えむねこ

エッセイを書いています。

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最近の記事

noteと新しい扉の先の香り

霞がかった夜の道は外灯がぼんやりと幻想的な光を灯し、ふと異世界に通ずる扉が現れるような気配を醸しています。 いつも通っている道なのに、まるで違う表情を道に見せられているような気さえしてきます。 頬と鼻先がすっかり冷えています。 異世界に通ずる扉というのは、たいていふと目の前に現れたりするものです。 「絶対押してはいけません」と書いてある前のボタンのように、「絶対に開けてはいけません」と言いたげな感じで目の前に現れ、その前でさんざんこちらを悩ませます。 ドアノブを握るべきか、

    • 誇りとJ‘ADOREの香り

      最近、CMでリアーナがクリスチャンディオールのJ‘ADOREという香水のミューズとして出演しているのを見ました。 J‘ADOREのミューズらしく、ゴールドを身にまとい堂々と歩くその佇まいに見ているこちらが息を飲みます。 以前のミューズのシャーリーズセロンもとても素敵でしたが、リアーナも時代を代表する女神としてはぴったりだと思われます。 「あなたの夢は、あなたが叶える」というキャッチコピーに、この香水をまとう者は自分自身で生きる強さ、たくましさも美の一つの側面であるということ

      • 花束と言葉の香り

        以前、TVを見ていたら、面白い話が語られていました。 仕事の話をたった一言「ヤバいですね」だけで乗り切る人がいるという話でした。 相手がマイナスな話をしたら「ヤバいっすね」と難しそうに言い、相手がプラスな話をしたら「ヤバいっすね!」と楽しそうに言うという半分冗談のようなで、ありえなくもなさそうとイメージ出来てしまう話でした。 ヤバいがこんなに広い意味で使われるようになり、どんな状況でも網羅してしまうようになるとは、言葉というのは生き物なんだなぁと思わずにはいられません。 そ

        • アイスカフェラテと存在の香り

          とても寒い日の夜は、ジャズを流したくなります。 そうすることで、心の中がほんのり温まるのを感じられるからです。 寒いのだから、本当は温かい飲み物にすればいいのでしょうが、暖房をしっかりとつけ、アイスカフェラテを用意します。 私にとっての最高の組み合わせであります。 ジャズと言っても詳しくはないので、You tubeでジャズで検索して良さそげなものを選ぶだけではありますが。笑 何にも期待しないで、ただ部屋を流れる時間を豊かにしてくれる音楽に身を任せます。 寒さで凝った肩甲骨を

          チョコミントと教育の香り

          昔に読んだ宮本映子さんのエッセイ「ミラノ 朝のバールで」にこんな一節がありました。 「確かに教師にとって、あいつは厄介な生徒だろうな。でもあんな奴、探せと言ったっていないよ」 この誰かの話したアンビバレントな言葉が宮本さんを通して、私にとても響きました。 目が覚めるというか、何か視点が180度変わるというか、すっきりとしたミントの香りが直接に凝り固まった脳をさわやかにしてくれるような感じです。 それにこの言葉には愛がたくさん詰まっている感じがします。 このセリフを言った人は「

          チョコミントと教育の香り

          ラベンダーの香り

          人は自分の受けた傷を過小評価することがあります。 大したことではないと自分に言い聞かせ、その痛みを鈍らせます。 確かにそれはそれでしのぐ方法としては、一つの良い選択なのかもしれません。 けれど、それをずっとそのままにしておくというのは、また良くない選択でもあります。 やはり、私たちは必ず適切な処置を傷にしなくてはいけないのです。 そうしないとそれは影となって自分の中で根深く育ってしまうから。 ふとした時に、自分の忘れていた傷に気が付くことがあります。 あぁ、私はこのことを無

          ラベンダーの香り

          ある瞬間の香り

          「人間の瞳は舌が発音できない言葉を話す」というクロウ族の言葉があります。 クロウ族というのは、ネイティブアメリカンの部族のうちの一つにあたります。 この言葉を知った時、なんて美しい表現なんだろうとうっとりとしたことを覚えています。 こんな表現を一生のうちに一回でも出来たとしたら、それは最高だろうし、まさに、ある瞬間のある真実をそのままそっくり言葉に閉じ込めることに成功したと言っても言い過ぎではないだろうと思いました。 何故なら、私たちはそういう「ある瞬間」というものを経験し

          ある瞬間の香り

          アップルティーの香り

          フルーツの甘くて爽やかな香りが湯気とともに上ってくると、とても幸せな気持ちになります。 先日、美容室でのカラーの待ち時間にホットのアップルティーが出てそれを飲みながら時間が過ぎるのを待っていました。 少しばかり空調が効いていたので、温かいアップルティーが喉を通っていくのと同時にホッとするのでした。 久しぶりに髪の毛を短くして、カラーもして、と気持ちも一新されるようなスッキリとした気分になりました。 不思議ですが、美容室で髪を切ったりカラーをしたりするだけで、昨日までの自分と

          アップルティーの香り

          ジャスミンの香り

          一番好きな香りは何ですかと聞かれたら、なんと答えるだろうと思いを巡らせてみたけれど、やはりジャスミンの香りかなぁと思います。 皆さんは何が好きですか? サンダルウッド、イランイラン、ムスク、ラベンダー、ローズマリー、数え上げたらきりがないけれど、ジャスミンの爽やかさと華やかさとエキゾチックな多面性っていうのは、他にない魅力に思えます。 好きな香水やクリームなどに共通して入っているのがジャスミンだったということで、知らず知らずのうちに無意識でジャスミンの香りが入っているものば

          ジャスミンの香り

          ヴェポラップの香り

          小さい頃、風邪をひいたり、熱を出すと母親がヴェポラップを胸の上のあたりに塗ってくれました。 それを塗ると、風邪の症状でだるく重たい体が少しだけラクになるような気がしました。 浅い呼吸が、すっきりとしたメントールの香りで鼻の詰まりを緩和させ、だんだんと息がしやすい状態に変わっていきます。 あぁなんだかさっきより少しだけ気分が良くなったと、布団の中でボーっと意識の遠くで感じます。 大人になってヴェポラップを塗ることが風邪の時になくなって、はたと、まだヴェポラップはあるのかなと思

          ヴェポラップの香り

          秋の雨の夜の香り

          急に気温がぐっと下がって冷たい雨が降りました。 秋を押しのけて冬がやってきたような寒さです。 念のために持ってきていたインナーダウンが役立ちました。 仕事終わりの家に向かう私の頬は一気に温かさを失っていきます。 岡崎体育さんの歌うフラワーカンパニーズのカバー、深夜高速を聴きながら、傘を少しだけ前に角度をつけて速足で帰路を進みます。 雨足が強いせいで、どんどん足元は濡れていきます。 これだったら長靴を履いてくればよかったと後悔の中、ぐしょぐしょになったスニーカーで、しっかりと

          秋の雨の夜の香り

          忘れていた香り

          「わからない」という言葉が終わりの言葉ではなく、始まりの言葉だったことをいつの間にか忘れていました。 私たちは簡単に「わからない」と言ってそれでその場をおさめようとします。 それが答えであるかのように。 他にも、難しいですねと訳知り顔で言ってみたりして、そのままそれがそっと流れていくのを待つように。 会話でたいてい「わからない」と言われたら、それはそれが答えです、と受け取ります。 しかし、知りたいことがわからないから知りたいわけで、それは答えではないのです。 「わからないで

          忘れていた香り

          早朝の香り

          基本的にたくさん眠ることが好きなので、あまり早起きが得意な方ではないのですが、今日は仕事前に選挙に行くために早起きをしました。 まだ眠い目をこすりながら洗面所に向かい、静かなその部屋で顔を洗います。 少しずつ眠っていた細胞が起き始めますが、まだまだ完全な覚醒状態ではありません。 それでも、準備を進めていくうちに体もだんだんと動きが良くなっていきます。 ドアを開けるとピリッとした空気に包まれます。 自転車にカギをさし、小さいバッグをかごに入れてハンドルを握るとゆっくり漕ぎ始め

          早朝の香り

          パンプキンスープの香り

          心も体も疲れて気持ちが枯れてしまう時、エネルギー補給と同時に優しい気持ちになりたいと思います。 そんな願いを叶えてくれるような気がするのが、パンプキンスープです。 一口すすれば、その甘いかぼちゃの味が口の中に広がり、ホッとして、肩の緊張がほぐれていきます。 そのかぼちゃの柔らかくて安心する香りが自分をなぐさめてくれるような気がします。 滋味深いとはこのことを指すのだろうとスプーンでゆっくり皿の中をかき混ぜるとまた香りが上がってきます。 鼻から思い切り息を吸って、頬を緩ませな

          パンプキンスープの香り

          パインスコッチの香り

          入浴剤が好きで、毎日お風呂に入る時は必ず入浴剤を入れるのですが、数か月前の夏の暑い盛りに久々にものすごく好みのタイプの香りに出会いました。 ぼんやりしていた頭にいきなり電気信号がビビビッと走ったかのような感覚が貫き、一気に目が覚めたような何か脳が開いたような強い衝撃を受けました。 私は何の香りなのかを確かめるために改めて入浴剤が入っていた袋を見ました。 それは、松の香りでした。 なんて良い香りなんだろうと呼吸に集中をしました。 爽やかで、凛としていて、シャープでいて、やる気

          パインスコッチの香り

          ハンバーグの香り

          私にとってハンバーグは学生時代からの友達と会う時にかなりの高確率で食べる青春と切っては切り離せない食べ物です。 カロリー高めの食べ物は、やっぱりカロリー使える仲間とでないと、成立しないのかもしれません。笑 中でも私が好きなのはトマトソースのハンバーグか和風のハンバーグです。がっつりとしたハンバーグとライスを食べながら、友人と近況報告をしあい、会っていなかった時間の出来事をパズルのようにはめていきます。 ふむふむとナイフでハンバーグに切り込み、口に運ぶと、ああ前回の話はこうい

          ハンバーグの香り