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批判的思考(クリティカル・シンキング)について①

批判的思考とは? なぜ学校教育に必要か?


これまで、私の博士課程のキャリアについてお話しする機会が多かったのですが、今回は私の研究テーマの一つである「批判的思考(クリティカル・シンキング)」についてお話ししたいと思います。

批判的思考とは?

批判的思考(クリティカル・シンキング)とは、一言で言えば
何を信じ、何を行うかの決定に焦点を当てた、合理的で反省的な思考」(ENNIS, 1987) のことです。

もう少しかみ砕いて言うと、
与えられた情報をうのみにせず、論理的に考え、自分なりの根拠をもって判断する力」と言えます。

たとえば、ネット上で「〇〇を食べると健康になる」といった情報を見たとき、「本当にそうなのか?」と考え、出典を確認したり、他の情報と比較したりすることは、批判的思考の一例です。

また、仕事や学校で誰かの意見を聞いたときに、「この意見にはどんな根拠があるのか?」「別の視点はないのか?」と考えるのも批判的思考の一部です。

なぜ学校教育に批判的思考が浸透していないのか?

批判的思考の重要性は、多くの教育研究で指摘されています。しかし、現実の学校教育では、十分に取り入れられているとは言えません。その理由として、次の2つが考えられます。

1. 学校教育のカリキュラムに批判的思考を鍛えるプログラムがほとんどない

日本の学校では、知識を効率よく学ぶことに重点が置かれがちです。そのため、「どう考えるか?」よりも、「正解を早く出すこと」が重視される傾向があります。
しかし、社会に出ると、そもそも「正解が一つではない問題」に向き合うことが多くなります。そのときに、批判的思考が役立ちます。

2. 教師自身が批判的思考を学ぶ機会が少ない

批判的思考を教えるためには、まずは教師自身がそれを理解・実践できる必要があります。
しかし、日本の教師養成課程では、批判的思考を鍛える授業がほとんどありません。そのため、授業で生徒に批判的思考を促す機会が少なくなってしまうのです。

批判的思考をもっと普及させるべき理由

批判的思考は、単なる学問的なスキルではなく、日常生活や仕事のあらゆる場面で役立つ力です。
たとえば、ニュースやSNSの情報を正しく判断すること、職場での意思決定を合理的に行うこと、人間関係で相手の意見を冷静に考えることなど、さまざまな場面で活かせます。

また、AIの進化によって「情報を検索して正解を得る」ことは以前より簡単になりました。

しかし、AIが出した答えが正しいのかどうかを見極めるためには、人間側が批判的思考を持つ必要があります。これからの時代、「知識を覚える力」以上に、「考える力」が求められるのだと思います。

今後の記事

今後の記事では、批判的思考が実際の仕事・学校教育、日常生活の中でどのように活かせるか、具体的な事例を交えてお伝えできればと思います。
また、家庭教育の重要性も感じているので、批判的思考やデータサイエンスといった今必要とされている力を、どのうように家庭で子どもに身に着けるかのアイデアも話せたらと思います。

「批判的思考」という言葉だけを聞くと、少し難しく感じるかもしれません。でも、実は私たちの生活の中にすでに存在していて、少し意識を変えるだけで鍛えることができます。

次回以降の記事では、そのエッセンスをわかりやすくお届けしますので、ぜひお楽しみに!

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参考文献
ENNIS, R. H. (1987) A taxonomy of critical thinking dispositions and abilities. In BARON, J. B. and STERNBERG, R. J. (Eds.), Teaching thinking skills: Theory and practice, W. H. Freeman and Company, New York, pp.9-26

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