#24 CCRT vol.2 day4からの招かれざる客とドーピング疑惑、それでも全ての山に登れ
どうも、週末は鬼門らしい。
世間は三連休という時に、ワタシのところには、痺れ痛み39度に届く高熱(ISK39??どんなにイタイケな地下アイドルだとしても、決して会いにいきたくないアイドルだ…)がいらっしゃり、昼夜のぶっ通しの大饗宴を催され、寸分の妥協なく、しっかり三日間ご滞在されたのであった。
おかげでこちらは、春を思わせる陽光のもと、刀折れ矢尽き、、、またもや有難い試練を味わさせていただいた。
熱や痛みの原因は、やはり、腫瘍によるものとのこと。
治療の進展に期待するほかないのだ。
シスプラチン投与の当日と、翌日は、強力な制吐剤と、デカドロンも内服(ステロイドだ!)するので、逆に調子が良いのだ。これが、ステロイドによるドーピング効果なのか…。
服用した日は、羽が生えたように軽やかに動け、気分も高揚する。顔もツヤツヤ、ハリが出る。顔が大きめで丸いのは元からだけど、さらにお月様ムードの顔になる。ムーンフェイスというものだ。
そこからの、連休落武者気分への落差は激しかった。
すっかり、母にも心配をかけてしまった。
山の本が好きだ。
特に、登山家自身が書いたもの。いのちを賭して挑戦する、やむにやまれぬ、の心奥が、軟弱なワタシには理解不能な峻厳さを湛えつつ、シンプルに吐露されている、登山家の手による本が大好きだ。
登山家のモノローグを読んだら、そのサイドストーリーを生きた人の本や、事故や遭難のノンフィクションなどにも手を伸ばす。登山家の、リスクを超えていく心理を解剖すべく、植村直己『青春を山に賭けて』から始まって、小説以外、もう、なんでも読んだ。ヤマケイ様々である(山好きしかわからないコアな小ネタです)。
女性として、2度のピオレドール(登山界のアカデミー賞と呼ばれる。国際的に認められる登山家に贈られる栄誉ある賞)を受けた、谷口けいさんの生涯を、ご友人でもある登山家の大石明弘さんがまとめられた『太陽のかけら』は良かった。
アルピニストが、山に向き合いながら、本当は、何に向き合っているのかが、わかる。
初めから強靭な魂なんてない。一歩ずつ高めて、一歩ずつ、研ぎ澄ます。
それは、マラソンやトライアスロンをやるようなアスリートでなければ、都会に生きている時には決して得られない感覚であり、経験だ。
その谷口さんとパートナーとしてヒマラヤに登った平出和也さんの、『What’s Next』もいい(本編も良いけど、特典の映像がコレまた素晴らしい)。昨年末、ティリチミール(7,708m)北壁新ルートの初登頂成功の報告会にも、歓喜して参加を申し込んだが、満員御礼で叶わずだったのが心残り。
都会では決して得られない感覚、と書いたが、その一つは、徹底的に極限まで身体を使い果たすというもので、登山家であれば、この局面での失敗は生還を危うくする。
ラインホルト•メスナー(人類で初めて8,000m峰14座を完全登頂した。単独無酸素というアルパインスタイルにこだわり新しい時代を開いた世界の第一人者)は、死というリスクがなければ、挑戦の意味はないか、まったく違うものになる、と語っていたけれど(『ビヨンドリスク 世界のクライマー17人が語る冒険の思想』ヤマケイ文庫、1996)、命懸けで、身体を使い果たすチャレンジというのは、普通に暮らしているとなかなか出来るものでもない。
その点、最も信頼できる医療チームと、がんとがっぷり四つに組んで、毎日精魂尽き果てるまで、取っ組み合いをさせていただいているワタシはある面、非常に幸福だ。
刀折れ、矢尽きても(まあ、植村直己やメスナーの話をした後では、自分の軟弱度に辟易する)明日もまだ、出来ることがある。
本日は、ベースキャンプから一気に高度を上げて、頂上アタックを狙える場所にテントが張れた気分。
赤血球を輸血してもらったのだ。
血液作りで消耗している体力を温存させようとのことと、放射線治療の効果増大も図るためとのこと。視界が明るくなった気がする。誰かが、献血で支えてくれた大事な血だ。本当に、ありがとうございます。
明日は3回目のCCRTシスプラチンだ。
早朝からのアタックに向けて、今宵はテントで眠るのだ。風の音を聴きながら。
まだまだご紹介したい本がたくさんあるのだけど、今日のところはキャンプからの生存報告にて!
ところで、古代インドでは、世界を構成するエレメントとして、日、土、水、空、風、をその5要素と考えていた。
はじめ、ワタシは、風、というところに疑問符が立ったのだが、山の本でヒマラヤにココロの旅をして合点がいった。
この5要素は、その姿かたちこそ変化させつつも、山の頂にあるものだ。
高峰に吹き荒ぶジェットストリーム、あれは、空(空気)の変形などではない。風、そのものだ。
ヒマラヤの星空、一度で良いから見てみたい。
写真は、、言わずもがなの〜
2020年。
名古屋から東京に戻る記念日のころ、車窓から。