ZEROエンブレム-HDTV1080

ZEROから始める血盟生活 No. 21

………………。

目が覚めると見覚えがある部屋に寝かされていた。私がこの世界に来て始めに見た部屋だ。

「うっ!全身が軋むように痛い…それに、物凄く眠い……これは…ニ度寝するか……。」

「姉様、姉様。お客様が起きたと思ったら、また寝るようですよ。」

「レム、レム。私に勝ってエミリア様の護衛役に選ばれたっていうのに、お客様ったら呑気なものね。」

………zzz

「姉様、姉様。お客様が本気寝するみたいですよ。」

「レム、レム。これだけ言っても起きない何て結構図太……」

「あーーもぅ!!分かったわよ!起きればいいんでしょ!!起きれば!」

メイド姉妹の小言がうるさ過ぎて気持ちよく眠れなくなった私は、軋む体に鞭を打って無理やり起きる羽目になった。

「あら?結局起きるのね。もう少しからかってあげるつもりだったのに、面白くない方ね。」

………。

ラムのドS振りにジト目を返していると、客間のドアが勢い良く開き、スバルとエミリアが心配そうな顔をして部屋に入って来た。

「ねこ!気が付いたの?」

今にも泣きそうな顔のエミリアに、私は優しく微笑みながら、軋む体を動かして大丈夫だと強がって見せた。

「良かった。体中傷だらけで瀕死だと聞かされて、すっご〜く心配したんだから。」

「本当生きてるのが不思議なのよ。あのまま死んでいてもおかしくなかったかしら。」

真横からベアトリスの声が聞こえて私はビックリして思わず二度見してしまった。

「ベアトリス、貴方いつからそこにいたの?」

「失礼なのよ!私は最初からここに座っていたかしら。」

ベアトリスが黙って椅子に座っていると、まるで西洋人形を飾っているようにしか見えず、全然気付きもしなかったのである。
彼女が傷つき瀕死の私を治癒魔法で治してくれたと知り、お礼の言葉を口にしようとすると、皮肉を交えた言葉で断られてしまう。

「ふんっ、ベティはお前を元の世界に帰すと約束したのよ。約束を果たす前に死なれたら、後味が悪いから治療してやったまでなのよ。」

相変わらず可愛げのない幼女だな。
それでも感謝はしないとね。

「ベアトリスはそのつもりでも、私は感謝しているわ、ありが……」

ありがとう!と言おうとする間もなくスバルが幼女の顔に自分の頬を擦り付けながら、持ち上げて、次に高い高いをしてクルクルと回りだしていた。

「ベア子〜!!お前はやっぱり良い奴だな〜禁書庫の管理人なんかにしとくのは勿体無い。いっそ俺の子供にでもなるか〜?お〜よちよち♪」

「ふっ、ふざけるのも大概にするかしら〜誰がお前の子供になんかなるものですか!いい加減にしないと〜……はぁわわわ〜」

……うん、ほっとこう!もうこの事はどうでもよくなってしまった。
スバルとベアトリスが戯れている隙をついて、今度はエミリアが私に話しかけて来た。

「ねこ 本当に大丈夫なの?無理はしてないわよね?」

「うん、心配してくれてありがとう。本当にもう大丈夫だから。明後日の護衛役もちゃんとこなしてみせるよ!」

「明後日?ねこ、貴方は丸一日以上眠っていて全然起きなかったの、だから村に行くのは明日よ。」

「……え?……。」

やってしまった…。
どうやら私は、戦いの疲労と極度のダメージを負っていた為、それが回復するまで丸一日以上かかってしまったらしい。
これではスバルに監禁場所を知らせるためのヒントを見つける時間がもうあまりなくなってしまった。
くよくよ悔やんでいても仕方がない、兎に角明日までにどうにかしてヒントを見つけなくては、私はエミリアに頼んでスバルと二人で話をさせてもらう事にした。

「それで ねこ、体の方は本当に大丈夫なのか?幾らベア子に治してもらったとはいえ、あれだけの傷だ、1日やそこらで完全に回復するとは思えないんだがな。」

「確かにまだ体中軋むような痛みはあるけれど、今はそんな弱音を吐いている時じゃないでしょ。」

「だよなぁ。まぁ、本当はラムと決闘して護衛役を選ばなくてもいい方法は前回で知ってはいたんだけどな、どうしても ねこの実力を見ておきたかったんだ。 すまん、 ねこ!」

「はぁ!? 一歩間違えば死んでたかも知れないのよ!幾ら死に戻り出来るからって、酷すぎるわよ…。」

手を合わせて謝っているスバルを見て、それ以上は何も言えなくなってしまった。
確かに今思えば、昼食での彼の行動はおかしかった。
ロズワールに突っかかったり、ラムを挑発するような発言をしていたのは、全部私とラムを戦わせるためだったようだ。

「もう分かったから、それよりもスバルにいくつか質問したいんだけどいいかな?」

「お!?許してくれるのか?さすが神様、仏様、ねこまんま様ってな!いいぜ。なんでも聞いてくれ!」

「うっさい!私に神様とか言わないで、嫌なこと思い出すから!」

私はZEROの皆んなに◯◯◯の神様と、いつもいじられているので、神様という単語にはどうしても抵抗があるのだ…
ああ、皆んな今頃どうしてるのかな…。
いけない、いけない。
今はこんな事を考えている暇なんてないんだ、気を取り直してスバルからヒントを聞き出さなくては。

「おほんっ。最初の質問いくよ!え〜と、スバルの好きなものって何?」

「エミリアたん。」

「………。」

「好きな事は?」

「エミリアたんとお話しすること。」

「何か得意なことってある?」

「エミリアたんを笑顔にさせること。」

「おいっ!!」

「何だよ!本当のこと言っただけじゃねぇか。」

「……。じゃ、じゃぁ2番目に好きなものは?」

「そりゃ〜レムだな!」

殺そう!!これは殺してもいいよね?
ねぇ、ルウっちもそう思うでしょ?

ルウ(うん♪いいんじゃないかなぁ?YOU 殺しちゃいなよぉ♪)

……はっ!?今、小悪魔の囁きが聞こえたようなw
ダメダメ。私はスバルへの殺意を押し殺し、今度は工夫しながら彼への質問を続けた。

スバルは日本にいた頃、学校にもいかず家でネットゲームばかりしていたようだ、いわゆる引き篭もり状態だったという。
様々なネトゲをしており、中でも戦国FXがお気に入りで、かなりハマっていたらしい。
それが切っ掛けで、歴史に興味を持ち、殆どの戦国武将を網羅していた。
一番好きな武将は豊臣秀吉なのだとか、奇抜な発想で天下統一まで成し遂げた采配は、今の彼に似た物を感じる。

次に印象的だったのが、筋トレを毎日のようにしていたらしい、ニートだったためか、時間は余るほどある。
それでも、こちらの手練れには歯が立たないようだが。まぁ異世界なのだから仕方がないと言えばそれまでだが。

ああ、あと裁縫が得意とも言っていたな、今着ている服のサイズ調整も自分でしたとか、以外に器用な面も持ち合わせているようだ。
今度私の服も作ってもらえるよう頼んでみるか。

これらの情報で使えるものと言ったら、やはり歴史に関する事柄だろうな。
あとは監禁場所の都合によって、どのような方法で居場所を伝えるかが変わってくるから、今考えても仕方がない。

あと私に出来ることは、明日までに体をゆっくり休めて万全の体勢を整えることぐらいだろう。
その晩、私は皆んなより先に就寝することにした。
早くZEROの皆んなが居る世界に帰りたい。
そんな事を考えているうちに、私はいつしか深い眠りについていた。

らんちゃん♪
@rantyann_0627
https://twitter.com/rantyann_0627


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