【W】2025学習記録①-フェデリコ二世の評伝-
2024年秋頃から、フェデリコ二世(神聖ローマ皇帝フリードリッヒ二世)の評伝を読み比べている。研究書をいきなり読むより、まずは取っ付きやすいものをと思い、下記の順で読み進めてきた。
塩野七生『皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上・下』新潮社、2013年
藤澤房俊『フリードリヒ2世 シチリア王にして神聖ローマ皇帝』平凡社、2022年
吉越英之『ルネサンスを先駆けた皇帝 シュタウフェン家のフリードリッヒ二世』慶友社、2009年
そして年が明け、1月になってからは以下を読んでいる。
エルンスト・H・カントーロヴィッチ著、小林公訳『皇帝フリードリヒ二世』中央公論新社、2011年
訳書というのは、これに限らず全般的に、日本語で元から書かれたものと比べると少々読みづらく、どうしてものろのろ読書になってしまう。かつ、労働の繁忙期が始まり、読書にあてている平日帰宅後の自分時間がなかなか取れないことで、更に読み進める速度が落ちてしまっているのが現状である。
言い訳はさておき、カントーロヴィッチはフェデリコ研究の古典中の古典。先に読んだ三冊のいずれにも言及されている。ただし、1927年の出版当初は歴史学界隈で物議を醸し、批判合戦を巻き起こした著作でもある。このあたりの事情は本書の末尾に付された訳者あとがきに詳しく載っているらしいので、最後まで読むのが楽しみである。
尚、二つ目に挙げた評伝の著者である吉越英之さんは、ご経歴によると金属関係がご専門の技術研究職?の方らしい。全然そのあたりに明るくないため、「酸化鉄からの鉄核成長について研究」「ワグナーの拡散律速理論と異なる反応律速現象」とかなんとか書かれていても何が何やらさっぱりだが、とにかく第一線で活躍されていた理系の研究者であることは間違いない。
なぜそのような方がフェデリコの本を?と疑問いっぱいで読み進めていったのだが、あとがきにその理由が書いてあった。なんでも、ブルクハルトの本を読んで興味をもち、その後いろいろなものを読み漁る中で、「あまりに現代の民族、国家、宗教に偏った視点に違和感を感じ」「ヨーロッパ人と異なる自らの視点から見ようと思い生まれたのがこの本」なのだそうだ。うーむ、それにしても本来の専門でないものを、一冊の伝記にまとめて出版できてしまうなんて、相当の熱量だと感服する。
(ちなみに吉越さんは『鷹狩りの書—鳥の本性と猛禽の馴らし』文一総合出版、2016年 も別に出版されている。これはフェデリコ二世の書いたものの訳書で、すなわち原文はラテン語。わたしもいずれ原文で読んでみたいと思っているから、そのときはまた吉越さんを参照させていただく予定。)
話を戻して、吉越さんが仰ったブルクハルトの本を、わたしも早速手に取った。
ヤーコプ・ブルクハルト著、新井靖一訳『イタリア・ルネサンスの文化』筑摩書房、2019年
日本語訳は上記以外にも、中央公論新社から出ているが、出版年が1974年と古いのと、通勤時間中にも読みたかったため、文庫である筑摩の方を選んだ。
三つ目に挙げた藤澤先生の評伝でも、本書は「近代において、フリードリヒ二世への強い関心を惹起した」と書かれていて、一体どんな感じで書かれているのかしらとわくわくページを開いた。そして、あっけに取られた。フェデリコについての言及は初っ端の数ページのみで、(わたしとしては)大した内容ではなかった。だいぶ期待していただけに、え?これだけ?というのが率直な感想だ。
2025年年始からの学習記録、以上。