現代思想の創り方
フランス現代思想の面々がどのように理論を組み立てているのか、いわば「フランス現代思想の創り方」について、あえて図式的に考えてみます。
これは、哲学者の千葉雅也による仮説のなのですが、フランス現代思想がつくられるとき、三つあるいは四つの原則が立てられるそうです。
それは、①他者性の原則、②超越論性の原則、③極端化の原則、④反常識の原則、です。四つ目はやや付け足し的かもしれません。
これらを順を追って説明していきます。
①他者性の原則
基本的に現代思想において新しい仕事が登場するときは、まずその時点で前提となっている前の時代の思想、先行する大きな理論あるいはシステムにおいて何らかの他者性が排除されている、取りこぼされている、ということを発見するのです。
これまでの前提から排除されている何かXがある。品の無い言い方になってしまいますが、「他者探し」をするのです。
②超越論性の原則
広い意味で「超越論的」と言えるような議論のレベルを想定する。
それは、「根本的な前提のレベル」くらいに思ってください。
何かある事柄を成り立たせている前提をシステマティックに想定するとき、それを超越論的と呼ぶのです。
現代思想では、先行する理論に対してさらに根本的に掘り下げた超越論的なものを提示する、というかたちで新しい議論を立てるのですが、その掘り下げは、第一の「他者性の原則」によってなされます。
先行する理論では、ある他者性Xが排除されている、故に、他者性Xを排除しないようなより根本的な超越論的なレベル =前提を提示する、
というふうに新たな理論をつくります。
③極端化の原則
これは特にフランス的特徴と言えますが、現代思想ではしばしば、新たな主張を極端なまでに推し進めます、主張の核は、排除されていた他者に向き合うことですが、それを非常に極端なかたちで提示する。
Xが極端化した状態として新たな超越論的レベルを設定するのです。
④反常識の原則
そのようにある種の他者性を極端化することで、常識的な世界観とは相反するような、いささか受け入れ難い帰結が出てくる。しかし、それことが実は常識の世界の背後にある、というかむしろ常識の世界はその反常識によって支えられているのだ、反常識的なものが超越論的な前提としてあるのだ、という転倒に至ります。
四原則の連携
先行する議論は、安定的なものとして構造 S1 を示しているが、そこからは他者性Xが排除されている。まずそのことに気づく。
そこから、S1 は実は根本的な構造ではない、という問題提起へと向かう。S1 は根本的でなかったからXを排除せざるをえなかったのである。そこでS1 を条件づける構造S2 を考える。S2 によってようやくXが肯定される。
S1にとってXは従属的、付随的だった。だが今や、Xが極端化され、Xこそが原理となるようなS2 を考え、それがS1 を条件づけると考えるのである。S2 を定式化するために、慣例を破って新たな概念を作ることもある。
S2 を前面に押し出すと、常識と齟齬をきたすような帰結を生む。