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とりあえず、蝶・件・獏・甲虫・虎
テレビが予報する。
明日から、雨が続くらしい……
午後、大切な予定が入っている。
が……予報どおり明日から雨が続くのなら、ご挨拶に伺ってしまおう。
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山門
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先日見た出光美術館「物、ものを呼ぶ」展で「四季日待図巻」の廊下を踊りゆく笠の姉さんたちを見て以来、
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お囃子が聞こえてくる気がして、
展示室で見入ってしまったのだ。
(出光美術館パンフレットより)
江戸の絵師・英一蝶が気になってしかたがない。
もちろん、現在開催されているサントリー美術館「英一蝶 没後300年記念 風流才子、浮世を写す」にも行きたい。
いつもなら、調べるのはそこそこに、さっさと出かけるタイプ(そもそも美術に詳しいわけでないわたしが、付け焼き刃の知識を入れても知識のままにしか見られない。先入観を持たず、素人の楽しみとして心のままに見るくらいしかできない)なのだが、こと一蝶に関しては、もう少しきちんと人となりを知ってから見に行きたいと思ってしまった。
関連本なども読んでいるのだが、元来の「すぐ見たい・知りたい」が、今回は「ナマっぽい空気に触れて知りたい」に姿を変えてしまい、この強行スケジュールとなった。
一蝶が晩年を過ごした宜雲寺(ぎうんじ。宜の字はうかんむりの点なし)とも迷ったが、今回は非公開ながらも「釈迦如来図」がある承教寺にした。都の指定旧跡になって立て看板もあるから、近くでご挨拶できるかとも思っていたのだが……
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青々とした芝生に踏み入れることも、
車避け(?)を超えることも抵抗を感じる。
フェスで最前列にいるはずなのに、会場の作り的になんか遠い…… 体温を感じにくいっ!!
みたいな、伝わりづらい例えをしたくなるやつだ。
うぅ、でも諦め難い。側面からもう少し近づけないだろうか?
一度門を出て回り込む。
そして回り込んで
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うわぁ、アーティストの楽屋裏オフショットならぬ、墓石裏ショットになってしまった。
苔むす姿は素敵だが、大変、失礼いたしました。
大人しく、仁王門に戻り、遠目からご挨拶した。
しかーし、ただ、裏ショットを撮るためだけにはるばる慣れない土地にやって来たのではない。
こちらのお寺には、変わった狛犬がいらっしゃるのだ。
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“件”は顔は人間、体は牛の妖怪だ。凶事を予言することから恐れられる。転じて魔除けになっているのだろうか??
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うーん! 見たことがない! 面白い!
けれど、こんなに貴重そうな存在なのに、いわれなどが見当たらない。
なんで妖怪? なんで件?
気になってしょうがない。
他にも、承教寺には気になるステキがたくさんあり、
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(このあたりは、駐車場側から撮影)
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見ればみるほど魅力あるナゾばかり……
気になる……
一蝶は一度わきに置いて、承教寺が気になりまくる!!
途中に港区立高輪図書館があったことを思い出し、地域資料コーナーに駆け込む。
承教寺について書かれた資料をあたってみるが……
●鐘楼・梵鐘は歴史ある貴重な品
鐘楼は18世紀初め頃の建築。吊るされた梵鐘は江戸時代中期に活躍した鋳物師・矢部豊前じょう重正の最初期の作。太平洋戦争で供出されたが、返還された。その際に書いた「芝日本榎町一丁目 承教寺」の文字が残されている。鐘楼、梵鐘ともに港区有数の古さ。
●「釈迦如来画像」は一蝶仏画の基準的作例
流刑で三宅島にいたときの仏画は軽妙なタッチであったが、承教寺の仏画は細密かつ謹厳
(見たい)。
●英一蝶墓には辞世の句が添えられている
狩野派に学ぶも市井の人々を自由に描きたいと破門。画業、俳諧など多才で人気になるが、40代で島流し。三宅島でも絵を描いて江戸市中でも三宅島でも愛される。58歳でよもやの恩赦。深川に戻りさらに画業を極める。墓碑には
「まぎらはす 浮世のわざの 色どりも
ありとや月の 薄墨の空」
と刻まれている。
2020.1.31港区教育委員会
しか見つけることが出来なかった。
狛件、獏、カブトムシ瓦はなぞのまま。
うーーん、気になる。
今回は時間も30分しかなかったし、在架資料しかあたっていない。もっと何かあるかもしれない……。また別の機会に調べてみよう。
移動し、メインの予定を無事に済ませる。
まだもう少し、歩く元気があるな……
そして、知っているものに触れたい。
知らないワクワクもいいけど、見慣れたものにホッとしたい。
少し離れた駅を目指す。
見たかったのは
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右の石虎より、もふっとしている気がして
かわいい。
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善國寺の狛犬ならぬ“石虎”たちは、毘沙門天が寅の年、寅の月、寅の日、寅の刻にこの世にお出ましになったことから、本殿を守っている。江戸後期の作だそう(善國寺ホームページ参照)。
うんうん、知ってるけど、いいな。
お参りして、パンを買って帰る。
とりあえず、雨が降る前に興味があるものをたくさん見られた。
見に行ったことでまた別の興味が見つかった。
こうして、気になるは続く……
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