ある地名の風景
雪谷の円長寺に紅い花 yukigaya-2
もうすっかり春だというのに
雪の話で申し訳ありません(笑)
大田区の”雪谷”といい、鎌倉の”雪の下”といい
なんとも情緒あふれるきれいな地名です。
語源や由来がどうであろうと
これはこれで、地名の魅力だと思うのです。
もちろん文字のきれいな地名ばかりではありませんが
どうしても漢字の持つ意味が
その土地を印象づけてしまいます。
昨年でしたか、岡山の大学が
お寺に伝わる「人魚のミイラ」を科学的に調べた結果、
精巧な作り物だったというニュースがありました。
正体を知りたい気持ちは分かりますが、
人魚のミイラとして、
謎のままそっとしておいた方が良かった気もします。
きれいな地名も
蓋を開けたらガッカリなんてよくあることです。
こんな前置きしたら
”雪谷”もどうせ雪には無関係なんだと言っているような・・(笑)
結論から言いますと
”ゆき”とか”ゆう”という言葉は
一説に野生の楮(こうぞ)のことだといいます。
楮といえば和紙の原料ですが、
その他にも樹皮から取った繊維で糸をつくり布を織るなど、
何かと生活には有用な植物だったらしいのです。
当然その植物の生えてる場所は重要で
植物の名がそのまま地名化しても不思議ではありません。
青梅や八王子にある柚木・由木(ゆぎ)という地名も
これと同じではないかと言われています。
雪谷の”谷”は、世田谷・渋谷・四谷などと同じく
低湿地か谷戸の地形だと思うのですが
”雪谷戸”と書かれた史料もあるそうです。
今も東雪谷と南雪谷の真ん中を
世田谷の桜新町付近に水源をもつ呑川が流れています。
この川沿いに「楮の生えている谷戸」・・
そんな場所があったのではないかと思っているところです。
戦国時代には文献に現れる地名なので
もっと古い中世のどこかで
この土地が開発されるころは「ゆきがやと」なんて呼ばれていたかも。
人魚のミイラと違い
科学的な手法で答えを出すなんてムリ!
そんな地名が好きなのです。
(大田区南雪谷)