[読録] 大江健三郎「セヴンティーン」
十七歳の若い内面と、そこから見つめられる世界についてこの作品は徹頭徹尾描いている。「独りぼっちで不安で、柔らかい甲羅に脱ぎかえたばかりの蟹のように傷つきやすく、無力」な十七歳という時間と存在が語るのは、《右》という強い言葉によっての定型思考方式に見出される、行き場のない自意識の救済である。自分に無関心な父母と兄弟、自宅の物置小屋で自瀆する少年は、学校でも当然のように浮いている。日々が孤独と不安を育む。
そこに《右》の演説のサクラをするという仕事を受けるわけだが、《右》の