5.12 バンコク、ハリーポッター
今日はバンコクで
1番ぱっとしない1日だったかもしれない。
昨日はたくさん歩いたので
朝はゆっくり起きる。
と言っても9時には起きて上出来。
妹は夜寝付けなかったらしく
起こしてみるとまだ寝ると返事。
スッキリといい目覚めで
ラジオ体操をする。
朝、できるだけラジオ体操を
しようと決めていた。
毎朝、だと義務感もあり
できない日が続くと嫌になるので、
できるだけ。
そういうほどよい甘やかしは
継続に効果的だ。
予防接種でしばらく腕を上げるのが痛く
お休みしていたが、再開。
空は青空。
誰もいないリビング。
久しぶりのラジオ体操に
意気揚々としてくる。
いつもは第2までだが、
第3というのも見つけて
やってみることに。
馴染みのある第1に
変調とドラマチックな雰囲気のある第2。
第3は、曲も初耳、
第1、第2と被らないように
トリッキーな動きが増える。
変な動きに慣れない音楽。
戸惑う表情で第3をやっていると、
宿に泊まっいる人が
リビングに降りてきた。
「オー、グッドアイディア」
と言って、テーブルを挟んで
向かい側でストレッチをはじめた。
パックパッカー風の荷物と
Tシャツに楽な麻のようなパンツ。
シンプルでカジュアルなのに
ちょっとオシャレな雰囲気があった。
初見の音楽に乗れておらず困り顔をして
奇妙なストレッチをする日本人。
正面であまりのダサさに
なんだか恥ずかしくなってくる。
水を飲む振りをして冷蔵庫に取りに行き
第3をやめる。
気まずいほどではないが
青空には不釣り合いな
微妙な空気が流れる。
どこ出身なの?と聞いてみると
アメリカの○○州、と返ってくる。
彼はタイには前に仕事で2年ほど住んでいて、
今回は久しぶりにタイに来て
バカンスしているという。
夏休み?と聞かれたので、
仕事を辞めて旅をしてるんだ、
と答える。
人嫌いではないが、
今は会話を進んでしたいときではない、
という雰囲気が漂う。
話はあまり弾まない。
彼はコーヒー飲みに行ってくる〜と
出発した。
旅慣れてる人は
意外とガンガン距離を詰めてこない。
人と出会いすぎて疲れるのか、
話したいときに話し、
無理に全員とたくさん話さず
自分の心地よい分量とペースでいる人が
多い気がする。
彼にもそれを感じたが、
プラスで何か別の気まずさを
醸し出された気がしていた。
旅先では、どこからきたの?と
互いに何気なく最初に出身を聞くことが多い。
聞かれたら聞き返すし、逆もしかり。
だが、今朝はこちらは聞いたが
彼には出身を聞かれなかった。
今書いててはと思い出したが、
朝彼と会っているかもしれない。
部屋を出ると廊下があり、
15歩ほどで共有のシャワーとトイレがある。
ほぼ人と会わずに行ける距離感なので
気を抜いた格好の人もいる。
朝部屋から出ると、
ちょうど向かい側からも1人
男性が出てくるところだった。
彼は服を着ないで
腰にバスタオルだけ巻いていた。
誰とも会わずにシャワーかトイレまで
行く予定だったのだろう。
さすがに気まずくて、
お互いに簡単に、
「オー、グッモーニン」
だけ交わしていた。
あまりよく顔を覚えていなかったが、
その彼だった気がする。
それで朝の体操のときに
あまり感じたことのない
変な空気が流れていたのかもしれないと
今、合点がいった。
そんなワケで
微妙なラジオ体操が終わったあと、
ハマっている本をKindleで読み進める。
世界一周では中々紙の本が読めないので
あまり電子書籍は好きではないが
Kindle Unlimitedを入れていた。
ちょうど気になっていた
「世界史を大きく動かした植物」
が入っていたので、読んでみると
これがすごく面白かった。
朝も続きが気になり早く読み進めたいと、
のんびり妹の起床を待つ間に
読むことに。
トウモロコシやイネ、
ジャガイモやトマト、
コショウにトウガラシなど
植物に焦点を当てながら
戦争や植民地、飢饉や疫病など
世界史と食文化の話が
大きなスケールの時間と空間の軸で
語られていて、ものすごく面白い。
元々、こういうスケールの大きい
全体感を捉えた話が好きな上に、
まさに世界一周を始めたところも相まって
ぴったりとハマった。
あっという間に読み終わり、
同じ著者の別の本も読んでみることに。
眠れなくなるほど面白いシリーズの
植物学バージョンだ。
そうこうしていると、
11時のアラームが鳴る。
妹はまだ起きてこない。
あまりにも寝過ぎである。
さすがにと思って電話をかけて起こし
やっとリビングに降りてくる。
朝ごはんに、昨日お土産でいただいた
マンゴスチンを食べる。
ジューシーで甘くて、
とろけるような食感がものすごく美味しい。
ランブータンと並んで
ハマる美味しさ。
南国フルーツは美味しいが、
中でも夏のこの時期タイでは
マンゴスチンとランブータンと
マンゴーが旬のようである。
なんとも当たりの季節にやってこれて
うれしい限り。
しかも、普段日本にいるとき、
果物アレルギーがひどく
ミカンとバナナ以外は食べれない。
海外で初めて食べる果物は
アレルギー反応がひどいものもあり
気を付けていたし、
元々果物は好きだから、
日本にいるときも食べれない方が辛くて
果物が目に入らないよう
避ける生活をしていた。
しかし、せっかく南国にきているし
アレルギーが出ない果物もある。
試しにひと口かじって大抵は
口が痒くなり後悔するのだが、
マンゴスチンとランブータンは
アレルギーが出なかった。
久しぶりに新鮮な果物を
がぶりがぶりと心ゆくまで食べれる。
果物って、
こんなにも甘くてジューシーで
美味しいものだったっけ。
それも重なり、タイで
アレルギーの出ない
旬の安くて美味しいフルーツを
山盛り食べるのは至福の時だった。
マンゴスチン、わたしが食べた
2つとも種は入っていない。
妹が食べたものは2つとも種が入っている。
しかも、見落とすようなことはない
そこそこ大きい種である。
なんとも不思議で、調べてみる。
植物学の本を読んでいて、
アレルギーも出ないのも相まって
果物について調べるのが楽しい。
そんなこんなで朝はたっぷりの
果物をたのしんだ。
お昼はどうしようか。
昨日はあまり辛くないものを
食べさせてもらった。
今日はなんだか既に
タイの辛さが恋しくなっている。
タイの味に慣れてきて
ココナッツの濃厚さと、
ちょっと辛くて甘酸っぱい
スパイスの効いた
タイのカレーが食べたかった。
モチベーションは2人とも高い。
自炊の材料の残りもあるし、
節約もしなくてはいけない。
カレーを1人前テイクアウトし、
お米は自分たちで炊いて、
簡単なレンチンおかずも作ることに。
どっちの食堂にしようか、
見て決めようと思ったら
片方はお休み。
それならと、既に2回行ったお墨付きの
カレー食堂へ。
メニューと実物を見比べる。
まだタイに来て食べていない
ほうれん草カレーを見つけた。
''タイ風''ほうれん草カレーと書いてあり
なんだか良さそうなのでこれにする。
60バーツ。
たっぷりとパンパンに詰めてくれる。
ビニール袋に詰めてくれるのが
東南アジアのテイクアウトという感じがして
空気で膨らんだ丸々の袋が愛らしい。
意気揚々と帰宅。
ご飯を炊いて、卵とトマトとほうれん草で
なんちゃってオムレツのおかずを作り
準備は万端。
ほうれん草がたっぷり、
細かく刻まれて
じっくりことこと煮られたような
ココナッツミルクとのとろみが美味しそうだ。
いざ実食。
…。なんということだ。
苦い、苦すぎる。
もう一口。
やはり苦すぎる。
灰汁をそのまま煮込んだようなえぐみが強い。
舌が警報を鳴らし、体が拒絶するレベル。
少しでも和らげようと
ココナッツミルクと
砂糖を足しても、
苦味が強調されるだけ。
あんなにカレーモチベが高く
しかも確定に美味しいお店の
ほうれん草カレーがこんなことになるなんて。
誰かウソだと言ってくれ。
あまりにショックが大きい。
2人して意気消沈。
2人して落ち込んでいると、
ふとあるひらめきが降ってきた。
まさか、朝甘いフルーツを食べ過ぎて
苦味に敏感になっているのではないか。
あの甘いランブータンすら
甘く感じなかったほどの甘みの
マンゴスチンをたくさん食べた。
名探偵さながらの推理。
それならと、口をリセットしようと
紅茶でうがいをしてみる。
しかし、紅茶は普通であった。
なんなら苦味はほとんど感じない。
舌が治ったのかもしれない。
ほうれん草カレーを
もう一口食べてみる。
やっぱり苦い。苦すぎる。
何度食べても苦すぎた。
間違いない美味しさを求めて
お気に入りのレストランに行き、
気持ちが最上級に高まって
楽しみに食べたからこそ
ショックがあまりにも大きかった。
昨日の充実した疲れなのか
カレーのショックなのか、
なんだか頭も少しクラクラしてきて
寝ることにした。
少しすると妹も昼寝にきた。
どれくらい時間が経ったろう。
起きるもなんだかまだ眠い。
ベッドに横になって
植物学の本も読み終えてしまった。
何か他にKindle Unlimitedで
面白い本はないかと考えていると
ハリーポッターを思い付く。
ハリーポッターは昔、映画を
金曜ロードショーで横目でなんとなく
見たことがある程度で、
実はちゃんとしたストーリーを知らない。
ハリーポッターは
全員が通る道、世界の常識、
共通の教養と言っても過言ではない。
世界の本の売上ランキングも
トップ10に入る世界一の物語の1つ。
世界を旅するのにもう一度しっかり
知っておきたいとずっと思っていて、
これを機に読んでみることにした。
余談だが、
小学生のときのわたしは本が苦手で
文集かプロフィール帳の嫌いなものの欄に
「長い本(ハリーポッターとか)」
と書いているようなこどもだった。
さらに余談だが、
NARUTOも世界中で大人気だしと
出国前に60巻くらいまで一気に読んだ。
タイでも1度行ったレストランの
イケメンお兄さんが
イタチのTシャツを着ていて、
読んでてよかった。
よく行くマーケットにあるお店なので
顔を覚えてくれたらしく、
通りかかると遠目におはようは言う仲に。
ナンパするなら
イタチが会話のきっかけに
なってくれるだろう。
旅をするには、とかこつけて
クーラーの効いた部屋のベッドに寝転んで
ハリーポッターを読み出す。
これがなんとも最初から引き込まれて
ワクワクして面白い。
(みんな知っている)
外が暗くなり、
電気を付けていなかった部屋も暗かった。
時計を見るともう19時だ。
もそもそ起きてご飯を作る。
お腹は空いてきた。
お昼のほうれん草カレーのショックが
大きすぎる。
妹と、夜は美味しいものが食べたいと
自炊もするが、1品コンビニで買うことに。
ガパオライスが美味しそう。
レンチンを待っている間に
何気なくスナックコーナーを見てみる。
エビの絵が書いてあるを理由に
タイのスナックも試そうという話になり、
気が付くと缶ビールまで買ってしまう。
プシュ、カーという
聞き慣れた懐かしい歓喜の音がする。
冷えていないのが惜しいが、
味の濃いガパオライスと
美味しいのである。
なんとも堕落した1日。
妹は旅の中だるみ、なんて言っているが
むしろ活動的に外に出ている日の方が
数えるほど。
基本はリビングか目の前のセブンか
徒歩1.2分のお気に入りの食堂に、
徒歩5分のマーケットでほぼ完結している。
圧倒的に宿にいて
ゴロゴロ寝ているかフルーツを食べているか
コラージュを書いている時間が多い。
YouTube漬けになっていないのが救いか。
しかもロング缶1缶では足りない。
もう1本買い足すか。
この堕落した自分たちに
ビールをもう1本買い与えることを
許せるなら、と葛藤する。
しかも、ロング缶で1本56バーツ。
約224円と、タイでご飯1食と
あまり変わらない贅沢品だ。
しかも、こんな何もしていない日に
ビールだけ飲んで
味を占める訳にはいかない。
運動不足に過剰睡眠。
ハズレのお昼のやるせなさにビールに手を染め
タイまできてベッドでハリーポッターを
読み出す始末。
ぬるいのが助け舟だった。
ぐびぐびとは進まない美味しさなのだ。
「これがキンキンに冷えたビールだったら
あと2本は買っていたね。」
というと、
妹は
「いや、4本やな。」
と神妙な面持ちで返してきた。
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