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とりあえず、モンスターになりかける
雨が降る前に買い物に出かける。
通り道で植栽の手入れをしている。ざきざきと刈られた枝の山から、青葛藤が見える。植栽に絡んでいたものが一緒に刈られてしまったようだ。なんだか目があってしまった気分になり、ちょきりとされていたものを一本、連れ帰ってみた。
一本といえども蔦だ。
ほぐして、一部切り落とし、飾ってみる。
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一部はリースのようにくるっと巻いてガラス皿の上に。残りは花瓶にいける。
羽を広げたい蝙蝠みたいで、思いがけずハロウィンみを感じる。
満足して、野菜ジュースをガブ飲みする。
つい最近、小さい野菜ジュースのセットをいただいたのだ。
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今、久しぶりに嬉々として飲んでいる野菜ジュース……大好きなのだが、ちょっとニガい思い出がある。
働きはじめたばかりの頃、とにかく忙しかった。やりたい仕事になんとか潜り込んだこともあって、ゴハンの時間すらおしい。一区切りつけばみんなでご飯に行くような仲のいい部署ではあったが、普段はみんな会社の前のコンビニで買ったものを食べる。
そんな中、毎日のように飲んでいたのが紙パックの野菜ジュースだ。甘いものからガチでトマトだけのものまでバリエーションも豊富なので、飽きもせず、なんなら昼も夜も飲んでいた。来る日も来る日も……。
この会社は、ちょうど10月、11月あたりに健康診断があった。
検査に行くとお医者さんの問診がある。「血圧低いけど、日常生活には困っていない?」など、質問をうける。大きな病気はなさそうだ。今日の昼はどの野菜ジュースを飲もうかなとぼんやり考えはじめたら……
「あなた、ビタミン剤とか
いっぱい飲んでる?」
突然、顔をじっと見るおじいちゃん先生。
「えっ? ビタミン剤は飲んでないです。
……あ、でも、野菜ジュースは飲んでます」
「野菜ジュースか!
いやいや〜
あなた、ビタミン摂りすぎ」
怒っている感じではないが、強めに主張してくるおじいちゃん先生。ビタミンは摂りすぎても体外に排出されたような気がするが……
「ビタミンって摂りすぎると
なんかダメなんですか?」
質問してみる。
「いやぁ、大きな支障はないけど……
あなた、肌が黄色いよ〜
このままだと、あなた、
ヒヨコのおばけ
みたいになっちゃうよ!」
ヒヨコ🐥のおばけっ?!
ってか、そんなに黄色かったのか? わたし……
真っ黄色のモンスターになると脅されてまで飲み続ける根性はなかったので、その後はなるべく野菜ジュースを控えるようにしているのだ。
と、ここまで書いて来てもう一つ、お医者さんに注意されたことを思い出した。
幼稚園くらいのころ、
「肌が黄色いよっ!」
と、同じように言われたことがあった。
冬場のことだったので、すぐに
「◯◯ちゃん、みかん食べ過ぎですっ!」
と連絡帳に書かれてしまった。
たしかに、あの頃は毎食後、みかんを2、3個当然の如く食べていた……
とりあえず、そうなると……
もうずっと昔から、わたしは黄色かったのだ。野菜ジュースとか関係なく……
ハロウィンも近いし、いっそ、ヒヨコのおばけになってしまおうかな……
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