長編小説•ちょうどいい人②
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第三話 友人の妊娠
家事が一段落して、お茶を飲んでいた。
そうしたら、スマートフォンが鳴り出した。
相手は高校の同級生、佳代子だ。
「わー、佳代子!久しぶり!元気にしてた?」
最後に佳代子と会ったのはいつだろう?
一人子供を産んで次の子を流産して。
励ましに行ったっけ。
「もう真夏がさ、元気過ぎて!そう、今月で5歳になるのよ。仕事行って帰ってから、家事と真夏の世話で、てんやわんやよ!」
佳代子は高校の先生をしている。
国語教師だ。
高校時代、佳代子が国語が得意とか好きとか、全く知らなかった。
「子育てしながら仕事もしていて、すごいよねぇ!」
「ありがとね、でも、来年には、次の子が産まれるしさ。かぁちゃん、がんばるよ」
「え?佳代子、妊娠したの?」
「そうそう!もう40だから無理かな?と思ったんだけどさ。
真夏が一人っ子なのは可哀想な気がして。
いや、もう一人育てたかっただけかも?ハハハハ!」
佳代子が豪快に笑う。
「あれ?今日は仕事じゃないの?」
「助産師さんに相談に行ってきた。普通の病院では産みたくないからさ。だから、特別にお休みもらったの」
「そうなんだ。産婦人科での出産って色々あるものね。佳代子が選んだ道なら応援するよ!」
「ねぇねぇ、どうしてもの時に真夏のベビーシッターお願いできるかな?
しばらく会ってないけど、真夏、千春のことが好きみたいだから。
昨日写真見せたら、ちぃちゃんと遊びたいって走り回っていたよ!」
わたしは子供がいない。
でも、子供と遊ぶのは好きだ。
子供と波長が合うのか、遊ぶとすごく愉しい。
「いいよ!前もって連絡ちょうだいよ。
佳代子の家に行くから!」
そんなやり取りをして、二人の会話が終わった。
40で子供かぁ……。
去年、千春は慎吾に聞いてみたことがある。
「ねぇ、慎吾。40までなら女性は妊娠できるかも?協力してくれたら、子供できるかもよ」
「え?うちは子供いらないよ!」
そのひと言で会話は終了した。
千春はどうしても子供が欲しいと思ったわけではない。
平日ずっと一人ぼっちで過ごしているのが、寂しいだけだ。
そして、子供ができるような営みも、5年以上ない。
わたしは慎吾から女として見てもらえないのだろうか?
女としての魅力は無いのだろうか?
佳代子は旦那さんから女性として求められたから、妊娠した。
その事実は、千春を打ちのめした。
わたしは性的な関係、いや、キスでさえ、死ぬまで誰ともすることは無いのかもしれない。
まだ40なのに。
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