「この辺りの店って、すぐ潰れるんですよね。半年持たずに潰れるから、この店がいつ潰れるのか楽しみにしてるわ」ep7
開店して間もなく、まだ全く周知されておらず、お客様も少ない絶望的な夜。ひとりの女性が店に入って来て、こんな辛辣な言葉を言い放って出てゆきました。
店を始めました。
小さなころから誰かに喜んでもらう事がとっても嬉しい子で、いろいろいろな人にケーキやお菓子を焼いては「美味しいね」って言ってもらって、そのまま大人になりました。
マネージャー店長をしていた店が、オーナー都合で閉店して「飲食ってオーナーが「閉店します」って言ったら途端に無職になる・・・それでは、いつ無職になるか分からない。じゃぁ、自分の店を始めよう」そう一念発起しました。仕事を失わないために自分で仕事を作りました。
「ここに店が出来て、町が明るくなって嬉しいな」
そう思っていただけたらなぁって、そんな想いを持って始めました。不安はいっぱいありましたけど、頑張って振り払いました。
みんなが幸せになりますように・・・
色々な事があって、ようやく店はオープンに漕ぎつけました。
もともと飲食業の下積みは長いし、飲食業の事はよく分かってはいたのですが、当時はまだガラケーの時代、SNSなども無く「開店しました」というお知らせをうまく出来ずに、そこに店があるって分からないんだからお客様も少ない。本当にこの辛さというか、気が狂ってしまいそうな不安や辛さはなかなか自営業をやっている人にしか分からない「地獄の底」です。
収入は無いのに、お金は1か月何十万単位で出てゆくばかり・・・
でも、ここ(akaiito)にしか無い世界観や美味しいメニューで「幸せやな」って思って下さるお客様はきっとどこかにいる!「今日頑張って、明日辞めよう」って、涙を拭いて毎日頑張り続けました。
そんな時、お客様ゼロの夜営業中
タイトルのようにまったく存じ上げない女性の方が店の中に入って来て、酷い言葉を投げつけて、それだけで出てゆきました。
「いつ潰れるか楽しみにしてる」
と、お金を払って飲食したわけでも無いのに。
もともと不安定になっていた私の心も精神力もう粉々。辛い・苦しい・辞めたい・・・泣くしかないけれど、泣いたってどうしようもない・・・
実際誰かからのこんな言葉で立ち上がれなくなる人もいると思います。自営業ってその位厳しいです。
自分が言われたら?
「何を言われても、何をされても我慢しよう」
そんな風に考えるようになるまで、時間はかかりませんでした。どんな嫌な事を言われても笑っていよう、どんな事をされても我慢しよう・・・
もう、それしか出来ませんでした。
元々は、元気で、どちらかと言うと自由にやってきたので、もうすっかり自分らしくない姿になっていました。
「店を始めた」それだけなのに、こんなに人から悪意を向けられてしまうんだ・・というのは、絶望でしかなかったです。
そこから、自分らしさを失う12年が始まりました。
自分らしく居て、嫌な言葉を投げつけられるより、働いている時の自分をキャラ化してしまった方が、気持ちが楽なんですよね。
(接客業の方には共感していただけるかも?)
ある日、WEB飲食店評価サイトから勧誘の電話が
「あなたの店って、今うちのサイトだと7ページ目なんですよね!誰も7ページも見ないんで、広告契約してもらったら上位表示も出来ますし、18時~22時のゴールデンタイムに1位表示も出来ますよ」
「・・・別にいいです」
「小さな店の人って、そんな事よく言うんですよね。でもね、みんな店を検索して知るんです。誰も知らない店には誰も行かないし、小さな店ってすぐつぶれるんですよね・・」と、笑いながら言われました。
そっか、世の中はお金なんやな・・所詮
でも、私は、友達には恵まれていて、様子を見に来てくれたり、励ましてくれたり、相談に乗ってくれたり、本当に感謝しています。
簡単に人と仲良く出来なくないのは、こういう経験があってです。
困っていて、苦しくて、でも生きていかなきゃいけない、そんな時に、親身になってくれたり話を聞いてくれたりする人が友達で、良い時だけ近寄ってくる人は、正しくは友達とは呼ばないと思うのです。
気持ちで繋がっている友達がいてくれて、家族がいてくれたから、私は多分、今、生きれているのだと思います。
だんだん、味方になってくれるお客様が増えて来た!
「akaiitoめっちゃ美味しいやん」「私は大好き」「mumuさんも大好き」そう感じて下さるお客様も増えてきて、今となっては10年以上ずっと通って下さっている心底有難いお客様もいて下さいますし。毎週欠かさず、ずっと何年も通って下さるお客様や大好きな人がすごく増えました!
毎年毎年取材(有料の記事型広告ではなく、純然たる取材)にも来ていただいて、たくさんのメディアさんに掲載していただいて、関西では人気のカフェ雑誌SAVVYさんやRicherさん、JTBのるるぶmoreさんにも載せていただいて、奈良のガイドブックなども載せていただいて、感謝しかなくて「akaiitoが好き」そんなお客様も増えてゆきました。
小さな店を取材して下さり、見つけていただいてありがとうございます。
今年13年目。
飲食店、10年続く店は20軒に1軒だと言います。これは本当に、寄り添ってくれた家族や友達、そして「akaiito大好き」そう言って通って下さるお客様みなさまのお陰です。見つけて下さってありがとうございます。
去年の事、ある事件があって警察官が来ました。
来てくれた警察官の方が、こんな事を言ってくれました。
「あなたは、一生懸命ずっと一人で頑張ってるんです!そんな、嫌がらせに黙って従う事はないんです!警察に電話して下さい。スグに来ます。我慢しなくてもいいんですよ。そんな奴、来なくったっていいじゃないですか!!!」
警察官の言葉に、ボロボロ泣いちゃって、我慢していた涙がとめどなく。そして、もう、理不尽に対して我慢するのはやめようって思いました。
去年から「経営塾」のようなのに通う
通い始めた理由は、当店を温かく見守って下さるお客様方から「大好きな人に贈りたい」「大切な人に贈りたい」と、ご要望をいただく当店のチーズケーキをEC販売や店頭で販売する為の準備の為です。
開店した時のような辛い悲しい思いはしたくなかったので、準備をしておこうと思いました。
喜んでいただける方に、ウキウキした気持ちを一緒に贈っていただけるような、素敵な心弾む「akaiito REGALCHEESECAKE」!
経営塾では、マーケティングをはじめいろいろな勉強をしました!
でも最終的に講師の先生が言ったのは
「分析とかしなくても、mumuさんの感覚で良いのでは?mumuさんのファンの人もうたくさんいますよ。mumuさんの想いを届けるだけなんじゃないでしょうか?」
大切にずっと守っている事は、消耗されるだけではなくて「ここにお客様の人生があって、お客様の人生と共にある」そんな店であること。
ずっと、正直に真面目に取り組んできました。
今は、店の中で「美味しい」「大好き」そんなお客様の言葉が飛び交っていて、毎日有難く、すごく幸せです。ありがとうございます。
LOVEです。
「あなたは十分やってますよ!」
そんな答え合わせをしてもらえたような気がしました。
開店当時に受け続けた心の傷、その為に「自分ではダメなんだ」「変わらないと」「変わらないとこのままではダメになる」「我慢しなきゃ嫌われる」そんな強迫的な想いにずっと支配されてきて(今も、抜けれたとは言えませんが)でも、今は「あなたはあなたで十分ですよ」と、言われる事が多くて、その言葉をやっと素直に聞けるようになりました。
元々、甘えん坊で(末っ子なので)、人の後ろに隠れて覗いているようなタイプですが、もうその感じで良いんじゃないかと思うようになれました。衣川での弁慶のように、矢をいっぱい受けてまでも立ち続けなくても・・・
そう思えるまでにこの長い年月(12年・・)かかりました。。
楽しんでチーズケーキにいっぱい愛情を込めて、大好きなお客様の大切な方や、もちろんお客様の為にも世界一美味しいチーズケーキと自信をもってお届けする為には、一周回って「自分らしく」伸び伸びと仕事に取り組みたいなって思っています。
お客様にとって、人生の中の「幸せな想い出の味」でありますように。一口食べると心に幸せが広がる、そんなお客様の安全地帯であれるよう、心を込めて手作りしています。
ちいさな店の心のこもったチーズケーキの物語、これからも応援していただけるととっても嬉しいです。店にご来店いただいた事の無い方でも、noteを読んで応援していただけたら、本当に心からいっぱい嬉しいです。
長い文章にお付き合いいただきまして、ありがとうございました!
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