とりあえず、大人でしょうか?
子とランチに出かける。
はじめての中間考査を経験し、学校生活にも慣れてきているようだ。
話していると、たまに大人びたことを言ったりもする。
つい、小学生にするように細かいことを聞き出そうとすると、
「学校からの手紙でも、自律のために根掘り葉掘り聞かないって、書いてあったでしょ」
などと言ってくる。
なまいきだ。
ただ、まだ、大人ぶるのが完全に板についていないところもある。
先日、出かけた時。
後部座席に並んで座っていると、
もうすぐ目的地に着くあたりで、目を閉じて肩に寄りかかってきた。
「あれ? 寝てるの? まだ子どもだな〜」
ミラー越しに後ろを見た夫が、声をかけてくる。
赤ちゃんの頃、子は車に乗ると、眠そうにしているくせになかなか寝つかず、目的地に着く10分前になるとスヤスヤ寝る……ということを繰り返していた。
当時はすぐに起こすのがかわいそうで、夫とふたり、車の中で子が目を覚ますのを待つのがルーティンだった。
子自身もこのエピソードを気に入っているようで、
「赤ちゃんの頃、車の中で待っていてくれたんだよね?」
と、時々、確認してくるのだが……
(この寝息……
このまぶた……)
肩に寄りかかっている子に、そっと囁く。
「おい、タヌキ。
タヌキ!
おい、ポンポコ!」
「ふっ……
ふふふっ」
そうなのだ。
ある時から子は、赤ちゃんの時のエピソードをマネて“狸寝入り”をするようになったのだ。
それを中学に入ってからもやるなんて……
夫はほほえましくみているが、
中学生に寄りかかられるこっちは、
重いんだよっ!
と、こんな感じのこともあるので、大人ぶりたいのか子どもでいたいのか、なんとも……といったところなのだ。
さて、お店の人からランチについてくるドリンクの希望を聞かれる。
「黒糖ミルクコーヒーで」
板についた感じで応える子。
「えっ? ココアとかじゃなくていいの?
それに、黒糖とか飲んだことあるの?」
「うん。だって、黒糖ミルクって
お父さんが飲んでるから、絶対甘いでしょ」
とりあえず、甘党の夫よ……
子は、成長していますよ。