京北のソーシャルデザインファームROOTSがLOGINで期待すること
(前の記事「地元民の仲井 亮文さん(仲井電気工事商会)から見た、これからの京北に必要なこと」はこちら)
フェイランさん LOGINキックオフ宣言
地域の景色はみんなでつくる
LOGINプロジェクトの全体像
LOGINへの関わり方
● 地域の景色はみんなでつくる
京北で家族と茅葺古民家に暮らすフェイランさん。今回のLOGINプロジェクトへの参画に感謝を述べた後、今の気持ちを話してくれた。
「地域のこれほど大きな仕事に関わるモチベーションが自分にあるとは、自分自身が改めて驚いています」。
このモチベーションの源は何か。彼女自身が気づいたのは、京北に移住して12年のあいだに、京北が彼女の「ふるさと」になっていたということだった。
以前都市部に住んでいた時には、隣人の顔すら知らないこともあったという。「あの頃の自分に、地域を思うデザインはできなかった」と振り返る。しかし京北に暮らしはじめてから、毎年家族で茅刈りをするようになり、春には田んぼの溝の掃除、夏は草刈り、日々の地域のお掃除にも参加するように。そこで「地域の景色はみんなでつくるんだ」と、頭ではなく体で理解できるようになった。京北では、地域の人が子供の名前を呼んで挨拶してくれたり、保育所の帰りに自転車カゴいっぱいの野菜をくれたり。そんなあたたかな「巡り」と「おかげさま」の積み重ねがあったから、彼女は京北をふるさとと思うように心を成長させえていった。
また茅葺の自宅では数々のイベントを企画し、すでにその数40回以上。それがきっかけとなり1人また1人と移住する人がでてきた。そしてそのメンバーと共に、アートとクラフトのお祭り「ツクル森」を5年前から開催している。
「あたたかな繋がりの中で立ち上がる仕事は、とても人間らしい喜びがあると感じています。いまは、隣のおばあちゃんに何かあったら、と考えたくないほど悲しい」と話す。彼女の足元から、日々大事にしたいことが京北全体に広がっている。
● LOGINプロジェクトの全体像
あうる京北には、京北に暮らす建築家ユニット「2M26」と地元の子供たちが地場材でつくったサウナがある。今は活用の準備段階だが、日々子供たちが「まだサウナせえへんの?」とけしかけてくるそうだ。フェイランさん曰く、「子供たちは、自分がつくったものが地域で使われることにわくわくしているんです。そうやって子供が変わっていくと、地域が変わり、森が変わり、社会が変わると思います」。
今世界的に深刻化している、洪水、台風被害、山火事などの災害。京北も例外ではない。一部の国では、山火事予防のために森を伐採しはじめてしまっている。
そんな状況の中、「京都市民が一人一本ずつ丸太を使えば、持続可能な社会をつくれるのでは」という構想でスタートしたのが、このLOGINプロジェクト。「森林・素材」「自分でつくる」「皆の遊び場」の3つの視点で、里山資源が循環するモデルをつくっていくものだ。この循環モデルの中では、森、丸太、漆・桑などの原料や素材を深く知り、それに多様なクリエイターを掛け合わせ、ものを生み出す。それと同時に森を案内できるインストラクターを育成する。結果、まずは1000万円ほどの売り上げをつくることが数値目標として掲げられている。そうしてDIYでものをつくりはじめ、里山を再編集していく。
● LOGINへの関わり方
現状では下記のパターンが想定されている。
施設管理、運営する人
施設保有地を活用する人
地域事業者(製材所など)と連携する人
京都府京都市の行政や、または企業と連携する人
京都以外の地域の人
中山 慶さん ROOTSがLOGINでやってみたいこと
LOGIN × 教育プログラム
教育と事業の垣根をこえて
● LOGIN × 教育プログラム
まず前提として、「LOGINはこれから京北住民や関係人口の皆さん同士でつくっていくもの」と中山さんは話す。その上で、これまでROOTSがさまざま教育プログラムを実施してきたことの延長に、来年2023年に予定している約30名の海外インターンプログラムとLOGINの協業を考えているという。現在ROOTSが所有運営する宿泊施設の学生インターンの受け入れキャパは、4〜5人。30名を迎えるには、より大きなあうる京北と連携する必要がある。
「里山での学びや知恵は、いま世界的に失われてきています。それは、台湾でもミャンマーでもフランスでも同じなんです」と中山さん。
● 教育と事業の垣根をこえて
地元の方々に先生になってもらいながら、里山ならではの学びの場をつくる。例えばこれまでROOTSが実施したことの一つには、「海の京都」京丹後エリアで暮らす漁師と、「海のフランス」ブルターニュ地域で暮らす漁師のネットワーキングプロジェクトがある。そのときに、いまは田舎と田舎が直接つながっていける時代だと実感した。「海外には、日本の里山で起こっていることを知りたがっている方々がたくさんいます」。
里山でインターローカルな学びを得て、その先でクリエイターと協業しながらものをつくっていく。そうすると、次第に教育と事業の垣根がなくなっていき、事業しながら学んでいくことが可能になるだろう。
(次の記事「mocca/デカンショ林業・辻 徳人さん:包括的な里山活用」はこちら)
書き手:中井希衣子
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