Anyflowの創業からM&Aまでの話
はじめに
Anyflow株式会社代表取締役CEOの坂本です。
この度、Anyflow株式会社はアスエネ株式会社に全ての株式を譲渡し、アスエネグループに参画することとなりました。
Anyflowがより多くの「人の時間を創る」ため、事業成長のスピードをこれまで以上に加速させるための意思決定です。
まず、Anyflowのサービスをご利用いただいているお客様、従業員、役員の皆様、そして知名度も信用もプロダクトもなかった時から支援いただいたエンジェル投資家の堀井さん、けんすうさん、赤坂さん、そしてVCの皆様、Anyflowに関わっていただいたすべてのステークホルダーの皆様に改めて感謝申し上げます。
この記事では、Anyflowのこれまでの話、そしてこの意思決定に至った背景、これからのAnyflowの挑戦についてお話しできればと思います!
なお、今回のM&A後も引き続き坂本はAnyflowで全力投球します!
また、本記事にあわせてCFOの松田もnoteを公開しているので、ぜひ合わせてご覧ください 👇
創業後、何もかもうまくいかなかった1年半
Anyflow株式会社は、2017年4月に創業した会社(設立は2016年)で、当時はBtoCのサービスを開発しているスタートアップでした。
当時23~24歳のまだ学生に毛が生えたような、社会経験もほぼ無い、営業もしたことがない、請求書の作り方もSalesforceさえも知らないエンジニアが3人集まった会社でした。
👆 当時はこういうのを作ってました
受託開発を少しだけやりながら、家賃と最低限の食費だけが賄える給与を支払い、共同創業者の家をオフィスにしながら福利厚生費としてスーパーで食材を買い、自炊して週6で働く。
THE若手スタートアップでした。
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ピボットを高速で繰り返しながら、日々作るプロダクトや課題を探索していく。
エンジェルから投資していただいた資金を切り崩しながら、会社の銀行口座の残高が日々減っていくだけの期間を過ごし、なんとかして成功するんだ、という気持ちだけでコードをひたすらに書く。
ポールグレアムの言っている、食事、睡眠、顧客に合うこと以外はコードを書け、みたいなものを体現していました。
投資をしていたAnyflowさんがアスエネさんに買収され、子会社になりました。すごい。
— けんすう (@kensuu) December 10, 2024
坂本さんから投資をお願いされた時には
「これから東京一極集中はますます進む。若者にとっては、東京にしかチャンスがないのに、家賃は上がり続けて住めない、ということが起こる。… https://t.co/nNiJye1fOt
👆 けんすうさんにもらったアイデアで、ルームメイトのマッチングサービスとかも作ってましたね..
Twitterでスタートアップの資金調達ニュースやIPOの速報、M&Aのプレスリリースなどを見て、悔しい気持ちを押し殺しながら自分たちにもできるはずだと鼓舞して。
ただそれだけの毎日でした。
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しかし、いいプロダクトを作っているはずなのに成果が全く出ない。
そのため、下手にピボット癖がついてしまい、このプロダクトでうまくいかなくても、次のプロダクトが成功できるはずだと信じながらプロダクトを乱発していました。
そんな中、2018年頃にSaaSが台頭し始めました。
会社を存続させるため、自分たちのプロダクトだけで全員が食っていくために必死で、不確実性の高いBtoCへのこだわりは捨てました。
BtoBのSaaSであれば、導入することで売り上げが上がる、もしくは導入することでコストが下がるという経済合理性さえ満たせればビジネスとして成立するはずだと考えました。
BtoBとはいえどBtoCで培ってきたUIやUXの知見は無駄にならないはずだ、という思いから意を決してBtoBにピボットすることを決めました。
Anyflowの誕生
Anyflowは実のところ最初はiPaaSではありませんでした。
企画を構想していた2018年頃、巷ではRPAが騒がれ始めており、当時はクラウド型のRPAとして開発をしていました。
ただ、我々がアプローチしていたのはスタートアップ中心で、当時からオンプレミスのソフトウェアではなく、SaaSが導入され始めていて、UIが変更されると止まってしまうクラウド型のRPAはハマりませんでした。
そんな中、Zapierを始めとする海外のiPaaSを使い始める企業が少しづつ増えていたタイミングで、日本国内のSaaSに接続でき、カスタマーサクセスも日本語で受けられるというポジションに商機を感じました。
そして、BtoCからBtoBにピボットしたことで、今まで挑戦していなかったピッチコンテストに出ることでプレゼンスやモメンタムが作れるだろうと思い、IVS、Incubate Camp、B Dash Campに連続して出場。
IVSではファイナリストに、Incubate CampとB Dash Campでは両方で優勝させていただき、これまでに累計で約3.4億円の資金調達に成功しました。
喉から手が出るほど欲しかったPMF
しかし、結論から言えば初代のAnyflowは強固なPMFを掴むことは出来ませんでした。データ連携自体のニーズは存在するのですが、APIを公開していないSaaSも多く少しタイミングが早すぎたのかもしれません。
そして運悪く、資金調達に成功した直後にコロナが到来。
当時の信用力の無さから、一年分の賃料を先払いした六本木のオフィスだけが残りました。
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25人入れるオフィスには数人しか出社せず、目の前には贅沢なスペースが広がっていました。
加えて残りのランウェイはあと1年と少し。
PMFできていないプロダクトと、身の丈以上の有り余ったオフィス。
やっと成功へのチケットが掴めたと思った矢先に「またピボットしないといけないのかもしれない。なにも成長できていない…」と強く感じたのを覚えています。
Anyflow Embedの立ち上げ
資金調達してから約1年後の2021年、何かを変えないといけないことだけは分かっていました。
ランウェイを伸ばすためにまずは支出を絞るべく、六本木のオフィスを引き払い、使っていないSaaSを解約し、人件費も削減しました。
自分もこの時数ヶ月の間、オフィスに住みながら働いていました。
そんな中、顧客と対話を重ねる中で掴んだインサイトを元に立ち上げたのがAnyflow Embedでした。
Anyflow Embedは、SaaS事業者向けの組み込み型iPaaSで、内製開発で他社のSaaSと連携するよりも効率的にAPI連携ができるソリューションです。
初代Anyflowの時に失敗したのを糧に、同じ轍を踏まぬようプロダクトが完成する前からセールスを開始し、バーニングニーズを掴むことに成功。
ランウェイが限られてる中、なんとかPMFを掴むことができ、V字復活する手がかりを得ました。
👆 当時のピボットについて書いたnote
一方、立ち上げ当初から国内に存在するSaaS事業者の数が限られていることから、Anyflow Embedには市場規模の天井があることは理解していました。
そのため、Anyflow Embedで培った基盤やノウハウをもとに新規事業を再度立ち上げることを計画していました。
アスエネ社との出会い
Anyflowは財務状況も安定しており、外部から資金調達をせずとも会社経営ができる、恵まれた状態にありました。
また、Anyflowの取締役にはIPO経験者が2人在籍していたので、IPO準備に必要なことやスケジュール感、実行可否なども全て予測できていました。
そして、TAMを広げるための新規事業を仕込んでいくためには、エンタープライズの開拓が必須でした。
自社で試行錯誤しながら段階的にGTMに向けたBtoBセールスの大規模組織を作っていくのも1つの選択肢ではありましたが、どうしても時間がかかり不確実性も高いと考えていました。
そんな中、アスエネ社との出会いがありました。
アスエネ社は、非常に強いキーエンス流のセールス組織、そして非常に多くのエンタープライズのコネクションを持っておられ、累計で100億円以上の資金を調達している急成長スタートアップです。
Anyflowはエンジニアの比率が高く、プロダクト開発に強みを持つ会社です。
既に強固なBtoBの営業基盤を持つアスエネ社と一緒にGTMにコミットすれば、自社単体でやるよりも、5倍10倍というスピードでプロダクトを伸ばせると考え、今回のM&Aを決断しました。
また、Anyflowがアスエネグループにジョインすることで「ASUENE」ではCO2排出量のデータ収集のさらなる効率化が可能になります。
企業はデータ連携にかかる時間とコストを削減しながら、脱炭素経営に必要な1次データの取得精度を向上させることができると考えています。
今回の取り組みは、両社と株主の皆様や経営陣で協議し、非常にシナジーが見込めるポジティブなディールとなりました。
両社のリソースを合わせ、より急成長できることが楽しみです 🤝
もちろん、Anyflowの事業は継続し、さらなる価値創出に向けてコミットしていきます。単独だけでは時間がかかったであろうGTMを、タッグを組みながらスピーディーに進めていき、両社の成長に尽力していきます。
最後に
以上が創業からM&Aの簡単な振り返りです。
もちろんこれ以外にもたくさんストーリーがあるのですが、ここでは割愛します。
そして、AnyflowではAPIのインフラを目指し、より多くの人の時間を創出していくようなプロダクトを作る仲間を探しています。
全方位で仲間を探しているので、少しでも興味を持っていただけたのなら、ぜひ一度お話しさせてください。手前味噌ですが、非常に面白いフェーズだと思います!
また、起業家個人としては第1章から新しく第2章としてスタートラインに立ち、スタートアップのエコシステムに微力ながら還元していきたい、とも思っています。
似た状況の起業家や、エンジェル投資家を探している起業家などいれば、DMでお気軽にご連絡ください。
長くなりましたが、最後までお読みいただいてありがとうございました!
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