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誇りとJ‘ADOREの香り

最近、CMでリアーナがクリスチャンディオールのJ‘ADOREという香水のミューズとして出演しているのを見ました。
J‘ADOREのミューズらしく、ゴールドを身にまとい堂々と歩くその佇まいに見ているこちらが息を飲みます。

以前のミューズのシャーリーズセロンもとても素敵でしたが、リアーナも時代を代表する女神としてはぴったりだと思われます。
「あなたの夢は、あなたが叶える」というキャッチコピーに、この香水をまとう者は自分自身で生きる強さ、たくましさも美の一つの側面であるということメッセージが込められていると感じます。

この香水には、イランイランエッセンスやダスクマローズ、ジャスミンが含まれていて、気品と麗しさがあり、それでいてセンシュアルでミステリアスという魅力的な香りです。
これは大人の香りだなと思ったのが第一印象で、若い頃には自分には似合わない、もう少しこれに見合うような自信を身に着けてからだなぁと思ったものでした。
香水の中には、そういう「今じゃない」と思うものがあります。
それをつけても、自分がまだまだなら、なんだか香水だけが主張してしまうようなアンバランスさを感じてしまうのです。

背伸びをしたいという気持ちを手助けしてくれるのも、またフレグランスの役割だと考えます。
自分に自信があるからではなく、自分に自信がなくても、その理想の自分への道しるべにしたい、そのサポートをして欲しいそんな時に香りの力を使って自分を鼓舞するということもあります。

第一印象の時からある程度経ち、程よい年齢になったかしらと、ようやく憧れでもあるJ‘ADOREの香りを手にしました。
とても嬉しかったです。
やはりそれをつけると華やかな気持ちになりますし、何より自分が機嫌よくいられます。
そして、朝、出かける前に気合が入ります。笑
背筋が伸びる感覚です。

人間としての強さというのはどういうものか。
ヴェルサイユ宮殿を闊歩するリアーナを思い返します。
彼女の圧倒的な存在感。
でも威圧感では決してないところが素敵です。
自分で道を切り開いてきた彼女の人生経験がそのまま空気として出てきていて、それがJ‘ADOREのイメージと掛け合わさってそこに他にはない彼女オリジナルの優雅さが表れています。
本当の強さとは、自分への誇りから生まれ、他者を威圧するのではなく、他者が勝手に圧倒されるものなのでしょう。

昔見た映画で、スティーブンソダーバーグのチェ・ゲバラの映画がありました。
主演がベニチオ・デル・トロでした。
その中に私の人生の中でもとても刺さったセリフがありました。
これが、二部作で「チェ 28歳の革命」というのと「チェ 39歳 別れの手紙」というのがあります。
多分、28歳の方だと思うのですが、チェはもともと医師を目指す青年で、貧しい人々を救いたいと願っていました。
そのような中でキューバ革命を目指すフィデル・カストロと出会い、軍医としてゲリラ軍に参加します。
そのゲリラ軍の中で統率力を発揮していくチェなのですが、部下が集落の人々に横柄な態度を取った時にこう言いました。
「命令する時は敬意をもって下せ。」

彼がカリスマと呼ばれた理由がわかるセリフでした。
人が一番大切にしていることをわかっているなと思いました。
自分を大切に扱われたら人の話を聞こうと思えるけれど、ぞんざいに扱われたら抵抗したくなるのは人の当たり前の感情です。
それまで、私は強い人は力でモノを言わせる人かと思っていましたが、本当に強い人というのは、相手のことを大切にするのだと思った瞬間でした。

それ以来、自分の立場が上になったりしたとしても、それは立場上なだけで、人間的には何も変わらないのだから、すべての人に敬意をもって接しようと思ったのでした。

自分に誇りがある人というのは、相手の誇りのことも忘れません。
なので、自然とどこか謙虚さが見えます。
成功や知名度、地位を自ら誇らず、内にとどめておくことによって、それがかえってその人の光となり輝くということかと思います。

自分がしてきたことは自分が知っていればいい、ということも強さの秘密なのかもしれません。

J‘ADOREというのはフランス語で「大好き」という意味だそうです。
自分の内側に「大好き」とささやくだけで、少し自分のことを誇れそうな気がしてきます。