男優賞を受賞し、世界でも多くの賞を受賞した名作。
原題の「Old man」はT.L.ジョーンズ演じる保安官ベルを指しているようで、「年寄りに居場所はない」というような意味のタイトル。
作品は、偶然手にした大金を手に逃げるモス(ジョシュ・ブローリン)と、それを追いかけるシガー(ハビエル・バルデム)、そしてモスをシガーから守ろうと奔走するベル(T.L.ジョーンズ)を軸に展開していく。
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物語自体、ナレーションや迫力のある音楽などはほとんどなく、淡々とシガーが人殺しを繰り返し、モスを追い詰めていく。
モスを守ろうとするベルは、ただシガーの痕跡を追うだけで、なかなか2人の領域に踏み込んでいくことができない。
陰鬱で淡々とした展開と、シガーのサイコパス感溢れる狂気は、ホラー系とは異なる恐怖。
モスとシガーに訪れる予想外のクライマックスと、ベルが何もできずにただ事件を傍観しているだけの無力感は、他の作品にはないコーエン兄弟らしさなのかと。まさにタイトル通り、年寄り(ベル)には居場所がない(何もできない)、という作品。
静かな恐怖と、どうしようもすることのない運命と現実を味わうにはもってこいの一作。