子宮頸がんは「予防」できる。
新型コロナウイルス感染の恐怖。
私たちは、知らず知らずのうちに行動を変えました。
・手洗い
・うがい
・マスク
・ソーシャルディスタンス
・・・芽生えたのは「予防」の意識です。
「予防」といえば、未然に防げる婦人科疾患があります。
子宮頸がん、です。
コロナ渦中ついに日本で「子宮頸がん9価ワクチン」が承認されました。「シルガード9」(ガーダシル9)が製造販売承認されたのです。
子宮頸がん9価ワクチンは広く世界で使用されているワクチンであり、欧米では男性の接種も主流になっています。
「ワクチン」については、これまで〝他人事〟と感じていた方も、コロナウイルスによって感染症の怖さを痛感して〝自分事〟として興味をもつようになった方も多いのではないでしょうか?
ワクチン接種する?しない?
「子宮頸がんワクチン問題」は、みなさんご存知の通り、これまでに様々な方面で賛否両論が繰り返されてきました。
現在、子宮頸がんワクチンは2価・4価・9価と3種類ありますが、予防できるウイルスの型の範囲が広いのが9価ワクチンになります。
しかし、いずれも気軽に受けられる価格でなく、一般的にはまだハードルが高いのかもしれません。
私自身は産婦人科医にアドバイスを受けたことがきっかけで過去にワクチン接種済ですが、当時は周りには「自分も接種済だよ」という友人や知人は少なくて不安だったことを覚えています。
「大人になってから接種するのは意味があるのか?」とも感じましたが、自分なりに勉強して「妊活をする前の時期に受けておこう」と思いました。(実際、私は年齢的には30代になっていましたのでそれ以前にもしもウイルス感染していた場合は子宮頸がんワクチンを打ったからといってHPVを排除できないことになります)新たにウイルス感染する可能性やリスクも当然あるので「予防」として接種を決めたのでした。
子宮頸がんワクチンというのは、3回の接種でワンセットになります。 今回、承認されたばかりの9価ワクチンの費用は1回あたり約35,000円程度なので、3回だと合計10万円程度かかるということになります。
これらを国内で無料で受けられるようになるにはまだ時間がかかるそうで、予防のために投資するかは個人次第と言えるでしょう。
現在、「コロナウイルスはこの先どうなるのだろうか?」と不安になっている人は多いと思います。私も同様に不安です。
わかっていることは、治療薬の承認やワクチンの接種が可能になるまでまだしばらく時間がかかること。そして、もしもワクチン接種が可能になったとしても、ウイルス自体はなくなるものでないということです。
来年にはまた未知の新たなウイルスが出現する可能性だってあります。
これらは、子宮頸がんや尖圭コンジローマの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)に関しても同様ではないでしょうか。
だからこそ、私たちはあらゆる「感染症」への意識を高めながら生きていくべきなのかもしれません。「予防」が、何より大切なのです。
ちなみに、子宮頸がんで死亡する女性は日本では年間約3000人と言われています。コロナの死亡者数どころでありません。
もっと多いのだという事実も知るべきです。
自ら情報を取捨選択する力
新型コロナワクチンについても、子宮頸がんワクチンについても、
「どこの、何の、情報を信じれば良いの???」
これが、皆さんにとって気になる事なのではないでしょうか?
・医師の見解
・メディアの見解
・ジャーナリストの見解
・政治家の見解
・当事者の体験談
影響力のあるインフルエンサーがsnsで一言発信すれば、その言葉が一人歩きしてしまう時代。日本人は同調して安心する国民性があるのでプロモーションに左右されることも多いかもしれません(そうでなければ拡散されにくいという側面も・・・)
不安を煽る情報を流すことも多いので、メディアの報じる内容次第では一側面だけしか見えず、判断が難しいこともあります。実際には、個人の様々な体験談などはTVでは深くとりあげられにくいのです。
情報洪水の中で、何を信じどの情報を取捨選択すれば良いのか?迷う事も多いと思いますが、情報に対するリテラシーをつけ、医師など専門家による情報や発表を参考にしながら自ら選択する力が求められていると感じます。
子宮頸がんの関連情報については日本産科婦人科学会がオフィシャルに発表している最新のものがあります。
下記リンクをぜひ参考にされてみてください。
①公益社団法人 日本産科婦人科学会_HP
子宮頸がんと HPV ワクチンに関する最新の知識と正しい理解のために(2020/7/22更新)
②WHO「World Health Organization」
全世界的な公衆衛生の問題「子宮頸がんの排除」に向けて
「子宮頸がん」の患者数と死亡率
子宮頸がんは20〜40歳代の若い女性に多く、日本では年間約1万人の女性が子宮頸がんにかかり約3000人が死亡しています。2000年以降〜患者数も死亡率も、増加しています(図1)
※図1:国立がん研究センターがん対策情報センターデータより
下記グラフのとおり、アラサー世代に多く30代後半の女性がピークになっています。妊活〜妊娠〜出産〜子育てで忙しい働き世代の女性層だということがわかります。(図2)
(図2)子宮頸がんの年齢階級別羅漢率
ヒトパピローマウイルス (HPV)とは
子宮頸がんに関係すると言われるヒトパピローマウイルスは、実はどこにでもごく普通にいるウイルスです。
実際は200種類以上ある、ごくありふれたウィルスだと言われています。
その一部は、子宮頸癌、肛門癌、中咽頭癌、陰茎癌、外陰癌、膣癌、尖圭コンジローマなどに関わると言われており、発がん性のある高リスク型といわれるものは 16・18・ 31・ 33・ 35・ 45・ 52・ 58 型など約 15 種。
尖圭コンジローマや良性腫瘍の原因となる低リスク型は6・11 型などに分類されます。
Q:HIV(AIDS)のこと??
HPVはHIV(AIDS)とは全く別物です。
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、男女ともに感染するごくありふれたウイルスで一生に一度は誰しもが感染しているとも言われているほどです。
通常は免疫力で自然に自己排出できたりするものですが、約10%の人にウイルス感染が長期間持続すると言われています。そして、これが自然治癒しなかった場合に「異形成」といわれる前癌病変となり、さらに進行した場合に子宮頸がんとなるのです。
子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)は現在、世界の70カ国以上において接種が行われていると言われています。このワクチンにより60~70%、子宮頸がんの予防ができると考えられています。
Q:ワクチンは何歳で受けるのがいいの?
性交渉を経験する前の10代前半に接種することが望ましいと推奨されています。最終的には個々人の判断になるところですが、性交渉を経験する前が11歳なのか、15歳なのか、20歳なのかは個々人によるので絶対とは言い切れません。小学生と高校生では体格も筋肉量も差があります。体への負担を考えると小学生での接種を躊躇する親御さんも多くいらっしゃるのではないでしょうか。性交渉について、また子宮頸がんやウイルス感染について親子でどのように話をするのか、学校での性教育など正しい知識を学べる場はまだまだ不足しています。
Q:ワクチンの副作用が心配・・・
ワクチン接種後、特定の症状が生じた人の例がとりあげられ、副作用によってつらい思いをされている当事者やそのご家族がおられることは事実です。
そのことがあり日本国内では2013年6月より自治体による積極的勧奨が差し控えられてきました。未だ反対する団体や考え方の方もいらっしゃいます。しかし、これらの症状は厚生労働省がワクチンとの因果関係を否定しており、科学的根拠をもって説明するのが難しいと言われています。
参照:厚労省 平成25年4月以降のHPVワクチンに関する情報
日本産科婦人科学会によると、安心してワクチンを受けられるための情報提供、および体制作りには今後より力を入れて啓蒙努力をされていくとのことを発表されています。
Q:子宮頸がん検診を希望する場合は?
企業にお勤めの方は指定の健康診断時に併せてチェックできることが多いです。健康診断時に「婦人科検診」をプラスして受診されてください。主婦、自営業、フリーランスの方は婦人科にて「子宮頸がん検査」希望と伝えて受診されてください。お住まいの市町村から送られてくる子宮頸がん検診のクーポンが対象の年齢なら費用補助があります。
Q:検診は1度いったらそれでいいの?
一般的には2年に1度検診をと言われていますが、おつきあいしているパートナーがいる、性交渉がある女性なら定期的な受診が安心だと思います。
(男女ともに意識してチェックするのが理想。性交渉で移る感染症は様々あります)
Q:検診に行くのは面倒じゃない?
検診も「セルフケアの一貫」です。子宮頸がん検診の他、子宮筋腫や子宮内膜症などの有無もエコー(超音波検査)でチェックしておくとブライダルチェックにもなります。「細胞診」と「超音波検査」のセットが安心です。 婦人科ではピルの処方についても相談ができますので、生理トラブルがある方などは日頃からかかりつけのクリニックをもつことも婦人科系疾患の予防としておすすめです。
Q:もしも、子宮頸がん検診にひっかかたら・・・
子宮がん検診の検査結果で「陽性」になった場合、「どうしよう・・・」と不安になる女性もいらっしゃると思います。
「軽度異形成」の段階だと伝えられた場合は、ウイルスを自然排出できる可能性があるので不安になりすぎないでください。そのためにも規則正しい食事・運動・睡眠、生活習慣を整えましょう。しかし、ウイルスを長期間自己排出できなかった場合は高度異形成(がん化)させてしまうことがあります。ストレスや低体温など免疫力の低下状態も考えられます。ストレスフルな生活を避け、自己免疫をあげておくことも大切です。万一、ステージが進行しているがんだった場合には、早期に病院で適切な治療を受けて下さい。
(芸能人では原千晶さんや最近は古村比呂さんが子宮頸がんの闘病記を公表されています)
Q:「9価型ワクチン」が接種できる医療機関はあるの?
9価型子宮頸がんワクチンを提供しているクリニックはすでにあります。 世界では9価ワクチンが主流であり、米国では26歳以下の女性・21歳以下の男性に推奨されています。海外では、男性も子宮頸がんワクチンを接種するのです。日本は、意識もまだまだ本当に遅れています。
対応型:
・ガーダシル4価ワクチン(6型,11型、16型、18型)
・ガーダシル9価ワクチン(6型・11型・16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型)
9価ワクチンは子宮頸がんを約90%以上予防すると言われています。
9価ワクチンが受けられるクリニックリストは一般社団法人予防医療普及協会のHPにまとめられていますので参照されてください。
子宮頸がんは、〝未然に防ぐことができるがん〟
子宮頸がんワクチンを接種するか否かは個人の自由です。
「私は、こうしよう」という意思で、選択を考えてほしいと願います。
どんなワクチンでも副作用が起きるケースが0とはいいきれませんが、だからこそ、それらを理解した上で「推奨しない」とするのではなく「選択できる」ことが大事なのではないかと私は思います。
一般的にワクチン接種の推奨年齢は11、12歳の小学生とされていますが、
初性交渉を経験するタイミングは実際は人それぞれです。
子宮頸がん予防の問題は、大人が子供に、性をどのように伝えるかも重要なように思います。
まだ何もわからない小学生にいきなりワクチンのことだけ伝えるのは違和感があります。「〜だから必要なんだよ」と伝えることが何より大事なのではないでしょうか。
そして、これらは子宮頸がんのことに限ったことではなく、安易な性交渉による性感染症、望まない妊娠、未来の不妊についても同様ではないでしょうか。大変デリケートな問題ですが、「知っておくべき知識」を若い世代にいかにわかりやすく啓蒙するのかは今後、皆さんとともに考えたい課題です。
私がこれまでに出会った不妊症女性の中には、性感染症からの「卵管不妊」の方が意外にも多くいらっしゃいました。
不妊と感染症は全くの別物のように捉えられがちですが、根本として大切なことがたくさんあるのではないかと私は感じています。
定期的な婦人科受診の意識が低い人ほど、HPV、クラミジア、尖圭コンジローマなどの性感染症を複数併発していたり、自身の体に無関心な方が多くいらっしゃったからです。
また、あまり知られていない情報ですが、精子へのHPV感染はIVF(体外受精)成績との関連も指摘されています。
(参照:Evaluation of human papilloma virus in semen as a risk factor for low sperm quality and poor in vitro fertilization outcomes: a systematic review and meta-analysis)
子宮頸がんの問題は女性だけに関係があると思われがちですが、性交渉でウイルスは感染するため、男性にも啓発の機会が広がってほしいです。
新型コロナウイルスの感染予防にマスクや手洗いをするのと同様、性交渉で移る感染症に関しても予防意識改革を。
そして、定期的な検診、「かかりつけ医」への受診につなげていくことが大切だと痛感します。
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