曼珠沙華の森をゆく【写真とお話】

黒い蝶々

黒白蝶々と待ち合わせ

黒い蝶々に誘われて

この森に迷い込んだ人々

紅く染まる雲海

向こう岸へ渡りたいの

不思議……
姿は見えなくても
あの人の気配がする

この花を私に？

いいえ
この蕾が咲くまで
待ちます

ねえ
あの人をどこかに隠しているのでしょ？

何処か教えてくれるの？

ここで待てばいいのね？

それにしても
この森はなんて美しいのだろう

生きる強さの輝きを見た次の瞬間
幻想的な紅の中に哀しみがよぎって
きゅっと胸を締めつけられる

この森が

この花が

今日という日が
美しい

向こう岸から
小舟かやって来る

ああ
夢じゃないのね？
本当に
本当にあなたなのね？

会いたかったよ
すごくすごく　会いたかった

なせそんな恐い顔をしているの？
やっと再会できたというのに

おかしい
さっきまで　あなたを連れ戻すつもりでいたのに
私
ここにずっといたいと思いはじめている

あ、黒白の蝶々　
黒い蝶々はどうしたの？
あの子はどこへ行ったの？

ハッとして振り返ると
そこにあの人の姿はなく
小舟も　川も
なくなっていた

ただ　あの人のやさしくほほ笑む気配だけが
細い煙のように漂い

曼珠沙華の森に

柔らかな光を滲ませていた

～おわり～

埼玉県日高市
巾着田
曼珠沙華の見頃は10月初めの週まで
続くそうです

小川のほとりに紫式部

最後までご覧にいただき、ありがとうございました✨️