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アンドレアの研修旅行記_5/8(前編)

7月13日(水)

日本語訳
A「今、自然保護林にいるんだけど、とにかく、とんでもなく素晴らしいんだ!ここ電波悪いから、プレダッツォ*へ戻ったらすぐに(ここで撮った写真や動画を)全部君に送るね」

L「おぅ」

A「花をたくさん摘んでいるところなんだ」

*トレンティーノ‐アルト・アディジェ州にある町


森でお花を摘むアンドレアちゃん...というわけで。

【パロディ】赤ずきんちゃん(前編)

むかしむかし、イタリアはトレンティーノ‐アルト・アディジェ州の森の近くに、女の子とお母さんが暮らしていました。
女の子の髪は燃えるような赤毛のため、みんなから "赤ずきんちゃん" と呼ばれています。

ある日、お母さんが言いました。
「赤ずきんちゃん、新しいラップトップとスマホを持って、病気で寝ているおばあさんのお見舞いに行ってちょうだい」

赤ずきんちゃんは首を横に振ります。
「お母さん、ラップトップは去年のクリスマスに買ってやったばかりだし、スマホは再来月の誕生日に買ってあげるつもりです。いくら病気でかわいそうだからといって、特別な日でもないのに気安く物を買い与えるのはよくないですよ」

「そ、そうね。それじゃあ、お昼ご飯が入ったこの籠を持って行ってくれるかしら」

「わかりました。行ってきます」

「赤ずきんちゃん、寄り道をしてはダメよ。森には怖いオオカミがいるのだから」

赤ずきんちゃんはお母さんの目を見つめ、にっこりと微笑んで頷き、出かけていきました。

玄関を出て家の扉が閉まると、赤ずきんちゃんはひとり毒づきました。
「『寄り道をするな』だって?俺は誰にも従わない。怖いオオカミがいる?だからなんだっていうんだ」

赤ずきんちゃんはとても外面がよいのです。しかし、ひとたび他人ひとの目がなくなると、自分の意にそぐわないことは天地がひっくり返ろうとも、絶対にしないのです。

そんなわけで、赤ずきんちゃんは寄り道をしながらおばあさんの家へ向かうことにしました。

赤ずきんちゃんは赤い壁のおうちを後にします...

本当はプレダッツォの消防署

街を通り抜けて...

お前、昨日から花を採集しまくってるけど、それは取っちゃいけないやつだからな。
きれいな寄せ植え

街を出た赤ずきんちゃんは森に差し掛かりました。

森の入り口の木陰には一匹のオオカミがたたずみ、独り言を言っています。
「なんで僕がオオカミの役なんてやらなくちゃいけないんだよ...まぁ、一匹狼って言われればそうかもしれないけど。孤高の美青年っていうか。それに僕は黒髪だから、赤ずきんちゃん役をやるなら本当に赤い頭巾を被らなきゃいけなかっただろうし。このクソ暑いのに、そんなもの...お、来た来た、赤ずきんちゃんだ!」

こちらに向かってだるそうに歩いてくる赤ずきんちゃんに気付いたオオカミは、木陰から出て言いました。
「チャーオ!燃えるような赤毛がとても素敵なお嬢さん。どこへ行くの?」

赤ずきんちゃんはオオカミを鼻で笑います。
「口八丁手八丁のイタリア人を美辞麗句で釣り上げようなんて十年早いな。君はいつも褒め方がわざとらしいんだよ」

「お前、今赤ずきんちゃんだからね?ちゃんとやって」
「あ、ごめん」

赤ずきんちゃんは、咳払いをしてから言いました。
「森の向こうのおばあさんのおうちへ、お見舞いに行くの!」

「そうなんだ!それならさ、近くに花畑があるから、そこで花を摘んでいくといいよ。ロベリアっていう花が咲いてるんだけど、花言葉が最高にかっこいいの!持っていったら、おばあさん、すごく喜ぶと思うな」

「俺に指図するな」

「えっ?」

「俺はおばあさんの好みを熟知しているつもりだ。俺より彼女のことを知っているやつはこの世にはいない。君が助言できることなど何もない。失せろ」

いつもは穏やかな赤ずきんちゃんですが、キレると態度が豹変するのです。赤ずきんちゃんは尻込みするオオカミに向かって続けました。
「お母さんが言っていた、人間を食べてしまう "怖いオオカミ" というのは君のことだな?」

「えっ?変な枕詞つけないで...ボク わるいスライムじゃないよ。人間を食べたりなんかしない...」

「黙れ。二度と人間に関わるな。そして森の中で大人しく生涯を終えろ。さもなくば君の住処を仲間もろともドローンで空爆するからな」

「ごめんなさい...わかりました...」

こうして、赤ずきんちゃんはオオカミに別れを告げ、森の中へ入っていきました。

(後編)へ続く