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2021年落語協会新作落語台本に応募して。今年も夢は儚く消え……

2021年落語協会新作落語台本の最終審査に残った作品が発表になりました。


どきどきしながらページを開きましたが、

そこに私の作品の名前はなく。

せめて二次審査を通過しててほしい。

でも、そこにもなく。

どこにあるんだ私の作品。

どこにもないのでした。

残念、がっかり、しょんぼり。

20210年の今頃も、同じで内容でnoteを書いてました。

デジャブ。

いやデジャブは一度も体験したことがないことを体験したように感じることなので違う。
去年も一昨年も体験して、またかというこの感情をなんと名付ければいいのか。

しかも、きょう9月28日は一粒万倍日。
一粒の籾が何倍にも成長して大きな利益をもたらす縁起の良い日に、あなたは箸にも棒にも引っかからなかったと知らされる。

めげるけど、めげない。
来年がある!

自信満々、大賞30万円をもらう気満々できょうまで過ごしていたお気楽な私の作品をアップします。

坂上薫作「永遠の黒パン」(新作落語)

黒パン「きょうは出番あるかな?ねえ白シャツさんどう思います?」
白シャツ「朝から元気ね、黒パンちゃん」
黒パン「黒パンって。ちゃんと黒パンツって呼んでください。できれば黒ワイドパンツって正確に」
白シャツ「呼び方なんてどうでもよくない?」
黒パン「よくないです。黒パンたくさんいますから。ストレート、スキニー、チノ、デニム、カーゴ、あとタンも」
白シャツ「タン?」
黒パン「知りませんか?タン、短パンです。ご主人様は黒がメインカラーだから仲間がたくさんいるんです。仲間というかライバル?」
白シャツ「ライバルね。でも出番はご主人様の気分次第。気にしてもしょうがないよ」
黒パン「なんか余裕の発言ですね。白シャツさんは永遠の定番ですものね。ゆるぎない自信と存在感。よっ!クローゼットのマリー・アントワネット」
白シャツ「私、そんなに古株じゃないよ。ここに来たの去年だし。自信なんてないし」
黒パン「そうなんですか。もう何年もいるのかと思ってました。だってほらよく雑誌の【30代で手に入れたい永遠の定番】に必ず白シャツさん載ってるじゃないですか」
白シャツ「ああ、値段高い系の方々が載る特集ね」
黒パン「それですそれ。白シャツさんもお仲間かと。高級ブランドでずっと丁寧に着られているのかなって」
白シャツ「永遠の定番なんてあるわけないじゃない。あれは雑誌の陰謀。白シャツって同じように見えても毎年襟の開きとかシルエットが微妙に変わるの。汚れやすいからそんなに何年ももたないよ。それに白シャツの日に限ってご主人様がランチにトマトソースのパスタを食べるのなぜなの。もうはらはらしちゃう。そもそも丁寧に着るって何?汚さないためなら丁寧に着るんじゃなくて丁寧に食べるだよね」
黒パン「白シャツさん、丁寧やトマトソースに恨みあります?」
白シャツ「あるよ、ありあり。黒パンちゃんは汚れるってわからないでしょ」
黒パン「ええ、まあ」
白シャツ「どんなに丁寧に着ても白は汚れる。黒には白の気持ちはわからないよね。パンツにシャツの気持ちも」
黒パン「きょうの白シャツさん哲学的~」
白シャツ「私は駅ビル出身のそこそこブランドよ」
黒パン「そこそこブランドって。タグ見せてもらっていいですか?わ、おんなじ!道理で気が合うと思いました」
白シャツ「あら、黒パンちゃんもl'été(レテ)なの?」 
黒パン「ですです。ラテです」
白シャツ「ラテじゃなくて、レテよ」
黒パン「え、やだ、ずっとラテだと思ってました。美味しそうでいいなって」
白シャツ「フランス語で【夏】って意味らしいよ。正式にはレテなんとかって長い名前。それより黒パンちゃんはここんとこヘビロテだね」
黒パン「ラテじゃなくレテじゃなくロテ。白シャツさんうまい!へへへ、そこそこブランドだけど、流行りで新しいですからね。昨日は映画館行きました。映画館って…」
白シャツ「あ。ご主人様が来た。しーっ」
ご主人「きょうは何着ていこっかな。打合せがあるから白シャツと黒のワイドパンツかな。それともこの前買った水色のワンピ?ワンピなら【あれ、さくらさん、ワンピースなんて珍しいですね】って北村君に言われるかもーー、言われたーい、言われるよ絶対。ワンピに決定」
黒パン「ワンピースには負けますね。あの子ずるいです。女子力あるし、おしゃれしてきました感がある。なのにコーデ考えなくていいから忙しい朝は楽ちん。しかもあの子、伊勢丹出身ですよ。モデルがプロデュースしたイマドキブランド。水色で清楚。怖いものなしです。着るとテンション上がる―ってご主人様浮かれてましたもん。私たち駅ビル出身のそこそこブランドとは違いますね」
白シャツ「朝から愚痴るね。ひがまないひがまない」
黒パン「とはいっても、私たち今は前列のセンターにいますからね。後列にいるギンガムチェックのスカートさん、今年になってまだ一度も出番なしだって嘆いてました。ずいぶんしわだらけでやつれてる」
白シャツ「彼女、去年はすごく活躍してたのよ。でもご主人様の趣味がカジュアルからコンサバ・フェミニン系に変わったから」
黒パン「だからパーカーさんやGジャンさんもきれいなのに後列なんですね」
白シャツ「そう。でも前列だからって安心できないのよ。左端の花柄ちゃん、元気ないなーって思ったらメルカリ行きが決まったらしい。同期だったのにな」
黒パン「花柄ちゃん、ブラウスだからフェミニンでもいけるのに」
白シャツ「デザインが古いんだって。古着屋出身なんだから古いに決まってるじゃないね。ここに来た時はレトロでいい感じってべた褒めだったのに」
黒パン「だからか。この前の日曜日、花柄ちゃんがかごバッグと一緒に出て行ったなあと思ったら、すぐ帰ってきたんですよ。こざっぱりとしてたから、いいなって思ってたんですけど写真撮るためにアイロンかけてもらっただけなんですね」
白シャツ「前列でも左側は危険ゾーン」
黒パン「了解です。でも花柄ちゃんは写真映えするから新しい家に行けますよ。謙虚にしてるけど彼女ローラアシュレイですもの。根強いファンがいますって。女子にとって花柄は永遠の憧れ」
白シャツ「って雑誌に書いてあった?」
黒パン「いえ、ネットです」
白シャツ「永遠のあこがれなんて幻想。私たちに永遠はないの」
黒パン「そうですか?」
白シャツ「汚れる、流行りが変わる、飽きる、理由は様々だけどせいぜい3年の命」
黒パン「そんな夢のないこと言わないでくださいよ」
白シャツ「現実よ。華やかなほど命短し。私たちのようなシンプルラインはそれでも長生きできるほうだと思うよ」
黒パン「あれ?またご主人様がきた」
ご主人「やっぱりきょうはワンピやめて、白シャツと黒のワイドパンツにしよう。いかにもおしゃれしてきましたって感じになるとあざといからね」

黒パン「お疲れ様でした。きょうはずっと座ってたからしわが……って、私ポリエステルなんでしわになりにくいんです。北村君そこそこでしたね」
白シャツ「うん、そこそこの私たちに言われたくないだろうけどね」
黒パン「白シャツさんって10%シルクが入ってるからインした時気持ちいい~」
白シャツ「そ・そ・そう?」
黒パン「あれ、テレてます。それにしてもご主人様って調子いいー。【服は質の良いものを長く丁寧に着るので吟味して買ってます】って嘘ばっか。しょっちゅう衝動買いしてますよね。私が来てからもユニクロや無印のご近所ブランド続々と増えてます。吟味の意味知ってるんですかね?吟味。がん見じゃないですよ、吟味」
白シャツ「吟味はしてないけど、がん見はしてるよね。特に洗濯表示と値段」
黒パン「確かに。私手洗いOKだから選ばれたようなもんです」
白シャツ「お手入れが楽ってだいじよ。私はアイロン絶対だからご主人様が忙しいと出番が減るもの」
黒パン「ご近所ブランドは安いし手洗いできる。その上ごみ袋に行く前にパジャマになれる!永遠です」
白シャツ「それ永遠なの?私たちにはそれぞれ役割があるんだから人をうらやんでもしょうがないよ。ご主人様調子いいけど悪い人じゃない。服が好きだもの。前後2列のクローゼットがある人そうそういないよ。服好きに悪い人はいないって」
黒パン「わ、名言☆」
白シャツ「センスも悪くないし」
黒パン「よくもない?」
白シャツ「いいって。センスいいよ。これまで、えーこいつと一緒に出掛けるの?嫌だなって思ったことある?私はないよ。靴もバッグも毎回いい感じの人とだもの」
黒パン「そうですけど黒パン的にはもう少しパンチがほしいです。たまには赤い靴とかと出かけたいな」
白シャツ「パンチといえばここにシャネルのジャケットがいるの知っている?」
黒パン「えっ?シャネル風じゃなくて?シャネルっぽいでもなく?シャネル的でもなく?シャネルのようなでもなく?」
白シャツ「本物。奥の間で布のカバーの中にいるからちゃんと見たことないけど」
黒パン「喪服さんがいるところですか?」
白シャツ「そう」
黒パン「わあすごーい、見たい。きれいなんだろうな。何色なんだろう?」
白シャツ「白だって」
黒パン「白―――。上級者。いくらするんだろうな」
白シャツ「古着屋出身だから10万円位?」
黒パン「ひー、古着で10万円!」
白シャツ「シャネルブティックで買ったら100万円はするんじゃない?」
黒パン「ひひひ100万円、ひーひーひー。服ですよね?生地にダイヤとか織り込まれてませんよね?さわると病気が治ったりしませんよね? さすが永遠の名品」
白シャツ「永遠の名品なんてないって」
黒パン「シャネル様でも?」
白シャツ「シャネルでも汚れる時は汚れる」
黒パン「もう白シャツさんって心底夢がないんだから。腐っても鯛、汚れてもシャネル。シャネル様は永遠に決まってます」
白シャツ「いくら永遠でもクローゼットの奥にしまわれてるだけじゃ寂しすぎない?奥の間のシャネルより前列センターの黒パンよ」
黒パン「確かに、私たちは着られてなんぼですからね。とはいえ永遠にだいじにされてみたいなあ。お姿を一度でいいから拝見したい。できればご一緒したい」
白シャツ「黒パンはチャンスあるよね」
黒パン「可能性という意味では白シャツさんよりありますけど。私よりデニムさんがお似合いかな」
白シャツ「そうそうデニムは強いよ。誰にでも合うもん」
黒パン「人懐っこさ半端ないです。丈夫どころか破れても許されるんですよ」
白シャツ「今、デニムは永遠って思ったでしょ?」
黒パン「思いましたけど、それが何か?」
白シャツ「永遠はないんだってば。デニムは永遠でも、ご主人様が太ると途端に似合わなくなる」
黒パン「永遠でもごみ袋に行くことあるんですね。あ、ご主人様がきた」
ご主人「久しぶりだなこれ着るの。似合うかな?下はデニムか?いやそれは昔のコーデだね。今ならこっち?黒のワイドパンツ。意外としっくりくるー。さすがシャネル」
黒パン「え、うそ、私?」
白シャツ「やった!行ってらっしゃーい」

黒パン「ただいまー。超超超楽しかった。ちょっとしたパーティでした。ちょっとしたパーティ?そんなものこの世にあるのかって思ってましたけど、あるんですね」
白シャツ「シャネル様はどんなだった?」
黒パン「オーラがすごいのなんの。よく見ると所々にしみがあるんですけど、ご主人様が刺繍でうまくリメイクしていてぱっと見わからないんです。しみは勲章らしいですよ。何より裾の当たり心地が気持ちいいんです。夢みてるみたい。あの人ならどんなボトムスともうまくやっていけますね。やっぱりシャネル、さすがシャネル、参ったシャネル」
白シャツ「お・お・落ち着いて」
黒パン「でねでね、インに抜擢されたのがレテのTシャツちゃんだったんですよ」
白シャツ「わ、すごいね、うちから二人も」
黒パン「そりゃもう緊張して。でもシャネル様に肌触りいいねって言われて泣きそうに喜んでました。もういつごみ袋に行ってもいいって。何よりご主人様がきらきらしてました」
白シャツ「それは一番うれしいね」
黒パン「たまにしか出番がなくても、多少しみがあっても、堂々としてカッコよくて周りを幸せな気持ちにさせるのはスターですね。シャネル様は永遠ですー」
白シャツ「わかったわかった。永遠ってことにしておこう」
黒パン「気のせいだと思いますが私も永遠になったような気がしました」
白シャツ「うちのブランドの正式な名前知ってる?【レテサンファン】【終わらない夏】って意味なの。秋(飽き)がこないから、永遠かもしれないね」
(終わり)

読んでくださった方、ありがとうございます。

なかなかおもしろいやん。

もしかして私の作品、届いていなかったんじゃ?
そんなことはない。
小ゑん師匠のTwitter画像に作品名を発見。
24番
ちゃんと届いているし読んでもらっている。
自画自賛しているから進歩がなく、箸から棒なんだろうな。

ああ、それにしても、みんなどんな作品を書いているんだろう。
今年は236作品の応募があったそう。
審査の流れは、小ゑん師匠のTwitterによると、
全作品を6人の審査員(現役落語家)がすべて読む

各審査員が良いと思った作品を残す(各審査員10数本)

後日全て読んだ6人で考察

10数本に絞る

20人程の委員でこれを読み最終選考作品5本を決定(今ここ)

12月の発表会で実演して大賞を決定。
なんと手間のかかることをしてくれているんだろう。
ありがたい。

私も236作品読みたい。
そうしたら自分の力のほどがわかる。
図々しいにもほどがある妄想だ。

ところで、noteで知り合い、「一緒に授賞式に並びましょ!」と私を励ましてくれる脚本家の今井雅子さん。
2021年は応募が間に合わなかったけど、noteに「新作落語台本・脚本募集に間に合わなかった金次郎」という作品を投稿。
間に合わなくてもそこで終わらないのがすごい。
「禁じられた金次郎」、発想がすばらしく、会話のテンポも楽しい。
応募していたらいけてた!


誰に頼まれたわけでもなく、ただ自分が書きたいから書いて応募する。

結果がでなくも、めげることなく(いやちょっとめげる)また次を書く。

いつかきっとと夢見る私に、ワタナベアニさんのtweetが力をくれた。

このtweet、仕事での作品を意味していて、私の場合は仕事ではなく不本意な作品でもなく、70点にも満たないのだろうけど、
それでいいんだよと抱きしめてもらえた気がした。


2021年は、もうひとつ「第5回 岩井コスモ証券presents 上方落語台本大賞」にも応募しているので、まだ夢の途中です。


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