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落語を好きになってよかった。2023年心に残った高座7つ
2023年どれくらい落語を聴いただろう。
手帳を見て数えたら116公演だった(配信含む)。たくさん聴けば良いというものではないし、かなり偏った聴き方で、出演者・演目までは書いていないから、記録としての価値もない。
ただ、私が楽しんだ証だ。
落語を聴き始めた当初は演目を詳しく書いていた。
でも元々几帳面なタイプではないから面倒になり、ちょうどその時、シブラクのポッドキャストでサンキュータツオさんがこんなことを言っていた。
「詳しく書いておかなくても心に残った高座は覚えているもの」。
ほんとにその通りだ。
記憶力が怪しい私でも、
ああ、きょうこの場にいられてよかったな
と思った高座は思い出せる。
2023年、心に残った高座7つ。(日付順)
■喬太郎師匠『鬼背参り/夢枕獏作』
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前半は一人語りで話が進んでいく。
その語りのうまさに震えた。
死んでも死にきれず、鬼になってまで愛する人を待ち続けるおみっちゃん。
企画のタイトル通り、重い暗い怖い場面が続き、息をするのを忘れるくらい引き込まれた。
哀しいせつない物語だった。
終わって拍手をしたのだろうか。
しばらく席を立てず、まだ物語の中にいたかった。
でも早く1人になって喬太郎師匠を、物語をもう一度かみしめたいとも思った。
この噺に、軽いセルフレジのマクラをふる喬太郎師匠の心の階層の深さよ。
■ソーゾーシー(鯉八師匠、昇々師匠、太福先生、吉笑さん)新作ネタおろし
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本多劇場ですよ。本多劇場。
ソーゾーシーが本多劇場で公演をする、それだけでぐっとくる。
ネタおろしの緊張感と客席の期待感、本多劇場という場所の力がミックスされて、すごいパワーが生まれた。
吉笑さん→太福先生→昇々師匠→鯉八師匠、この順番が絶妙だった。
トップバッターの吉笑さんはお墓のネタで客席のわくわくをがっちり受け止め、続く太福先生は前日ここで独演会を開催していてその時の胸熱な気持ちがまだ残っている中での銭湯後継ぎ人情噺・続きありで、ツアーへの期待を高める。
その後の昇々師匠が凄かった!
動的な卓球ネタで盛り上げるだけ盛り上げた。
トリの鯉八師匠、この空気をどうするんだろう?
心配無用。天才は突き進むのみ。
あの仕草とあの声で静かに自分の世界に引き込んでいった。
あっぱれ!
本多劇場の神様が4人に微笑んでくれた。
■ 喬太郎師匠『残酷なまんじゅう怖い』
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トリで『まんじゅう怖い』?と思っていたら、後半怒涛の展開、みんな死んでいくよーー。
こんなまんじゅう怖い聴いたことない。
そして帯を解き着物を脱ぎはじめるきょんきょん。
ひゃー最高!天才!アホ!好き!!楽しいーー!
客席狂喜乱舞!
終わった後の拍手が凄かった。
拍手は正直だね。
『鬼背参り』と同じ人とは思えない振り幅。
■昇羊さん『紙入れ』
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初めて昇羊さんを聴いたのは2018年末広亭の深夜寄席だった。『そば清』のそばの食べ方が高速でめっちゃ面白く、同時になんて丁寧に落語をやる人なんだろうと思った。そのうえ目がきらきらしてて王子様のよう。
心を射抜かれた。
その昇羊さんが出場するとなれば、大阪までも応援しに行くに決まってる。
この日は生放送。
会場で見ると、わくわく感やどきどきが全然違う。
オープニング、昇羊さんが登場しただけで感動しちゃう。まるで母の気分。
『紙入れ』よかった、素晴らしかった。大舞台であれだけの長い「間」をよくぞ。
引きの芸。
とてもとても美しい高座だった。
私の中では優勝!
■ 談洲さん『あくび指南』
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繰り返しの妙。最初はなんてことない言葉が、繰り返されるうちにそれを聞くだけでおかしくなる。
以前に聴いた『むかつく』のウーロンハイのよう。
「おい」「いよ」がもうおかしくておかしくて。
このやりとりを永遠に聴いていたいと思った。
『あくび指南』ってこんな面白い噺だった?と思わせる談洲さんの力と技術。
2023年一番笑った一席。
■ 宮治師匠『メルヘンもう半分 アンパンマンの自害』
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今まで聴いた宮治師匠の高座のなかで一番感動した。
凄惨な噺にアンパンマンを登場させつつ、違和感なく物語を展開させていく。
シリアスなのに笑っちゃうし、凄みがあるのにくだらない。
相反する要素が見事に溶け合っていた。
どうやったらこんなことができるの?
宮治師匠の底力を感じた。
すごい宮治師匠。
■立川吉笑 真打トライアルvol.1~5
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![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/127303996/picture_pc_b4f4cb027fcd1bc2276da8f40b3bfaa8.jpg?width=1200)
吉笑さんの落語の面白さとともに、企画力、プロデュース力の素晴らしさをあらためて感じた。
毎回の豪華なゲストに目が行きがちだけど、パンフレットのビジュアルを毎回変え、その回のゲストに向けた文章を書き、アンケートに答えると観られるオマケの動画をつくりと周到な準備がすごい。
vol.1で(その後もだけど)、吉笑さんが高座に上がった時の大きな大きな拍手、思いだすと今でも胸がじーんとする。
何より、談笑師匠がほんとにうれしそうで、いろいろたくらんでくれて、ビビりつつも温かい気持ちになれた。
個人的に一番好きな『くじ悲喜』をトライアルで聴けて感無量。
真打昇進内定!おめでとうございます。
来年にはカッコいい真打になる!
★★★★★
2024年は、どんな方のどんな高座が待っているんだろう。
この場にいられてよかったと胸が熱くなる高座に出会えますように。
元気で落語を楽しめますように。