怒りの感情に向き合うことで、自己理解が進む
世の中にアンガーマネジメントという言葉があるくらい、最近は怒りに対してどう向き合うか、というテーマで話を聞く機会が少なくありません。しかし、怒りは二次感情だ、根本原因を理解することでコントロールできる、だとか、深呼吸して6秒待てば怒りは収まる、とか言う話がネットで調べると良く出てきます。
そんな中で僕はふと思ったわけです。「そもそも、怒りって必要な感情であればちゃんと理解してあげて、コントロールすると言うよりも受け入れるような考え方が自然なのではないか?」と。この考え方は、僕が以前受けたコーチングの影響もあるかもしれません。(詳細は以下の記事をご参考ください)
というわけで本屋さんでいろいろ目次を流し読みしながらその手の本を探していると、ありましたよ、目的の本が。
この本のタイトルだけを見ると、ピンとこなかったのですが、帯に「我慢するな、肯定せよ!」的なメッセージが込められていて、そこに惹かれて手にとってみたらビンゴでした。
というわけで、今回はこの本を自己理解のために要約したいと思います。是非、怒りをはじめとした、ネガティブな感情とどのように向き合ったら良いのか疑問に思っている方、自己肯定感を上げたい、なんて方にも読んでいただくと良いかもしれません。それでは早速、行ってみましょう!
ネガティブ感情に由来する危険モードとポジティブ感情に由来する安全モード
皆さんも常日頃感じられている通り、感情には怒り、嫌悪、恐れ、悲しみなどのネガティブな感情と、喜びや嬉しいなどといったポジティブな感情がありますよね。本来、ネガティブな感情というのは動物が古来から備えている安全装置の役割として機能しています。逆に、ポジティブな感情は知的好奇心や喜びなどを発現していると言われています。(本著には記載がなく、僕の憶測ですが、人間は遺伝的多様性を高度に進化させるためにこの好奇心というのを身につけたのかなと思っています。)
まず始めに、ネガティブな感情について話をすると、怒りや嫌悪などのネガティブな感情というのは、前述の通り自己の生存を脅かすためのアラートとして生物が本来備えている必要な機能です。
しかしながら、現代の環境ではこの怒りをはじめとした様々な感情に対して、「我慢すべきだ」とか、「怒るな」と教育されます。でも実は、このネガティブな感情というのは命を守るための感情なので非常に強い感情です。そんな強い感情を無理矢理抑えつけるとどうなるかというと、反発し、大きくなっていくのですね。だからこそ、この本では怒りなどのネガティブな感情に対してもしっかりと目を向けて、受け入れる必要があるとされています。
また、ポジティブな感情というのも、あまりおおっぴらにすると妬みや嫉妬を生む原因となり特に日本では慎む風潮がありますが、これもあまり良くないことです。本来ポジティブな感情はエネルギーの源泉であり、周囲の人にも伝播するよいエネルギーです。これを押さえつけておくのも非常にもったいないのですよね。
このように、本来感情に良いも悪いもなく、どちらも必要な感情で無理に押さえつけたり、コントロールするものではなく、価値あるモノとしてちゃんと受け入れる必要があるのです。
感情はカラダとアタマの交差点
ではこの感情はどうやって生まれているのか。それは、カラダとアタマが相互に影響し合って生まれています。もう少し具体的な話をします。脳の中には自立神経や反射など、カラダをコントロールする脳幹と、論理や価値観などを考えるアタマをコントロールする大脳新皮質があります。そしてその間にあり、脳幹と大脳新皮質から情報を受け取り、感情を生み出すのが扁桃体です。だから、感情というのは脳幹(カラダ)と大脳新皮質(アタマ)それぞれの信号を受け取って形成されているということです。
なぜこんなことが大切なのかというと、ちゃんとカラダの方を見ないと、アタマで考えた論理性で上手く感情をコントロールしてしまおうとするためです。日本語において、腹落ちするとか、腸が煮えくりかえるとか、古くから内臓を使った言葉が多いのは感情の由来の一つにカラダが大きく関わっているからで、何気ない感情の変化をアタマでは無視しているけどカラダが気がついていることもある。だからちゃんとカラダにも目を向けて、感情の理解をすることが大切だということです。そして、この点を理解しておくと様々な感情をどのように理解しやすくするか、という点もイメージがわかりやすくなります。
危険を中心に、怒り⇒嫌悪⇒恐れ・不安と拡がる
ここまでは感情の種類や発現など、全体論について書いてきましたが、ここからネガティブな感情、ポジティブな感情それぞれについて、どのようなメカニズムで発現しているのかもう少し具体的に書きます。
本著の中では怒り、嫌悪、恐れ・不安それぞれについて個別に詳細が書かれていますが、簡単に書くと最も危険に近いのが怒りであって、嫌悪、恐れ・不安へと離れていくイメージです。なので何度も繰り返しになりますが、これらの感情は何かしら感情を発している本人にとって不都合があるから発しているのであって、その危険源から離れるか、危険源が危険ではないと理解できない限り対処療法になってしまうということですね。そのためにも、ちゃんとネガティブな感情に向き合って、受け入れ、何が危険源なのかということをちゃんと探る必要があると言うことです。
そして、これらのネガティブな感情は、感性が醸成される幼少期において、親から厳しい躾や、叱られたりすることで発現しやすくなっているケースが少なくありません。でも大丈夫です。今感じているネガティブな感情を少しずつ受け入れることで、勝手に感情が動くのではなく、自分の意識の元、感情を発することができるようになります。
では、それぞれネガティブな感情に対して簡単にポイントだけ書くと以下の通りです。
<怒り>
怒りは上手くいっていない、自分の本音を理解して欲しい、自分のことを大切にして欲しいというサイン。エネルギーが高いためそのままでは感情として扱いにくいため、大声を出すなどして発散することが大切。無理矢理抑えつけると体を壊す。
そして、この怒りの感情と言うのは上述の通り幼少期の自分を受け入れられなかったという過去の感情によってもたらされる幻が作り出している場合も多い。だからこそ、「今と昔は違う」と、現状を認識した上で、その怒りの感情を受け入れることが大切。
<嫌悪>
嫌悪感は仕方が無い。しかしながら、「嫌い」と「悪い」は別物。「悪い」は相手に対する自己の正義感(~ねば、~べき)の押しつけであり、しかも、相手に振りかざした正義(ねばべき論)は自分自身への押しつけにもなり苦しめるきっかけとなって、自身の本心を雲隠れさせるリスクもある。そして、この自分の正義を抱えていると、ネガティブな感情が自分を取り巻く危険モードに陥り、周りが常に敵にみえ、他者を攻撃しやすくなる。そのためにも、「嫌い」と「悪い」を切り分けて、嫌いは受け入れても、悪いはなくすことが大切。
これを対処するためには、一度自分が嫌だと思っていることをリストアップして、その上で嫌なのか、悪いなのかを識別することで自分の嫌悪感の正体が明らかになる。
<恐れ・不安>
恐れや不安は「怒り」が訪れる前触れでありアラート。過去に怒りを感じた経験からその前兆をアタマで感じ取り、恐れや不安となっている。そのため、カラダから不安のアラートを感じた時点でカラダからのメッセージを受け取った時点で理解し、アタマに回さないことが大切。
多くの対人関係の問題において、不安は自然と他人のせいにしてしまうことで発生している。本当は「仲間はずれにしてほしくない」、「居場所をなくしたくない」という本心があるにも関わらず、表向きの感情としては不安が周囲に対して劣等感や嫉妬、罪悪感や恥などとして感じてしまう。
悲しみと喜びは表裏一体
悲しみはネガティブな感情の中でも少し性質が異なります。悲しみは、大切だったものとの関係性を自分の中で再構築するためのプロセスです。何か残念なことがあったときに人は失望し、悲しみます。これは、残念なことがあったというショックに対してカラダが緊張するのに対し、少し休んでカラダをリラックスさせた方がいいよ、っていうメッセージなんですよね。涙を流すことで人のカラダがほぐれるのは、そういった側面が大きいのです。
しかしながら、「泣くな」、「悲しみをみせるな」と言われ、育てられると、その矛先は怒りに向かうのですね。怒りで自分をごまかすことになるわけです。
さらに、自分の中の悲しみを理解できるようになると、人の悲しみも理解できるようになります。だからこそ、まずは自分の感じた悲しみに対して「何が悲しいのだろう」と耳を傾けることが先ずは大切です。
そして、悲しみを見つけると言うことはどういうことか。それは自分が大切にしているもの、喜びを感じることができるものを見つけるということにも繋がります。例えば、上司に否定されたときに、ひどく悲しくなったことに気がついたとします。それは、それだけ自分のことを大切にできているという気付きのきっかけになったりするわけですね。そう考えると、悲しみって愛おしい存在かもしれませんね。
ネガティブな感情を受け入れるためのワーク
ここまではざーっと感情とは何かを書いてきましたが、「では具体的にどうしたらよいの?」という気もすると思うので、既に記載の内容と重複する部分もありますがそれぞれの感情に対して向き合うワークを記載します。
<全般>
不快な感情になったときに以下のステップ(全肯定するワーク)を実行します。
1.一人になる
2.不快な感情がでている場所(主に内蔵)を探す
3.不快な感情の場所に手を当て、「こんにちは」など声をかける。
4.その感情の色や形などをイメージしてみる
5.「でておいで」など、声をかけ、感情の声を聞いてみる
6.その部分を撫でる、少し押すなど、安心を感じさせる
7.5~20分くらいかけて2~6を繰り返し、「またね」と声をかけ終わる
<怒り>
基本的には発散することがメインです。
・とにかく叫ぶ
・その場でジャンプ
・紙に書き出す
<嫌悪>
嫌いと悪いを切り分けることが大切です。全肯定のワークを実施後、嫌悪を感じた感情に対して、それが嫌なのか、悪いのかを書き出したり、自分に問いながらカラダの反応を見ます。
<恐れ・不安>
全肯定のワークを実施後に、感じている不安に対して「本当におきるのか」、「いつからその感情か」ということを確認します。そうすることで、実はその不安は今起きているコトに対する不安ではなく、過去に起きた事象に対して、何かをきっかけにフィードバックされているだけの可能性もあります。それがわかるだけでも不安が消えることもあります。
これらの感情の理解のためにも、まずは不安に思った感情をリスト化し見える化することが大切です。
終わりに
ここまで本の要約としていろいろと書いてきましたが、僕の中で一番大きかった気付きが「自分がもっとかまってほしいと思っている」という感情への気付きで、それをしっかりと受け止めた方が楽になるということした。大切にして欲しい、自分の意見を聞いて欲しい、仲間外れにされたくない、これらの感情は、ともすると恥ずかしいなという思いがなんとなくあります。ただ、それをちゃんと受け入れることがまずは大切なんだなと思ったわけですね。(ある意味、このnoteも他者からもっとかまって欲しいという意思表示の現れだったのかもしれません。)
そして、この背景にあるのはやはり幼少期の経験だなと改めて痛感しました。僕は4つ下の弟と、9つ下の妹がいる長男です。そして、小さい頃から特に父親は厳しく、「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」とか「早くしろ」とか、とにかく叱られた記憶があります。だから、きっと僕の中で小さい頃に自分を相手にしてもらえなかったというネガティブな感情が根付いてしまって、それが今に至っているのかなと。
そしてそのネガティブな感情を隠すために、正義という名の「ねば、べき」を振りかざし、相手に押しつけることで自分の存在意義を守るし、だから他者に対して否定的な感情を持ってしまうことが少なくないのです。そして否定的な感情が悪いと思っているから、その否定的な感情を持たないように、他者の言動に表面上はあわせ、益々自分の感情がわからなくなっていく。
もちろん、この本を読んだだけで全て解決というわけではなく、これから少しずつワークを実践し、もう少し自分の心と深く向き合う必要があると思いますが、その入り口が少し見え始めた気がします。
そう考えると、ネガティブな感情というのは、自分を研磨するためのよい磨き粉のような役割としてこれから使えるのかな、なんて前向きに捉えることもできはじめています。
ということで、ここまで長々と要約を含め、書き連ねてきましたが、本著にはもっと細かくいろんな内容が書いてあります。気になった方は是非ご覧いただくことをおすすめします!