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あなたの”見える化”は大丈夫? グローバルで戦う秘訣【後編】
今週はアジア金融フォーラム(Asian Financial Forum)など、香港ならではの国際的なビジネスイベントで慌ただしく過ごしていました。多くの政府要人や財界首脳が一堂に会するこのイベントは、世界金融都市としての香港のアイコニックなイベントです。
OECDの竹内良樹事務次長が登壇していました。
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前回に引き続き、今回はソートリーダーシップについて、その定義、メリット、そして日本人にとっての課題と具体的な対策を私の経験に基づいて考察します。
ソートリーダーシップとは?
日経 X TECH の定義を引用すると、「ソートリーダーシップとは、企業が特定の分野(業界・テーマ・社会問題)において、将来を先取りした革新的なアイデアや解決策をいち早く発見し、示すことでその分野における主導者となること」です。
これは個人にも当てはまり、特定の分野で先見性のある洞察や解決策を提供することで、その分野のオピニオンリーダーとして認識されることを意味します。
なぜ日本人のソートリーダーは少ないのか?
欧米と比較して、日本人のソートリーダーシップが目立ちにくいと感じます。その理由をGPT-4oの力を借りながら分析してみました。
文化的背景
集団で調和を重んじる文化では、自分のアイディアを積極的に発信することを奨励する環境づくりが難しい。
例えば、私の以前のロンドン本社の職場(データアナリティクス)では、毎週定例のチーム・ミーティングで、本職とは別の「自由研究」(メンバーの役に立ちそうなリサーチ・ペーパーを紹介する、LLMを使ったジェイル・ブレーキングを自分で実践してみる等々)を紹介するshow & tellの時間が設けられていました。
こういう自由な発想を促す文化は、日本ではなかなか育ちにくいのかと思います。
語学力
英語でのコミュニケーション能力の不足は大きな課題です。グローバルな舞台でソートリーダーシップを発揮するには、自身の考えやビジョンを的確に英語で伝える能力が不可欠です。
私は、普段日本語のメディアはほとんど触れていませんが、日本のメディアは世界的にみてかなり質が高いと思います。ただ、日本語オンリーなこと、話題自体が日本限定なことが多いので、もう少し視野を広めてもいいのではと思っています。
教育的背景
日本の教育システム自体が悪いとは思いませんが、グローバルな環境で求められるクリティカルシンキング、創造性、コミュニケーションスキル育成の面では改善の余地があるでしょう。
ソートリーダーシップを発揮するための具体的な対策
1.基礎固め:
情報収集:
LinkedIn、海外メディアなどのプラットフォームを活用し、世界のトレンドや議論されているトピックを常に把握。
例えば、今海外の投資家は日本の株に再注目しています。ウォーレン・バフェット氏がいい例ですね。
アジア金融フォーラムでは、私が数少ない日本人出席者ということで、日本円の動向、日本株の今後の予想などを他の参加者から質問を受けました。
私は「金融+データ・AI」という仕事柄、ある程度の情報は把握していますが、(大まかに言って、アセット・マネージャーと議論できるレベル)専門家ではないので、この分野でもっと日本人が世界に発信してもいいのではと思います。
情報発信:
LinkedInはソートリーダーシップ構築に最適なプラットフォームです。
積極的に自身の考えを発信し、存在感を高めましょう。日本でのLinkedIn活用が遅れているのは、英語中心のプラットフォームであることが一因かもしれません。しかし、私はLinkedInを通じて講演依頼や仕事のオファーなど、多くのチャンスを得ています。
あとは、海外では、Playbook やWhite paperといった名称で、ある特定の分野に関する深い考察を記述した記事を発行することで、企業自体の存在価値を高めようとしています。そういう発信媒体を自ら提案して、作成・発行する、あわよくば自分の名前を著者として媒体に載せてもらうよう交渉するという手もあるかと思います。
2.発信力の強化:
戦略的情報発信:"Name Dropping" など、自身の発信内容に権威性や信頼性を持たせるテクニックを適切に活用しましょう。
知ったかぶりはいけませんが、等身大の自分より少し大きめに見せる、権威性、信頼性を高める方法は活用すべきです。
例えば、データ・ガバナンスに関するプレゼンテーションを行う際に、Gartnerの調査結果やDAMA InternationalのDMBOKなどの権威ある情報源を引用することで、説得力を高めることができます。
今はAIツールを活用して、編集を行うのも大いに有効かと思います。
3. コミュニケーションスキルの向上:
プロにアドバイスをうけながら、英語の話し方を改善
私は昨年、かなりの金額を英語のパブリックスピーキングのコーチングに費やしました。結論から言って、ここ10年くらいで一番効果のあった自己投資でした。
今年も何件かスピーカーとして依頼をいただいているので、継続する予定です。そして、話し方はトレーニングでいくらでも改善できると実感しました。専門家の指導を受けることは、自信を持って効果的にメッセージを伝えるために不可欠です。
4. コンテンツの質の向上:
ごくごく当たり前かもしれませんが…
講演やプレゼンテーションの依頼を受けた際には、対象となる聴衆の属性、イベントの形式、他の登壇者のプロファイル、想定される質問内容などを事前に確認し、綿密な準備を行う。聴衆のニーズに合わせた質の高いコンテンツを提供することで、次の機会へと繋がります。
私は英語が得意なわけでも、著名人でもなんでもありません。
著名人なら名前だけで集客力もあると思いますが、私のような凡人は話す内容に魅力がないと、次の依頼はもう来ないかもしれません。ですので、いかにオーディエンスが私の話を楽しんでもらえるかどうかを十分に分析して準備します。
準備は、日本人が得意とする分野ですしね!
最後に
私自身の経験に基づいた対策をご紹介しましたが、これが唯一の正解ではありません。大切なのは、自分にとって効果的な方法を見つけ、継続的に努力することです。日本人にもソートリーダーとしてグローバルに活躍する可能性は十分にあります。積極的に挑戦しましょう!