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【パロディ】神曲(5/10)_地球の中心まで

(約3,600文字)


地獄篇 第33歌より
La bocca sollevò dal fiero pasto
quel peccator. In fondo all'inferno
io invece batterò l'ultimo tasto.

(日本語訳)
その罪人は、おぞましい食事から口を上げる。
一方、僕は地獄の底で、
最後のキーをタイプする。


僕はダンテ。
地獄の下層からメリークリスマス・イブ!

よし。キーボードも、僕の画力も、AIも、Canvaも、みんな絶好調! 仏滅☆最高!
それでは、今夜二人でみなとみらいへ出かける父さんと母さん、弟とその彼女(←今年の夏に公式の彼女ができた)、その他幸せなカップル共を呪いながら、『【パロディ】神曲 』地獄篇の最終話を書いていきましょう!

*****

僕はダンテ。
ウェルと共に、地獄の第八圏・第八の嚢でオデュッセウスの話を聞いたあと、その下層をさらに進み、地獄の大穴のへ辿り着きました。

地獄の最下層ということで、僕は半端ない火炎地獄を想像していたのですが、そこ(←と掛詞になっています)にあったのは、寒風吹きすさぶ氷の湖。
ここ、第九圏は四つの円に分けられていて、最も重い罪とされる裏切りを犯した者たちが氷漬けにされているのです。

第二の円に入ってすぐ、隣り合って氷水に浸かる二人に、僕は気がつきました。彼らは、ウゴリーノ伯爵ルッジェーリ大司教(←リンク先は英語版)です。互いに裏切り合い、激しく敵対していた彼らは、今、こうして仲良く(?)永遠の罰を受けているのでした。

よく見ると、ウゴリーノ伯爵が古敵の頭をかじっています。(イタリアのチェノーネ[大晦日の大晩餐]には、高確率でコテキーノが並びます)
なんと悪趣味な掛詞...じゃなかった、見せ物でしょう。その様子はガチでキモく、僕は、なぜこれほどまでにこの男を憎むのか、ウゴリーノに問うことを禁じ得ませんでした。
すると、その罪人はおぞましい食事から口を上げ、僕をじっと見つめて、話し始めます。
「こいつ(←ルッジェーリ)さぁ! 俺を死刑にしたんだよ! で、俺の子供と孫も殺したの! いたいけで無垢なガキだったのに! 聞いてよ! ピサを征服しようとしてたときにさぁ、俺は敵対していた都市のいくつかと、実はこっそり協定を結んでたの。でも、こいつに真相を知られて、ムーダの塔(←リンク先は英語版)に息子や孫たち共々閉じ込められちゃったんだよ! でね、ある日、誰も俺たちに食事を運んでこなくなっちゃったの。子供たちは時が経つにつれてどんどん瘦せ衰えていってさぁ...ひとり、またひとり... そのうちみんな死んじゃった。すげぇつらかったんだけど、でも、ついには空腹が勝っちゃったんだよね」

ウゴリーノの最後の一言に、ウェルが嫌悪感をあらわにしました。
「子供の亡骸を食ったのか?!」

それに対し、ウゴリーノに代わって僕が意見を述べます。
「死んでるんだし、別によくね?」

「俺はどんなに腹が減っても君の死体を食ったりしない!」

「...勝手に殺すな。あと、僕はお前の子供じゃないんだけど。でも、あえて子供の立場から言わせてもらうと、そういう状況になったら、僕としてはむしろ食ってくれたほうがいいんだけど。そうすれば、生き残るチャンスが生まれるわけだし。ひいては形勢逆転ルートも出てくるわけで...」

「じゃぁ立場が逆だったら君は俺を食うのか」

「いやw お前の胴体食ったら胸焼けしそうだし、腕とか足は硬くて歯が折れそうだから無理w」

「...ほら、やっぱり食わないんじゃないか」

「実際自分がどうするかは別として、僕は、緊急避難的状況で人が人を食っても非難はできないんじゃね? って言ってんの。"Classiciniクラッシチーニ" 本編でも、ウゴリーノが話し終わったあと、『僕はその言葉に恐れおののき、彼に背を向けると振り返ることなくその場を離れました』で締めてんじゃん。かわいそうに。せっかく話してくれたんだから、なんか言ってやればいいだろ。僕は、そこまでして生きようとする姿勢をかっこいいと思うけどね。自分には無理かもしれないけど、死ぬよりつらい状況になったとしても、万策尽きるまで絶対に諦めないのはすごいし、そういう生き方ができたらいいな、って思う」

「俺は、食糧難でコオロギを食うくらいなら餓死を選ぶけど...」

「...何の話をしてんだ。カタツムリとかカエルは食うくせに... もういいよ。この話はやめにして、先へ進もう」

...そんなわけで、僕たちは湖の中心へと向かいます。

ひどく寒いし、歩いているうちにだんだん疲れてきました。これまで長い旅をして、たくさんの恐ろしいものを見、痛ましく不穏な話を聞いてきたのだから当然です。
ウェルに、少し休みたい、と言おうとした、そのとき。湖の中心に巨大な山があることに気づきました...いや、違う... あれは山じゃなくて、悪魔だ... 僕が知る中で、最も偉大な...

魔王ルシファー
何千年も昔、彼は半端なくイケメンの天使でした。しかし、神を裏切り、楽園を追われ、永遠の深淵に幽閉されたのです。
今は、三面の顔、背中にコウモリの翼を持つ、恐ろしい姿をした彼は、六つの目から涙を流し、それぞれの口で罪人を噛みしめています。

ウェルが僕の耳に囁きました。
「あの三人は、カエサルを裏切ったブルートゥスカッシウス、そしてイエス(←明日は誕生日。おめでとう!)を裏切ったユダだ」
そして、彼は僕の肩に手を置き、決然と言います。
「行こう。気を確かに持つんだよ。君の持ち得る勇気を振り絞る必要がある。さあ、俺につかまって」

僕は言われるがまま、ウェルの首にしがみつきました。
すると、なんと彼は、巨大な悪魔の、毛に覆われた肋骨につかまって、密集した体毛と凍りついた外皮の間を通り、その体を下り始めたのです。

ウェルは僕を背負ったまま、ルシファーの太腿から膝へと降りていきます。息を切らしつつ、「しっかりつかまって!」と、たまに指示を飛ばしながら。この状況でしっかりつかまらないわけがないのですが...

そのまま降りていくと、ほどなくして、僕たちは岩穴の入り口に辿り着きました。(つまり、地球の中心に到着したということです。この先、絶対的に見ると、二人の進行方向は今までと変わらないものの、重力は地球の中心に向かっていますので、相対的に見ると、ここまで重力に従って下へ進んできたのに対し、ここからは重力に逆らって上へ向かうことになります。僕はIQが85しかないため、この部分を理解するのに膨大な時間を要しました。説明が分かりにくくてもご容赦ください)

まあ、それはともかく。
もう安心、とばかりに後ろを振り返ると、下にはルシファーの足が見えます。僕たちは地球の中心を通り、反対側の地表へ向かっているのでした! (横浜から地面に潜って地球の中心を通り、ブラジル近海から出るイメージ)

岩穴を通る途中、少し休み、地上へ繋がる秘密の小道を進んでいきます。
その道は険しく、ウェルの足はバラバラになりそうでしたが、僕の心はどんどん軽くなっていきました。もうすぐ地獄から出られるのです!
もう少し... あと、もう少し...!

そして、とうとう、夜風が顔をくすぐるのを感じました。
目に涙を浮かべつつ、深く呼吸をします。
僕たちはついに外へ出て、再び星々を仰いだのでした。


【パロディ】『神曲』第五章 地球の中心まで


☆地獄篇あとがき(年末のご挨拶風味)☆

『【パロディ】神曲』地獄篇(1~5/10)を最後までお読みいただき、ありがとうございました! (残念ながら、2025年1月から "煉獄篇" そして "天国篇" が始まります)
この記事が2024年最後の投稿となりますので(たぶん)、あとがきと称して年末のご挨拶をさせていただきたく存じます。

世の中には「今年の漢字」というものがありますが、自分の中で2024年の漢字は、「漢」でした。なぜなら、今年手に入れたものの中で一番気に入っているのが「漢詩」だからです。
そして、2025年からは、2026年の漢字を「羅」にするべく、ラテン語、そしてラテン語詩を求めて旅に出ようと思っています。

2025年、noteに投稿する記事のクオリティが上がるのか下がるのか、頻度が増えるのか減るのかは分かりませんが、今まで同様、楽しく書いたり読んだりできたらいいな、と思っています。

末筆ながら、今年(も)お世話になった皆様に、心から感謝申し上げます。
どうぞ良いお年をお迎えください。


241224


参考書籍:
Classiciniクラッシチーニ La Divina Commedia (Gisella Laterza) Edizioni EL

トップ画像:ボローニャ(イタリア/エミリア・ロマーニャ州)上空にて撮影。ダンテとウェルギリウスが地獄から出てきた所ではありません。