見出し画像

2022年3月 歌舞伎座 新・三国志

スーパー歌舞伎は過去一回だけ、現猿翁さんがやってらしたときに見たことがあった気がします。レーザーがビュンビュン飛んで、「すごいなぁ」というのと、「派手だなぁ」と思った印象が強く残っています。

だけども、私はとにかく勘三郎のあの熱量が好きだったので、歌舞伎として観るならコクーンとか平成中村座が好きだなぁ、ということになり、基本的には中村屋ばっかりを追いかけていくことになります。とはいえ、1年でみる芝居は多くても3〜4本。友達の中では立派な「歌舞伎好き」だけども、本当に歌舞伎ファンの方たちには足元にも及ばない、中村屋に偏った観劇歴を重ねていく訳です。

今月も実はスーパー歌舞伎は見ないで春暁特別公演、巡業公演を見に行こうと思っていました。が、コロナで中止…涙。
俳優さんたちの体調を心配しつつ、「バスケ部やめる」と言ってコロナ禍の中出かけるでもなく家でゴロゴロしている中学生男子もいるし、よし!スーパー歌舞伎なら、しかも三国志なら、息子も退屈せずに観られて、なにか観て感じるものがあるのではないか、と思い、急遽観劇を決定。三国志は一昨年映画で「新解釈・三国志」を大泉洋さん、ムロツヨシさん他のコメディで見ていたので、歴史に弱い母もなんとなくストーリーもわかるし。
中学生男子も、部活をサボってる後ろめたさがあるのか、それともやっぱり三国志だからか、久しぶりに母の「歌舞伎行くよ!」に「わかった」とついてきてくれました。

さて。新・三国志。
一言目の感想は「展開、早!」。ドンドンすすむ。もちろん退屈してる暇はない。もっと深く観たいなと思うくらい、でもそう思うのは、作り手側が観せたいのは違う場面だったということなのでしょう。

猿之助は風格があるなと思った。あの関羽の役をやり切る風格。中車はやっぱり面白い場面が強い。右近の香渓、とても綺麗だった。これを観れたのは収穫。
そして笑也の劉備…強くて脆くて、あの役は難しいだろうなぁ。息子ともそんな感想を言いあいながら。

そして、テーマになっている「夢見る力」。個人的な感想だけど、歌舞伎座だと、残念だけどそのメッセージ性は薄まってしまう気もする。歌舞伎座の芝居にメッセージ性を期待していないというか…歌舞伎座は、どちらかというと古典の中で、変わらない物語の中で、それぞれの役者の演技から感じるものを味わいに行く場所。そんな気がしている。メッセージを伝えるならやっぱり演舞場(か他の場所、中村屋贔屓としてはコクーンみたいな)で、昼夜その公演だけをやるような世界の中で、そこを極めて欲しい。歌舞伎座だと薄まってしまうのが残念。受け取り方の問題なのだけど。
芝居のメッセージは、その時その時で響くものが違うと、常々思う。理解はたいていいつだってできる。でもその舞台を観る瞬間の観る側の置かれている立場、例えば10年前、5年前、1年前とだって、日々の状況、置かれている立場が違い、その中でこの「夢見る力」というメッセージを、2022年の私がどう受け取るか。それは巡り合わせでしかない。いい悪いではないし、そういうものだと思う。明日なら明日なりの受け取り方をするかもしれない。実際に、舞台というものを見慣れていない息子は、ちゃんと受け取るものもあったと思う。私も、受け取ったものはある。
事実、この夢見る力を持っている人は、多くはない。そういう人の夢が、周りの人を惹きつける。それは間違いはない。その夢見る力をもつ劉備と、それを実現する力、周りの多くの人達を巻き込み動かす力を持つ関羽。違うタイプのリーダー像を、今の私は受け止めた。今私の環境で、「関羽だったらどう行動するだろう」「劉備はどう描いてどう言葉にするのだろう」と考えてみた。きっとこれは、この先も役に立つと思う。

ロマンス的な面も、泣けました。が、ここでは割愛。関平の語りがよかった。

舞台としての美しさもあり、完成度は高かったと思う。観られてよかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?