#1 再発子宮頚がん TC治療へ、これからnoteに綴ること、自分への約束
1月10日。誕生日。
昨日までは、恐怖より好奇心の方が勝っていたけれど、いよいよとなれば、心もざわざわしてくる。
今日から、再発がんに対して、TC療法を開始。
パクリタキセル(Paclitaxel)と、カルボプラチン(Carboplatin)という2種類の抗がん剤を21日サイクルで投与する。初日に投与したら、20日お休み。これで1クール。
大規模な臨床試験の結果について、科学的根拠に基づく分析を行い、結果、その時点において利用可能なものうち、最も効果が高いとされる治療。エビデンスレベルが高く、もっとも確実とされる、いわゆるテッパンの治療が、「標準治療」だ。
去年の6月末に受けた広汎子宮全摘術も、根治を目指すテッパン治療で、大体、ここで治ってしまう人がほとんどだという。
子宮頚癌IB2期、で、2.5センチの浸潤がんだった。
手術で摘出されたワタシの子宮と卵巣と、46個のリンパ節は、病理に出されて、綺麗にスライスされた。そこで、病変部以外に、がんは無し!という太鼓判までもらっていたので、ワタシも、その、治っちゃう方に入っていると思っていた。
高度かつ丁寧な手術と、緻密な病理検査と、入院中の行き届いたケアに、心の底から感謝した。ひたすらに、頭が下がった。有り難すぎて、何度も泣いた。
退院の日、お世話になった病棟の看護師さんにお渡ししたお手紙には、「根治したようなので、もう戻ってくることはなさそうですが」と書いた。
が、戻ってきてしまった。
「再発子宮頚癌予後は悪く、5年生存率は・・・(ヒトケタ)」「故に再発を防ぐことが何より肝要」などの医師の解説を見てしまった。絶句する。
呼吸が止まったまま、再発・子宮頚がん・余命とかいう検索ワードに「ハマる」と、次々に、いかがわしい「がん患者マーケティング」に出くわす。
なるほど、、、
こうやって、ヒトは、大きな壺とか、魔法の水とかを買ってしまうのね…。
SNSをやめたのは、コロナの時。
パニックに乗じて、とんでもないデマが飛び交った。
医療、健康関連のそれはとても悪質だと思ったし、良識ある知人たちも、そういうものを容易く信じてしまうことに驚愕した。そこから距離を置くことに決めた。
科学的に効果が証明されていて、安全性が検証されている確実な医療とは広告宣伝されないので、ネットの中においてはどうしても「少数」になってしまう。
最近は、病院や医師が積極的に情報発信してくれているのが救いだと思う。
もっと増えてほしい。
でも、先ほどの5年生存率の記述でもそうだけど、どうしても、無機質で、切り口が刺々しい。
ちゃんとした医療情報と、患者N=1の、身近で生々しい情報も、もう少しアクセスしやすくなれば…。
魔法の水を買う前に、主治医が勧める標準治療を頑張ろうと思ってくれる患者さんも、一人でも、増えるかもしれない。
これから、自分が経験することも、誰かの役に立てるものになるかもしれない。
そう思ったら、勇気が湧いてくる。
東向きの病室の窓から、朝日が真っ直ぐに差し込んでくる。
膨大な水素同士の核融合エネルギーが作り出す、熱と光。
1億4,960万キロメートル隔てた空間からの照射。
熱い。
皮膚の下の血液も、温まってきた。
自然と、地球の上に生かされているイキモノとしての、感謝の気持ちが溢れてくる。
この熱と光は、今日の日も、世界の隅々まで差し込んで、地球を温める。砲撃の続く瓦礫の街や、深い泥の塹壕の中にも、届くだろうか。
絶え間なく震えている能登の里山や、町にも、届くだろうか。
頑張ろう、と、心に誓った。