不調和なこころとからだの一致を目指して☯
この世に存在する万物のもの、それら全てにおいて陰と陽に分けることが出来ます(陰中の陽や陽中の陰という言葉も存在します)。
月と太陽が存在するように、影と光、地と天、女と男、その他にもあらゆる場面において当てはめることが可能です。
これら万物の法則(陰陽論☯)をもとに性ホルモンと呼ばれる女性ホルモンと男性ホルモンの働きを比較した上でどのように向き合えば、アスリートのパフォーマンス向上へ繋げることが出来るのかに着目しました。
また、アスリートに限らず、日々の心と体の状態を安定させる為のヒントになるのではないでしょうか。
自身の実体験や克服したことを交えながら、東洋西洋の両視点から読み解き、光の道へと導きます。
女性ホルモン(卵巣ホルモン)とは?
・女性ホルモンには卵胞ホルモンと黄体ホルモンがある
※卵胞ホルモンとはエストロゲン、黄体ホルモンとはプロゲステロンと呼ばれていますが、厳密にはエストロゲンは総称であり、プロゲステロンは単一の化学物質と、異なる分類段階の用語を並列しているため、適切な用語ではありませんが、一般的に使用されることが多い為にこちらでは使用させていただきます。
エストロゲン(卵胞ホルモン)は3種類存在し、卵胞の発育とともに産生されます。エストロゲンにより、子宮内膜が増殖、肥厚することで受精卵の為にベッドをつくります。エストロゲンが増える増殖期と呼ばれるこの時期は月経後でもあり、比較的アクティブに動ける時期であります。
ただ、経血量が多いと一時的な血虚(体内の血の不足)の状態になり、中々体調が戻って来ないということも日々の臨床を続けていく中で何度も診る機会があり、注意深く診てきました。
その他、HDL(善玉)コレステロールの増加、LDL(悪玉)コレステロールの低下や骨量の維持(骨粗鬆症・疲労骨折に関与)、コラーゲンの合成促進にも働きかけます。閉経期前後の更年期障害においてもこのエストロゲンの分泌状態は大変重要になります。
のぼせやほてり、倦怠感、抑うつ感、イライラ、不眠などのいわゆる上実下虚の症状で過去の母も大変辛い想いをしている姿を今でも鮮明に覚えています。
プロゲステロン(黄体ホルモン)は子宮内膜を着床に適した状態にします。
エストロゲンがつくったベッドにふかふかの布団を敷くようなイメージです。排卵した卵胞は黄体となり、プロゲステロンとエストロゲンを分泌します(主にプロゲステロン)。
分泌期(黄体期)にあたる時期はプロゲステロンが増加し、基礎体温が上昇します。また、食欲が増しやすく、むくみも出やすい為に体重の増加に繋がりやすい時期でもあります。
パフォーマンス面においても体重に大きな変動が無くても、身体の重だるさや眠気を強く感じる選手も少なくありません。
特に日頃から胃腸の弱りや消化器系に不調を感じている方は思い返してみてください。
女性アスリートの三主徴の一つである運動性無月経については以前の投稿をお読みいただけると幸いです。
男性ホルモン(精巣ホルモン)とは?
・精巣から分泌される主要なアンドロゲン(男性ホルモン)とはテストステロンのこと
テストステロンは二次性徴を促進し、体型や骨格を男性的にします。
分泌の低下が起こると筋力低下だけでなく、抑うつ、無気力などの心理症状を引き起こします。男性ホルモンと呼ばれていますが、女性も一定の量は分泌されています。
以前、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を発症した女子大学生アスリート(陸上競技長距離)を診る機会がありました。PCOSとは卵巣に卵胞(卵子の入った袋)が多数できますが、排卵が起こりにくい状態です。生殖年齢の女性の約8%に見られ、症状としては主に排卵障害、無月経などの月経異常、血液検査ではLH(黄体形成ホルモン)高値、テストステロン高値などの特徴があります。
テストステロンが高値であるとトレーニングで筋肥大しやすく、この点だけ注目するとアスリートにとって有利に見えますが、基礎代謝も上がる為エネルギー不足になりやすく、注意が必要です。
テストステロンとは陽の働きを持ち、筋を主る肝に作用することから外向きへ、エストロゲンとは陰の働きを持ち、骨を主る腎または子宮に作用することから内向きへ働きかけることがわかります。
アスリートである限り、常にライバルは存在し、勝負に勝つ為には身体も心も外向きにベクトルが向くことはこれも正常な働きと言えます。
女性というのは陰に属し、陰は内向きで静の性質を持つように、本来できるだけ気血を消費するようなことを避けて温存しておくというのが、女性の生活の仕方です。ですので、筋肉を鍛えれば鍛えるほど本来の女性の性質とはかけ離れた状態になる為、女性アスリートにとってパフォーマンス向上の為に日々の厳しいトレーニングに耐える心身状態と日常的に求められる健康な心身状態を同時に求めることは理論的には無茶な話なのです。
性質とは真逆にベクトルを向ける女性アスリートはこのあたりのバランスが大変難しいと感じていたこともありましたが、それは男性アスリートにおいても実は同じであり、男性ホルモンより内向きの女性ホルモンの比重が高くなると、外側の機能に異常が出る女性アスリートのように内側の心の異常を訴える男性アスリートの増加傾向にあるのは心と身体の向き合い方を無視して来た結果であり、まさしく過去からの代償です。
性腺刺激ホルモンの作用と分泌調整
・性腺刺激ホルモンには黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)がある
性腺刺激ホルモンは性腺(卵巣・精巣)に作用して、女性では卵胞の発育、排卵、黄体形成、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の産生を刺激します。男性では、精巣の発育、精子形成、男性ホルモン(テストステロン)の産生を促進します。
性腺刺激ホルモンには、黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)があります。これらは分泌過剰になると思春期の早期発現(小児)や骨端線早期閉鎖(小児)などの早熟症が見られ、分泌低下になると女性においては無月経や不妊、性器・乳房の萎縮、男性においては男性不妊、性欲低下、精巣萎縮などの下垂体前葉機能低下症が起こります。
特に現代は早熟傾向にあり、これらは人工的な甘味の大量摂取、欧米食傾向によるものが大きな原因です。器である身体は大きくなるけれど、心の成長がともなっていない、情報化社会の影響により脳の処理が追いついていない現状に苦しんでいる学生達で溢れていることを日々、痛切に感じています。
女らしさ、男らしさとは?
どちらの性質もバランスよく備え、中庸を目指すことは本来持つ女と男、それぞれの持つ正反対の性質が落ちてしまうということです。
現代はこのジェンダーの境界が曖昧になりつつありますが、まだまだ理解されがたく、自身の心と身体(陰と陽)の不一致による偏見や差別に苦しむ方も少なくありません。
育って来た環境による影響は大きく、先天性のものにおいては胎児記憶、受精する前の父と母の心身の状態(いわゆる遺伝子・DNA)がやはり大きく影響するのだとなると、いかに自分の心身の状態が未来の子供達に受け継がれるのか、責任重大です。
“性”というものはアイデンティティに深く関わります。これは本当にデリケートな問題です。生みの親であっても全てを受け入れてもらえるとは限りません。
性と向き合うとは命と向き合うことなのだということをこれまでの自身の心や身体の変化を通じて今、ようやく少し理解し、受け入れられるようになりました。
女だから、男だからではなく、その人自身を丸ごと受け入れてくれる環境や相手を探す前にまずは自身が丸ごと受け入れる。
自身が自身を受け入れることから全ては始まり、それこそが陰と陽の一致、統合であり、自分らしさの確立へと繋がるのだと今はそう思っています。
まとめ
鍼灸治療とは気血を動かし、陰陽の不調和を整えるお手伝いをします。
また、辛いこと、悲しいこと、一人では立ち上がれない出来事、そんな秘めた想いを言葉ではなく、手のぬくもりで受け止め、感じられるのも鍼灸の世界に携わったからこそです。
現代は目まぐるしく時代の変化を遂げています。
陰と陽が存在するように二つの理屈が同時に成り立っており、場面に応じて価値観を切り替えることができるのです。
陰陽のバランスを取ることが日々の心と身体の安定に繋がり、身体が資本であるアスリートにとってもまたパフォーマンス向上へ繋がると考えています。
私達は日々過ごしていると良いこともあれば、悲しいこともあるように陰陽に傾きがある(陰陽消長)、感情に動きがあることは循環していることでもあります。
生きている限り、この循環を止めてはならないのです。
どの人にも精気の虚が存在するように弱点や短所を持っています。
弱さを出せるから、強さが引き立つのです。
人の流れに合わせようと無理をせず、天地自然の流れに身を任せることは循環であり、地球の動きに沿っていると自身の経験より断言できることです。
100年時代と呼ばれる時代に私達はこの地、地球へ還元できることは何か、また女性鍼灸師として他者と関われることがどれほど尊いものであるのか。
今後もこの先の未来を見据えながら、今という時間、この瞬間を大切に、
先人より受け継いだ鍼灸古典医学、伝統医学を通じて多くの方々と関われること、学び体験できることを切に願います。
*あとがき*
ホルモンの話から飛躍し過ぎたことを3年経過して今更ながら気づき、反省、書き直し訂正中です。。。闇が深過ぎました(笑)
森ノ宮校友会鍼灸室の伊藤先生、受け入れ本当にありがとうございました。
改めて、自身のものときちんと向き合う中で言えることはただ一つ。
自身の内側であるこころとからだ、いわゆる自己の国を制する者は森羅万象、全てを制することだということ。
まずは自分自身に感謝、本当にありがとう!!
そして、私をここまで導いてくれたこれまでに出逢えたすべての後輩達へ感謝を込めて。
追記
2022.12.23(金) PM12:00 新月🌑冬至翌日
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