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夜になるといつも考えてしまう。この世界に横溢する図像情報が、触覚情報が、私の鼻腔から気管を通って肺へと音もなく浸潤する空気たちが、そっくりとどこかへ行ってしまって、ぱたり、と私自身が滅ぶのを。あるいは、父や母や近しい友人がやはりどこか遠くへ行ってしまって、永遠ともとれる喪失を迎えるのを。 それはもちろん想像でしかないのだけれど、いつか起こる種類の事柄だ。想像であり覚悟未満の手触りで、私はそれを知覚する。喪失のぬったりとした沼に半身をとられながら、暗い空に灯りを探す。失う